使徒行録1 (ラゲ訳)

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<聖書<我主イエズスキリストの新約聖書

『公敎宣敎師ラゲ譯 我主イエズスキリストの新約聖書』公敎會、

1910年発行

〔ローマ・カトリック訳〕

ラゲ訳新約聖書エミール・ラゲ(Emile Raguet,MEP)

使徒行録1

第1章[編集]

1テオフィロよ、われさきだい一のしよつくりて、すべてイエズスのはじめよりおこなかつをしたまひしことをべ、 2そのえらたまひし使徒しとたち聖霊せいれいりてめいき、てんげられたまひしまでにおよびたりしが、 3イエズス受難じゆなんのちおほくのしるしもつて、彼等かれらおのれきたること證明しようめいし、四十にちあひだ彼等かれらあらはれ、かみくにくわんしてものがたたまへり。 4またともしよくしつつ彼等かれらに、エルザレムをはなれずしてちち約束やくそくつべしとめいじ、のたまひけるは、「なんじわがくちづからその約束やくそくけり、 5けだしヨハネはみづにてせんしたれども、なんじひさしからずして聖霊せいれいにてせんせらるべきなり、と。 6ればあつまりたる人々ひとびとひて、しゆよ、イスラエルのくに回復くわいふくたまふはこのごろなるか、とひければ、 7イエズスのたまひけるは、ちちその権能けんのうによりてさだたまひし時刻じこくは、なんじるべきにあらず、 8ただしなんじのぞたま聖霊せいれい能力のうりよくけて、なんじはエルザレム、ユデア全國ぜんこく、サマリア、はていたまで證人しようにんとならん、と。 9のたまてて彼等かれらうちげられたまひしが、一叢ひとむらくもこれけてえざらしめたり。 10彼等かれらなほてんのぼりたまふをながたるほどに、白衣びやくえひと二人ふたりたちま彼等かれらかたはらちてひけるは、 11ガリレアじんよ、なんてんあふぎつつてるや、なんじはなれててんげられたまひしこのイエズスは、なんじそのてんたまふをたるごとく、またかくごとくにしてきたたまふべし、と。 12使徒しとたち橄欖かんらんざんへるやまよりエルザレムにかへりしが、このやまはエルザレムにちかく、安息日あんそくじつにもかるべき道程みちのりなり。 13りてペトロとヨハネ、ヤコボとアンデレア、フィリッポとトマ、バルトロメオとマテオ、アルフェオのヤコボとゼロテなるシモンと、ヤコボの兄弟きやうだいユダとの宿やどれる高間たかまのぼりしが、 14彼等かれらみな婦人ふじんたちおよびイエズスのははマリア、およびイエズスの兄弟等きやうだいたちともに、こころおなじうして耐忍たへしのびつつ祈祷いのり從事じゆうじたり。 15そのころともあつまれるひとおよそ百廿めいなりしが、ペトロ兄弟きやうだいうちちてひけるは、 16兄弟きやうだい人々ひとびとよ、イエズスをとらへしものども案内あんないしやとなりしユダにきて、聖霊せいれいがダヴィドのくちもつ預言よげんたまひたる聖書せいしよは、成就じやうじゆせざるべからず。 17かれわれかずりてこのせいえきあづかりたれども、 18不義ふぎあたひもつはたもとめ、(つるされて)俯伏うつぶしたふれ、その眞中ただなかよりけてはらわたことごとほとばしでたり。 19このことエルザレムの住民じゆうみんわたりて、このはた彼等かれら方言ことばにてハケルダマ、すなははたばれたり。 20けだししよかきしるして、「おりれて、これひとなかるべし」、また他人たにんそのつとめくべし」、とあれば、 21われともあつまれるこの人々ひとびとうちより、すべしゆイエズス、キリストがわれうち出入いでいりたまひしあひだ22すなはちヨハネの洗禮せんれいよりはじめ、われはなれてげられたまひしいたるまで、一しよりしもの一人ひとりわれともその復活ふくくわつ證人しようにんとならざるべからず、と。 23ここおい彼等かれら、バルサバとばれ、義人ぎじん綽名あだなされたるヨゼフと、マチアとの二人ふたりげ、 24いのりてひけるは、すべてのひとこころたまへるしゆよ、ユダのおのところかんとて退しりぞきしこのつとめ使徒しとしよくとを引受ひきうけくべく、 25この二人ふたりいずれをえらたまへるかをらしめたまへ、と。 26かく彼等かれらくじあたへしに、くじはマチアにあたりしかば、かれ十一にん使徒しとくはへられたり。

第2章[編集]

1ペンテコステのいたりしかば、みな一所いつしよあつまけるに、 2たちまちにしててんよりはげしきかぜきたるがごとひびきありて、彼等かれらせるいへわたり、 3またごとした彼等かれらあらはれ、わかれておのおのうへとどまれり。 4かくみな聖霊せいれいたされ、聖霊せいれい彼等かれらはしめたまふにしたがひて、種々しゆじゆ言語げんごにてかたでたり。 5しかるに敬虔けいけんなるユデアじんの、天下てんか諸國しよこくよりきたりてエルザレムにめるものありしが、 6このおとひびわたるや、群集ぐんしゆうあつまきたりて、いずれも使徒しとたち面々めんめん國語こくごにてかたるをきければ、一同いちどうこころさわあきれて、 7おどろたんじてひけるは、かのかたひとみなガリレアじんならずや、 8如何いかにしてわれおのおのわが生國しやうごくことばきたるぞ、と。 9パルトじん、メドじん、エラミトじんまたメソポタミア、ユデア、カパドキア、ポント、[せう]アジア、 10フリジア、パムフィリア、エジプト、クレネにちかきリビア地方ちはうめるものおよびロマ寄留きりうにんすなはち、 11ユデアじんもユデアけう歸依きえせしひとも、クレタじんも、アラビアじんも、彼等かれらわが國語こくごにてかみ大業たいげふかたるをきたるなり。 12ればみなおどろたんじて、何事なにごとぞとかたりひけるが、 13あるひ嘲笑あざわらひて、彼等かれらさけへり、と人々ひとびともありき。 14ここおいてペトロ十一にんとも立上たちあがり、こゑげて人々ひとびとかたりけるは、ユデアじんおよすべてエルザレムにめる人々ひとびとよ、なんじこれらざるべからず、みみかたむけてわがことばけ。 15ときなほあさだいなれば、この人々ひとびとなんじおもへるごとひたるにあらず、 16これ預言よげんしやヨエルをもつはれしことなり、いはく「しゆのたまはく、すゑ日頃ひごろいたらば、わがれいすべてのひとうへそそがん、 17かくなんじ子女しぢよ預言よげんし、なんじ青年せいねんたちまぼろしなんじ老人らうじんゆめみるべし、 18またわがしもべはしためうへにも、かの日頃ひごろいたりてわがれいそそがん、かく彼等かれら預言よげんすべし。 19われまたうへてん不思議ふしぎを、したしるしあたへん、すなはけぶりはしらとあるべし、 20しゆおほいにして明白めいはくなるきたらざるまへに、暗黒くらやみり、つきらん、 21かくしゆ御名みなよびたのまんひとみなすくはるべし」と。 22イスラエルじんよ、これことばけ。ナザレトのイエズスは、なんじれるごとく、かみこれもつなんじうちおこなたまひし奇蹟きせき不思議ふしぎしるしとをもつて、かみよりなんじうち證明しようめいせられたるひとにして、 23かみ豫定よてい思召おぼしめし豫知よちとによりてわたされしを、なんじ不法ふはふじんもつこれはりつけにしてころしたるなり。 24かの冥府よみとどめらるることあたはざりければ、かみ冥府よみきてこれ復活ふくくわつせしめたまへり。 25けだしダヴィドこれしていはく、「われえずわがまへしゆたてまつりたり、うごかざらんために、しゆわがみぎましませばなり。 26ゆゑわがこころうれしく、わがしたよろこびにへず、加之しかのみならずわが肉體にくたいまた希望きぼううちやすまん。 27なんじわがたましひ冥府よみすてたまはず、なんじせいなるもの腐敗ふはいたまことなかるべければなり、 28なんじ生命せいめいみちわれらせたまへり、また御顔おんかほもつわれよろこびたせたまふべし」と。 29兄弟きやうだい人々ひとびとよ、たいダヴィドにきてはばからずこれはしめよ。かれしてはうむられ、そのはか今日こんにちいたるまでわれうちそんす。 30すなはかれ預言よげんしやにして、かみこれちかひて、その子孫しそんうちより一人ひとりそのくべし、とやくたまひしことたれば、 31先見せんけんしてキリストの復活ふくくわつしめし、その冥府よみすてかれざりしことと、その肉體にくたい腐敗ふはいざりしこととをかたりたるなり。 32かみこのイエズスを復活ふくくわつせしめたまへり、われみなその證人しようにんなり。 33ればこそかみみぎ御手おんてもつげられ、かつちちより聖霊せいれい約束やくそくけて、なんじかつけるこの聖霊せいれいそそたまひたるなれ。 34けだしダヴィドはてんのぼりしにあらざれども、みづかへらく「しゆ我主わがしゆのたまへらく、 35われなんじてきなんじあしだいとならしむるまでわがみぎせ」と。 36ればなんじ十字架じふじかはりつけけしこのイエズスをば、かみしゆとなしキリストとたまひしことを、イスラエルのいへこぞりてもつとたしからざるべからず、と。 37人々ひとびとこれこときてこころされ、ペトロおよ使徒しとたちむかひ、兄弟きやうだい人々ひとびとよ、われなにすべきぞ、とひければ、 38ペトロひけるは、なんじ改心かいしんせよ、かつつみゆるされんために、おのおのイエズス、キリストの御名みなによりてせんせらるべし、らば聖霊せいれいたまものん。 39けだし約束やくそくなんじためにして、またなんじ子等こどもおよすべはるかとほざかれるひとわれかみたるしゆたまへる一切いつさいひとためなり、と。 40ペトロこのほかなほおほくのことばもつて、人々ひとびとふくせしめかつすすめて、なんじこのよこしま時代じだいよりすくいだされよ、とたり。 41かくかれことばけし人々ひとびとせんせられしが、即日そくじつ弟子でしかずくははりしものやく三千にんなりき。 42堪忍たへしのびて、使徒しとたちをしへ共同きようどう生活せいくわつと、ぱんこと祈祷きたうとに從事じゆうじたりしが、 43やがひとみなこころおそれしやうじ、また使徒しとたちりて、おほくの不思議ふしぎしるしと、エルザレムにおこなはれければ、一般いつぱん人々ひとびとおほいにおそれをいだたり。 44かく信仰しんかうせる人々ひとびとすべ一所いつしよりてなにものをも共有きよういうにし、 45動産どうさん不動産ふどうさんり、面々めんめんようおうじて一同いちどうわかちつつ、 46なほ毎日まいにちこころおなじくして長時間ちやうじかん[しん]殿でんり、家々いへいへぱんきて喜悦よろこび眞心まごころとをもつ食事しよくじし、 47諸共もろともかみ賛美さんびたてまつりて、人民じんみん一般いつぱんこころたり。かくごとくに、すくはるるひとを、しゆ日々にちにち増加ぞうかせしめたまひつつありき。

第3章[編集]

1午後ごご祈祷きたうに、ペトロとヨハネと[しん]殿でんのぼれるに、 2ここうまれながらあしなへたる一人ひとりをとこ、[しん]殿でん人々ひとびとほどこしはんとて、毎日まいにちもんへる[しん]殿でんもんかきゑられてありしが、 3ペトロとヨハネとの[しん]殿でんらんとするをほどこしひければ、 4ペトロ、ヨハネとともこれながめて、われよ、とひけるに、 5かれなにものをかもらはん心構こころがまへにて彼等かれら熟視みつたりしかば、 6ペトロひけるは、われ金銀きんぎんなし、れどてるものをばなんじあたへん、ナザレトのイエズス、キリストの御名みなによりてちてあゆめ、と。 7すなはそのみぎりてこれおこしたるに、そのすねおよあしうらただちちからづきて、 8をどりちてあゆみしが、かつあゆみ、かつをどり、かつかみ賛美さんびしつつ彼等かれらともに[しん]殿でんれり。 9人民じんみんみなかれかみ賛美さんびしつつあゆめるをしが、 10かつて[しん]殿でんもんしてほどこしたりしものなるをれば、これうへりしことおどろきりて、感嘆かんたんへざりき。 11かくかれペトロとヨハネとのにぎたれば、人民じんみんみなおどろきつつ、サロモンらうばれたる殿でんらうして彼等かれらもとはせつどへり。 12ペトロこれ人民じんみんこたへけるは、イスラエルじんよ、なんこのことおどろくや、またなんあたか我々われわれとくもしくはちからによりてこのひとあゆませしがごとくにわれながむるや。 13アブラハムのかみ、イザアクのかみ、ヤコブのかみわれ先祖せんぞかみが、その御子おんこイエズスに光榮くわうえいたまひしなり、これすなはなんじわたして、ピラトのこれゆるすべしと判定はんていせるを、その面前めんぜんいなみしものなり。 14なんじせいなるものなるものをいなみて、殺人者ひとごろしゆるされんこともとめ、 15かえつ生命せいめいつくりぬしころししに、かみこれ死者ししやうちより復活ふくくわつせしめたまへり、われその證人しようにんなり。 16かれ御名みなおけ信仰しんかうによりて、その御名みななんじかつれるこのひとちからづかしめたり。イエズスにれる信仰しんかうこそ、なんじ一同いちどうまへかか全癒ぜんゆさせたるなれ。 17兄弟等きやうだいたちよ、われいまにしてる、なんじつかさたちししにひとしく、なんじ不知ふちによりてこれししことを。 18れどかみは、もろもろ預言よげんしやくちもつて、あらかじめキリストのくるしむべきことたまひしを、かくごとくにしてまつたうしたまひしなり。 19ればなんじつみされんために、改心かいしんしてたちかへれ。 20これまたしゆ御前みまへよりすずしめのとききたりて、預定よていせられたまひしイエズス、キリストをなんじつかはしたまはんためなり。 21てんまずこれけざるべからず、これはじめより、かみそのせいなる預言よげんしやたちくちもつたまひし、萬物ばんぶつ回復くわいふく時代じだいいたまであひだなり。 22すなはちモイゼにいはく、「なんじかみなるしゆは、なんじ兄弟きやうだいうちよりごと一人ひとり預言よげんしやなんじおこたまはん、そのなんじかたらんほどことは、なんじことごとこれくべし、 23かくすべこの預言よげんしやかざるひとは、かなら人民じんみんうちよりほろぼさるべし」、と。 24サムエル以來いらいかたりし預言よげんしやみなこのことげたり。 25なんじ預言よげんしやたち子等こどもなり、またかみが、「地上ちじやうしよぞくことごとなんじすゑもつしゆくせられん」、とアブラハムにのたまひて、われ先祖せんぞたまひし契約けいやく子等こどもなり。 26かみまずなんじためにこそ、御子おんこおこしてなんじ祝福しゆくふくたまものつかはしたまひしなれ、これおのおのみづかその不義ふぎよりたちかへらんためなり、と。

第4章[編集]

1ペトロヨハネと人民じんみんかたりつつりしに、 2司祭しさいたち神殿しんでんつかさとサドカイの人々ひとびときたり、彼等かれら人民じんみんをしへ、かつイエズスにおけ死者ししや復活ふくくわつくことをふかうれひて、 3彼等かれらとらへ、すでれければ、翌日よくじつまで拘留こうりうしたり。 4れどことばきたりし人々ひとびとおほくは信仰しんかうして、男子だんしかず五千にんおよべり。 5明日あくるひ司祭しさいちやう長老ちやうらうおよ律法りつぱふ學士がくし、エルザレムに集會しふくわいすることとなりしが、 6アンナ大司祭だいしさいもカイファも、ヨハネもアレキサンデルも、また大司祭だいしさいやからことごとともりき。 7かくてペトロとヨハネとを眞中まんなかたせて、なんじ如何いかなるちから如何いかなるによりてこのことおこなひしぞ、とひかけたり。 8そのときペトロ聖霊せいれいたされて彼等かれらひけるは、けやたみつかさたち長老ちやうらうたち9われ癈疾はいしつしやたいする善業ぜんげふき、そのなにりていやされしかを尋問じんもんせらるるなれば、 10なんじ一同いちどうおよびイスラエルの人民じんみんこぞりてこれれ、かのひと壮健さうけんにしてなんじまへてるは、これわれしゆナザレトのイエズス、キリスト、すなはなんじこれころし、かみこれ死者ししやうちより復活ふくくわつせしめたまひしもの御名みなるなり。 11これなんじいへつるものないがしろにせられたるいしにして、かくおやいしとせられたるものなる。 12其他そのたものによりては救霊たすかりあることなし、われよつたすかるべきものとしてひとあたへられしは、天下てんかまたこれあらざればなり、と。 13會衆くわいしゆう彼等かれら無學むがく凡人ぼんじんなることかねわきまへたれば、ペトロおよびヨハネの泰然たいぜんたるをこれあやしみ、またかね彼等かれらがイエズスにともなひたりしことをもり、 14いやされしひとげん彼等かれらともてるをて、一言いちごんこれたいしてふことあたはず、 15めいじて彼等かれら衆議所しゆうぎしよより退しりぞけ、とも評議ひやうぎして、 16ひけるは、かの人々ひとびと如何いか處分しよぶんすべきぞ、けだしエルザレムの人民じんみん一同いちどうわたりたる奇蹟きせき彼等かれらによりておこなはれ、明白めいはくにしてわれこれこばむことあたはず、 17れど、その一層いつそう民間みんかんひろまらざらんために、彼等かれらおびやかして、如何いかなるひとにもふたたかのもつかたことなからしむべし、とて、 18彼等かれらび、一切いつさいイエズスのもつかたかつをしふることなかれ、といましめたり。 19れどもペトロ、ヨハネはこたへて、なんじくはかみくよりもかみ御前みまへ正當せいたうなりや、なんじこれはんぜよ、 20けだしわれ見聞みききせしことかたらざるをず、とへり。 21かのおこなはれしこときてひとみなかみあがたてまつるにり、彼等かれら人民じんみんたいして使徒しとたちばつするに便すべなく、おびやかしてこれかへせり。 22けだしかの全癒ぜんゆ奇蹟きせきおこなはれしひとは四十さい以上いじやうなりき。 23二人ふたりゆるされてとももといたり、司祭しさいちやう長老ちやうらうひしほどことつぶさげしかば、 24彼等かれらこれきてかみむかひ、異口同音いくどうおんこゑげてひけるは、しゆよ、てんうみおよそのうちらゆるものつくたまひしはしゆなり。 25しゆ聖霊せいれいりて、しゆしもべにしてわれ先祖せんぞなるダヴィドのくちもつて、「何故なにゆゑ異邦いはうじん振起ふりおこり、人民じんみん徒事いたづらごとはかりしぞ、 26地上ちじやう國王こくわうち、諸侯しよこう一致いつちしてしゆおよそのキリストにさからへり」、とのたまひしが、 27はたしてヘロデおよびポンシオ、ピラトは、異邦いはうじん、イスラエルのしよぞくともこのみやこあつまりて、しゆ注油ちゆうゆたまひしせいなる御子おんこイエズスにさからひ、 28御手みておよ御旨みむねさだたまひしことせり。 29しゆよ、いま彼等かれら脅喝おびやかしかへりみ、しもべたまふに、御言おんことばはばからずかたることをもつてしたまひ、 30御手みてばして、せいなる御子おんこイエズスの御名みなによりて、治癒ちゆしるし不思議ふしぎとをおこなはせたまへ、と。 31いのをはれるとき彼等かれらあつまれるところ震動しんどうし、みな聖霊せいれいたされて、はばかところなくかみ御言おんことばかたたり。 32そもそも信者しんじや群衆ぐんしゆうは、同心どうしん同意どうい一人ひとりそのてるものおのものはず、なにものをもみな共有きよういうにし、 33使徒しとたちまたおほいなるちからもつて、我主わがしゆイエズス、キリストの復活ふくくわつしようし、おほいなる恩寵おんちよう彼等かれら一同いちどううへりき。 34けだし彼等かれらうちには一人ひとりとぼしきものあらず、すべて、はたまたいへてるひとこれりて、そのれるものあたひもちきたり、 35これ使徒しとたち足下あしもときて、面々めんめんそのようあるにしたがひてわけあたへらるればなり。 36ここにクプロ[しま]うまれなるレヴィぞくひとヨゼフは、使徒しとたちよりバルナバ、やくしてなぐさめ、とばれたるが、 37はたりしをりてそのあたひもちきたり、これ使徒しと足下あしもとけり。

第5章[編集]

1しかるにアナニアとばるるひとそのつまサフィラとともいちまいはたりしが、つま同意どういにてはたあたひいつはり、 2その幾分いくぶんもちきたりて使徒しとたち足下あしもときしかば、 3ペトロひけるは、アナニアよ、何故なにゆゑサタンにこころいざなはれて聖霊せいれいあざむき、はたあたひいつはりたるぞ。 4そのはたりしときなんじものにして、られてのちも[あたひは]なんじけんないぞくしたるにあらずや、なんかかことこころくはだてしぞ、なんじあざむきしはひとあらずしてかみなり、と。 5アナニアこのことばくや、たふれていきえしかば、きたるひとみなおほいにおそれいだき、 6青年せいねんちてこれ取上とりあげ、かきいだしてはうむれり。 7およそさんかんそのつまことおこりしをらずして入來いりきたるに、 8ペトロこれひけるは、をんなよ、なんじはたりしかねそれだけなるか、われげよ、と。かれしかそれだけなり、とこたへしかば、 9ペトロこれむかひ、なんじなんれぞきやうぼうしてしゆれいこころみんとしたるや、よ、なんじをつとはうむりし人々ひとびとあし戸口とぐちり、なんじをもかきいだすべし、とひければ、 10をんなたちまその足下あしもとたふれていきえたり。青年せいねん入來いりきたりてそのせるをこれかきいだしてをつとかたはらはうむりければ、 11ぜん教會けうくわいおよこれことける人々ひとびとみなおほいにおそれいだけり。 12數多あまたしるし不思議ふしぎとは、使徒しとたちによりて民間みんかんおこなはれ、[信者しんじや]みなこころひとつにしてサロモンの殿でんらうりしが、 13他人たにんあへこのうちまじはものなく、人民じんみん彼等かれら稱賛しようさんして、 14しゆ信仰しんかうする男女だんぢよ群衆ぐんしゆうますます増加ぞうかし、 15つひには、人々ひとびと病人びやうにんちまたかきいだし、ペトロのきたらんとき一人ひとりにもあれそのかげになりともおほはれ(てやまひいやされ)んとて、寝台ねだいもしくはかきだいこれのせくにいたり、 16また近傍きんばう町々まちまちより病人びやうにんあるひ汚鬼をきなやまさるるものどもたづさへて、人々ひとびとおびただしくエルザレムにはせつどたりしが、彼等かれらことごといやされつつありき。 17れば司祭しさいちやうおよそのともがらすなはちサドカイみなねたましさにへず、 18ちて使徒しとたちとらへ、これ監獄かんごくれたり。 19れどしゆ使つかひ夜中やちゆう監獄かんごくもんひらきて彼等かれらいだし、 20なんじきて、[しん]殿でんち、この生命せいめいことばことごと人民じんみんかたれ、とひしかば、 21彼等かれらこれき、黎明よあけに[しん]殿でんりてをしへたり。司祭しさいちやうおよこれともなへる人々ひとびと議員ぎゐんおよびイスラエルじん長老ちやうらう一同いちどうを[衆議所しゆうぎしよに]召集せうしふし、使徒しとたちひききたらせんとて、ひと監獄かんごくつかはししに、 22下役したやくどもいたりて監獄かんごくひらき、彼等かれららざるをたちかへり、げて、 23ひけるは、監獄かんごくかたぢ、看守かんしゆ門前もんぜんてることは、われこれ見届みとどけたれども、これひらけばうちにはたれえざりき、と。 24神殿しんでんつかさおよ司祭しさいちやうこれものがたりくや、使徒しとたちきて、その成行なりゆき如何いかにと當惑たうわくせるに、 25あるひときたりて、なんじ監獄かんごくれし人々ひとびとは、いま[しん]殿でんちて人民じんみんをしへつつあり、とげしかば、 26神殿しんでんつかさ下役したやくどもしたがきて使徒しとたちつれきたれり、れど人民じんみんよりいしなげうたれんことおそれて、暴力ばうりよくくはふることなかりき。 27つれきたりて議會ぎくわいうちたせ、司祭しさいちやう尋問じんもんして、 28かのによりてをしふることなかれとは、われが、きびしくめいぜしところなるに、なんじそのをしへをエルザレムにたせ、かのひとわれはしめんとするにあらずや、とひしかば、 29ペトロおよ使徒しとたちこたへてひけるは、われひとに[したがふ]よりはかみしたがはざるべからず。 30われ先祖せんぞかみは、なんじはりつけてころししイエズスを復活ふくくわつせしめたまへり。 31かみ改心かいしんつみゆるしとをイスラエルにたまはんために、みぎ御手おんてもつて、イエズスをきみとし救主すくひぬしとしてたまひしなり。 32われこれこと證人しようにんにして、かみすべおのれしたが人々ひとびとたまへるところ聖霊せいれいも、またこれしようたまふなり、と。 33會衆くわいしゆうこれきていきどほりへず、使徒しとたちころさんとおもたりしが、 34人民じんみん一般いつぱんよりたふとばるる律法りつぱふ學士がくしガマリエルとへるファリザイじん議會ぎくわいち、めいじて使徒しとたちしばらそとたしめ、 35會衆くわいしゆうひけるは、イスラエルじんよ、みづかかの人々ひとびとさんとするところつつしめ、 36このあひだテオダ[なるもの]おこりて、みづか人物じんぶつしようし、これくみせしひとすうおよそ四百なりしも、かれころされたれば、これ信用しんようせし人々ひとびとことごとりて皆無かいむとなれり。 37そののち人別にんべつ調しらべとき、ガリレアのユダおこりて人民じんみんいざなひ、おのれしたがはしめしが、かれほろびたればこれくみせしひとことごとりたりき。 38いまわれなんじはん、かの人々ひとびととほざかりてこれさしおけ、その計画けいくわくもしくは事業じげふひとよりのものならばくずるべく、 39かみよりのものならば、なんじこれくづすことあたはずして、おそらくはかみにもさからふものらるべければなり、と。會衆くわいしゆうこれ賛成さんせいして、 40使徒しとたち呼出よびいだし、これむちうちてのち、イエズスのによりてかたこと厳禁げんきんしてかへせり。 41使徒しとたちイエズスの御名みなため恥辱ちじよくくるにものられしをよろこびつつ會衆くわいしゆうまへりしが、 42日々にちにち神殿しんでんにて、また家々いへいへめぐりてひとをしへ、キリスト、イエズスの福音ふくいんべてまざりき。

第6章[編集]

1そのころ弟子でしかずくははるにしたがひ、ギリシアのユデアじんその寡婦やもめ毎日まいにちほどこしらされたりとて、ヘブレオのユデアじんたいしてつぶやくにいたりしかば、 2十二使徒しと許多あまた弟子でし呼集よびあつめてひけるは、われかみ御言おんことばさしおき食卓しよくたく給仕きふじするは、道理だうりあらず。 3ゆゑ兄弟等きやうだいたちよ、なんじうちより、聖霊せいれい知慮ちりよとにちて好評かうひやうあるものにんえらめ、われこれこの事務じむつかさどらしめ、 4みづからは祈祷きたう宣教せんけうとにゆだねん、と。 5このことば群衆ぐんしゆう一同いちどうこころかなひしかば、信仰しんかう聖霊せいれいとにてるステファノならびにフィリッポ、プロコロ、ニカノル、チモン、パルメナ、またユデアけう歸依きえしたりしアンチオキアのニコラをえらみて、 6使徒しとたちまへ差出さしいだしたるに、使徒しとたち祈祷きたうしつつこれ按手あんしゆせり。 7かくしゆ御言おんことばますますひろまり、エルザレムにおい弟子でしかずこと非常ひじやうにして、司祭しさい信仰しんかう歸服きふくしたるものまたおびただしかりき。 8かくてステファノは恩寵おんちよう勇氣ゆうきとにちて、おほいなる奇蹟きせきしるしとを人民じんみんうちおこなたりしが、 9ある人々ひとびとは、所謂いはゆる解放かいはうしや會堂くわいどうおよびクレネじん、アレキサンドリアじんおよびシリシアと[せう]アジアとの出身しゆつしんしやしよ會堂くわいどうよりちて、ステファノと争論さうろんすれども、 10かれ智恵ちゑかれおいかたたまへる聖霊せいれいとに抵抗ていかうすることあたはざりき。 11れば彼等かれらある人々ひとびと教唆けうさして、われかれがモイゼとかみとを冒涜ばうとくすることばいだせるをけり、とはしめ、 12つひ人民じんみん長老ちやうらう律法りつぱふ學士がくしとを煽動せんどうして、一斉いつせいとびかかりてこれとらへ、衆議所しゆうぎしよ引出ひきいだし、 13僞證ぎしようにんててはせけるは、このひと聖所せいじよ律法りつぱふとにはんすることばかたりてまず、 14すなはわれは、かのナザレトのイエズスこのところほろぼし、モイゼのわれつたへしれいふべし、とかれふをけり、と。 15かく議會ぎくわい列座れつざせるひと一同いちどうそそぎてステファノをれば、そのかほあたか天使てんしかほごとくなりき。

第7章[編集]

1とき司祭しさいちやうこれことはたしてしかるか、とひしかば、 2ステファノひけるは、かれよ、兄弟きやうだいにしてちちたる人々ひとびとわれちちアブラハム、カランに住居じゆうきよするにさきだちて、メソポタミアにりしとき光榮くわうえいかみこれあらはれて、 3のたまひけるは、なんじくに親族しんぞくはなれて、しめさんいたれ、と。 4かくてアブラハムカルデアじんでてカランにみしが、そのちち死後しごかみ彼處かしこより、なんじげんめるかれうつたまひ、 5あしふみつるばかりだに、そのにては遺産ゐさんたまものはざりき。れどその所有しよいうとしてこれあたへ、そのときいまあらざりしも、あと子孫しそんあたへんことやくたまひ、 6かみこれのたまひけるは、「その子孫しそん他國たこくみ、人々ひとびとこれ奴隷どれいし、四百ねんあひだ虐待ぎやくたいせん、 7れどもわれ彼等かれらつかへしところ國民こくみんさばくべし、かくのち彼等かれらそのくにでて、此處ここにてわれ禮拝れいはいせん、としゆのたまへり」、と。 8アブラハムなほ割禮かつれい契約けいやくたまはりしかば、イザアクをみて八日やうかこれ割禮かつれいほどこし、イザアクはヤコブをみ、ヤコブ十二にんたいめり。 9たいたちねたみてヨゼフをエジプトにりたれど、かみこれともましまして、 10すべての患難くわんなんより救出すくひいだし、エジプト國王こくわうファラオンより寵愛ちようあいさせ、かつ智恵ちゑたまひしにり、ファラオンはエジプトとおのいへとをげてこれつかさどらしめたり。 11しかるにぜんエジプトおよびカナアンに飢饉ききんおほいなる災難さいなんおこり、われ先祖せんぞ食物しょくもつもとざりしに、 12ヤコブエジプトにむぎあるをきて、まづわれ先祖せんぞたちつかはし、 13つぎたびにヨゼフその兄弟きやうだいられ、そのやからはファラオンにられたり。 14ヨゼフひとつかはして、ちちなるヤコブおよその家族かぞくすべて七十五にんよびきたらししにより、 15ヤコブエジプトにくだり、そのわれ先祖せんぞたちも、彼處かしこして、 16シケムにおくられ、アブラハムがかつてシケムにおいてヘモルの子等こどもよりぎんせんもつ買受かひうけし墓地ぼちはうむられたり。 17かくかみのアブラハムにちかたまひし約束やくそくときちかづきしに、たみかずしておほいにエジプトに繁殖はんしよくしたれば、 18ヨゼフをらざるわうおこるにおよびて、 19あくけいもつわれ種族しゆぞくあたり、われ先祖せんぞなやまして、そのうまれながらへざらんためこれてしめたり。 20モイゼこのときあたりてうまれたりしが、かみうつくしくしてちちいへそだてらるること三月みつき21つひてられしをファラオンのむすめとりげて、おのとして養育やういくしたり。 22かくてモイゼはエジプトひと學術がくじゆつことごとをしへられ、言行げんこうともちからありしが、 23まん四十さいときおの兄弟きやうだいたるイスラエルの子孫しそんかへりみんとのこころおこり、 24あるひとがいせらるるをこれふせぎ、エジプトじんちて被害ひがいしやあだかへせり。 25モイゼは兄弟等きやうだいたちが、かみわがによりておのれすくたまふべきをかならさとるならんとおもひしに、彼等かれらこれさとらざりき。 26翌日よくじつ彼等かれらあひあらそへるところあらはれて和睦わぼくすすめ、人々ひとびとよ、なんじ兄弟きやうだいなるになんあひがいするや、とひしかば、 27そのちかものがいせるひとこれおし退けてひけるは、たれなんじててわれつかさとし判官さばきてとせしぞ、 28なんじ昨日きのふエジプトじんころししごとわれころさんとするか、と。 29このことばによりモイゼ脱走だつそうしてマヂアン地方ちはう旅人たびびとり、彼處かしこにて二人ふたりげたり。 30四十ねんてシナイざん荒野あれのおいて、ゆるいばらほのほうち天使てんしこれあらはれければ、 31モイゼそのところあやしみ、見届みとどけんとしてちかづきけるに、しゆこゑありていはく、 32われなんじ先祖せんぞたちかみすなはちアブラハムのかみ、イザアクのかみ、ヤコブのかみなり、と。モイゼ戰慄わななきて、あへながめず、 33しゆこれのたまはく、あし履物はきものげ、なんじてるところ聖地せいちなればなり、 34われはエジプトにわがたみなやみかへりみ、そのなげききて彼等かれらすくはんためくだれり、いざきたれ、われなんじをエジプトにつかはさん、と。 35かく彼等かれらが、たれなんじててわれつかさとし判官さばきてししぞ、とひてこばみしこのモイゼをば、かみいばらうちあらはれし天使てんしもつて、つかさとしすくひひととしてつかはしたまひしなり。 36モイゼ彼等かれらみちびいだして、エジプトの紅海うかいまた荒野あれのに、四十ねんあひだ奇蹟きせきしるしとをおこなひしが、 37これぞイスラエルのむかひて、かみなんじうちよりわがごと一人ひとり預言よげんしやおこたまはん、なんじこれくべし、とひしそのモイゼなる。 38これすなはかつ荒野あれのくわいせしとき、シナイざんにてともかたりし天使てんしおよわれ先祖せんぞともりしひとわれさづくべき生命せいめいことばさづかりしひとなり。 39われ先祖せんぞこれしたがふことをこばみ、かえつかれしりぞけてこころをエジプトに転じ、 40アアロンにへらく、なんじわれさきんずべき神々かみがみわれためつくれ、けだしわれをエジプトのよりみちびいだししかのモイゼにきては、その如何いかになりしかをらず、と。 41かく彼等かれらそのときあたりてこうしつくり、偶像ぐうざう犠牲いけにへささげ、おのわざによりてよろこびたりしかば、 42かみ彼等かれらかへりたまはず、そのてんぐんつかふるにまかたまへり。すなは預言よげんしやたちしよかきしるしたるがごとし、[いはく]「イスラエルのいへよ、なんじ荒野あれのおいて、四十ねんあひだ犠牲いけにへ供物そなへものとをわれささげしか、 43なんじはモロクの幕屋まくやおよなんじかみとせるレンファのほしがたすなは禮拝れいはいせんとてみづかつくれるすがたかきまはれり、ればわれなんじをバビロンの彼方かなたうつすべし」と。 44そもそも證明しようめい幕屋まくやわれ先祖せんぞとも荒野あれのりて、かみがモイゼにかたりて、みづかたりししきしたがひてこれつくれ、とめいたまひしごとくなりき。 45かく異邦いはうじんすなはかみわれ先祖せんぞ面前めんぜん追払おいはらたまひしたみくに占有せんいうせしときに、われ先祖せんぞこの幕屋まくやりて、ヨズエとともこれたづさりて、ダヴィドの時代じだいいたりしが、 46ダヴィドはかみ御前みまへちようて、ヤコブのかみため住處すみかまうけんことねがひければ、 47サロモンはかみいへてたり。 48れどいとたかものは、にてつくれるところたまものあらず、 49すなはち「しゆのたまはく、てんわがなり、わがあしだいなり、なんじ如何いかなるいへをかわれつくらん、やすところ何處いづこなるか、 50これみなわがつくりたるものならずや」と預言よげんしやへるがごとし。 51くびこはくしてこころにもみみにも割禮かつれいなきものよ、何時いつ聖霊せいれいさからふこと、なんじ先祖せんぞししごとく、なんじまたしかす、 52なんじ先祖せんぞは、預言よげんしやうちいずれをか迫害はくがいせざりし、彼等かれら義者ぎしや來臨らいりん預言よげんせる人々ひとびところしたるに、なんじいまこの義者ぎしやをばかつころしたるものとなれり。 53また天使てんしによりて律法りつぱふけしも、なんじこれまもらざりき、と[べたり]。 54これこときて、人々ひとびとむねくるがごとく、ステファノにむかひて切歯はがみすれども、 55かれ聖霊せいれいちたれば、てんあふぎて、かみ光榮くわうえいかみみぎたまへるイエズスとをて、 56ひけるは、よ、われてんひらけて、ひとかみみぎたまへるをたてまつる、と。 57そのとき彼等かれらみみおほひ、こゑたかさけびつつ一同いちどうちかかり、 58ステファノを市街まちより追出おひいだしていしなげうちしが、立會たちあいにんはサウロとへる若者わかもの足下あしもとおの上衣うはぎけり。 59かく彼等かれらいしなげうほどに、ステファノいのりりてひけるは、しゆイエズスわがたましひたまへ、と。 60またひざまづきつつこゑたかよばはりてひけるは、しゆよ、このつみ彼等かれらはせたまふことなかれ、と。いひをはりてしゆねむりけるが、サウロはかれ死刑しけい賛成さんせいしたりき。

第8章[編集]

1そのエルザレムの教會けうくわいたいしておほいなる迫害はくがいおこり、使徒しとたちほかみなユデアおよびサマリアのかく地方ちはう離散りさんせしが、 2敬虔けいけんなる人々ひとびとステファノをはうむり、かれためおほいなるとむらひせり。 3てサウロは教會けうくわいらし、家々いへいへりて男女だんぢよ引出ひきいだし、これわたして拘留こうりうせしめつつありしが、 4離散りさんせる人々ひとびとゆきめぐりて、かみ御言おんことば福音ふくいん宣傳のべつたへつつありき。 5てフィリッポ、サマリアの都會とくわいくだりてキリストのことべければ、 6人々ひとびとこころそろへてフィリッポのところきすまし、そのせるしるしたり。 7すなはおほくの汚鬼をきそのきたる人々ひとびとうちよりこゑたかさけびつつで、また*瘋ちゆうぶしや跛者あしなへとのいやされたるものおほかりければ、 8かの市中まちおほいなるよろこびとなれり。 9ここにシモンとへるひとあり、かねかの市中しちゆう魔術まじゆつおこなひて、サマリアの人民じんみんまどはし、みづか大人たいじんしようし、 10せうよりだいいたるまでひとみなこれ歸服きふくして、所謂いはゆる大神だいしんりきとはこのひとなり、とたりしが、 11人々ひとびとかれ歸服きふくせるは、ひさその魔術まじゆつこころうばはれたるゆゑなりき。 12れどフィリッポがかみくにつきぶる福音ふくいんしんじて、男女だんぢよともにイエズス、キリストの御名みなによりてせんせられければ、 13シモンみづからもしんじてせんせられ、フィリッポのかたはらはなれず、しるしもつとおほいなる奇蹟きせきとのおこなはるるを驚嘆きようたんたり。 14てエルザレムに使徒しとたち、サマリアじんかみ御言おんことばうけれたるをき、ペトロとヨハネとをつかはしければ、 15兩人りやうにん彼處かしこいたりて彼等かれら聖霊せいれいけんためいのれり。 16彼等かれらしゆイエズスの御名みなによりてせんせられしのみにて、聖霊せいれいいまその一人ひとりにもくだたまひしことなければなり。 17かく兩人りやうにん信者しんじやうへ按手あんしゆしければ、みな聖霊せいれいかうむりつつありき。 18使徒しとたち按手あんしゆによりて聖霊せいれいさづけらるるをるや、シモン彼等かれらかね差出さしいだし、 19如何いかなるひと按手あんしゆするもそのひと聖霊せいれいかうむやうわれにもこの能力のうりよくあたへよ、とひしかば、ペトロこれむかひてひけるは、 20なんじかねなんじともほろびよ、なんじかみたまものかねにてらるるものとおもひたればなり。 21なんじこのこと配分はいぶんなくあづかところなし、そのこころかみ御前みまへただしからざればなり。 22ればこの不義ふぎより改心かいしんしてかみいのれ、なんじこころこのおもひあるひゆるさるることあらん。 23ところによれば、なんじにが胆汁たんじう不義ふぎ縲絏なはめとのうちればなり、と。 24シモンこたへてひけるは、なんじこそわがためしゆいのりて、そのかたれるところひとつわれきたことなからしめよ、と。 25かくてペトロとヨハネとは、しゆ御言おんことばしようかつかたりて、のちエルザレムにかへりしが、途次みちすがらサマリアじんおほくのむら福音ふくいんべたり。 26しゆ使つかひフィリッポにかたりて、なんじちてみなみむかひ、エルザレムよりガザにくだみちいたれ、さびしきみちなり、とひしかば、 27かれちてきしに、をりしも一人ひとりのエチオピアじんすなはちエチオピア女王によわうカンダケの大臣だいじんなる閹者えんじやにしてことごとそのたからつかさどれるもの禮拝れいはいためにエルザレムにたりしが、 28おのくるまして、預言よげんしやイザヤ[のしよ]をみながらかへりつつありき。 29そのとき[せい]れいフィリッポにむかひ、ちかづきてかのくるまけ、とのたまひしかば、 30フィリッポはしりりて、かれ預言よげんしやイザヤ[のしよ]をめるをき、なんじそのところさとれりとおもふか、とひしに、かれ31われみちびものなくばいかでかさとることをん、とひて、りてともせんことをフィリッポにへり。 32そのみつつありし聖書せいしよぶんつぎごとし、「かれひつじごと屠所としよかれ、くちひらかざることこひつじそのものまへこゑなきがごとく、 33いやしめられて裁判さいばんうばはれたり、たれその時代じだいひと處分しよぶんぶることん、すなはけるもの地上ちじやうよりとりのぞかれたればなり」。 34閹者えんじやフィリッポにむかひて、ふ、預言よげんしやへるはたれことぞ、おのことはた他人たにんことか、とひければ、 35フィリッポくちひらきて、聖書せいしよこのぶんはじめとしてイエズスの福音ふくいんべたり。 36なほみちきけるに、みづあるところいたりしかば閹者えんじやよ、みづあり、せんせらるるになんさはりかある、とひしを、 37フィリッポ、なんじ一心いつしんしんぜばかるべし、とひければかれこたへて、われイエズス、キリストのかみ御子おんこたることしんず、とひ、 38めいじてくるまとどめしめ、二人ふたりながらみづくだりてフィリッポ閹者えんじやせんせり。 39彼等かれらみづよりあがりしに、しゆれいフィリッポを取去とりさたまひしかば、閹者えんじやふたたこれざりしかども、よろこびつつおのみちたりき。 40てフィリッポはアゾトにあらはれ、いたところ町村まちむら福音ふくいん宣傳のべつたへつつカイザリアにいたれり。

第9章[編集]

1サウロはしゆ弟子でしたちたいして、なほ脅喝けふかつ殺害さつがい毒氣どくききつつ司祭しさいちやういたり、 2ダマスコのしよ會堂くわいどうする書簡しよかんへり。これこのみち男女だんぢよ見出みいださば、しばりてエルザレムに引行ひきゆかんためなりき。 3かく途中みちすがらダマスコ附近ふきんいたりけるに、たちまてんよりひかりきたりてかれかこみてらししかば、 4かれたふれつつ、サウロよサウロよなんわれ迫害はくがいする、とこゑあるをきて、 5しゆよ、なんじたれぞ、とひけるにかのものわれなんじ迫害はくがいせるイエズスなり、とげあるむちさからふはなんじりてかたし、とへり。 6サウロおののかつおどろきりて、しゆよ、われなにさしめんと思召おぼしめしたるぞ、とひしにしゆのたまひけるは、きて市中しちゆうれ、なんじすべきこと彼處かしこにてげらるべし、と。 7このときともなへる人々ひとびとは、こゑをばきながらたれをもざれば、あきれててたたずみたりしが、 8サウロよりきてひらけども、なにえざりしかば、ひとそのきてダマスコにみちびきしに、 9三日みつかあひだ此處ここりてえず飲食いんしよくせざりき。 10しかるにダマスコにアナニアとへる弟子でしありしが、しゆ幻影まぼろしに、アナニアよ、とのたまひしかばかれしゆよ、われ此處ここり、とひしを、 11しゆまたこれのたまひけるは、ちて、すぐへるまちき、ユダのいへにサウロとなづくるタルソじんたづねよ、かれいのるなり、と。 12このときサウロは、アナニアとなづくるひと入來いりきたりて、視力しりよく回復くわいふくせんためおのれ按手あんしゆするをたりしなり。 13れどアナニアこたへけるは、しゆよ、このひとがエルザレムにおいしゆ聖徒せいとたちししがい如何許いかばかりなるかは、われおほくのひときしが、 14此處ここにてもかれ司祭しさいちやうよりけて、しゆ御名みなよびたのひとことごと捕縛ほばくするのけんいうせり、と。 15しゆアナニアにのたまひけるは、け、けだしかれ異邦いはうじん國王こくわうおよびイスラエルのまへわがもちために、えらみしうつはなり、 16ゆゑわがためには、如何許いかばかりくるしむべきかをわれこれしめさんとす、と。 17ここおいてアナニアきていへり、サウロに按手あんしゆして、兄弟きやうだいサウロよ、なんじきたれるみちにてなんじあらはたまひししゆイエズス、なんじ視力しりよく回復くわいふくし、かつ聖霊せいれいたされんためわれつかはしたまへり、とひしかば、 18たちまちサウロのよりうろこごときものちて、視力しりよく回復くわいふくし、ちてせんせられしが、 19やが食事しよくじしてちからづけり。數日すうじつあひだ、ダマスコの弟子でしたちともりて、 20ただちしよ會堂くわいどうおいてイエズスのことすなはそのかみ御子おんこたること宣傳のべつたへければ、 21ひとみなあきれてて、かつかのよびたのめる人々ひとびとをエルザレムにおい迫害はくがいたりしものにて、またかれここきたりしは、彼等かれら捕縛ほばくして、司祭しさいちやう引渡ひきわたさんためならずや、とたれど、 22サウロはいよいよちからまさりて、このイエズスはキリストなりと断言だんげんし、ダマスコにめるユデアじん閉口へいこうせしめつつありき。 23日頃ひごろてユデアじん一同いちどう、サウロをころさんと協議けふぎせしが、 24その計略はかりごとサウロにられたり。かく彼等かれら、サウロをころさんとて、晝夜ちうや[市街まちの]もんまもりけるに、 25弟子でしたち夜中やちゆうこれひきりてかごれ、城壁じやうへきよりつりおろしてのがれしめたり。 26サウロ、エルザレムにいたり、つとめて弟子でしたちうちつらならんとすれども、みなかれ弟子でしたることしんぜずしてこれおそれければ、 27バルナバたづさへて使徒しとたち連行つれゆき、かれ途中とちゆうにてしゆたてまつり、しゆこれものいたまひし次第しだいまたダマスコにおいてイエズスの御名みなために、はばかところなく盡力じんりよくせし次第しだいかたれり。 28これよりサウロ、エルザレムにりて彼等かれらとも出入いでいりし、はばかところなくしゆ御名みなため盡力じんりよくしたりけるが、 29またギリシアのユデアじんかたかつ弁論べんろんしければ、彼等かれらこれころさんとはかりしを、 30兄弟等きやうだいたちさとりてカイザリアにおくり、タルソにかしめたり。 31かくてユデア、ガリレア、サマリアにては教會けうくわい一般いつぱん平和へいわ次第しだい成立なりたち、かみたいする畏敬いけいすすみ、聖霊せいれいなぐさめによりて増加ぞうかしつつありしが、 32ペトロ諸方しよはうじゆんくわいして、ルッダにめる聖徒せいとたちもといたりしに、 33此處ここにてエネアとへるひとの八ねん以來いらい*瘋ちゆうぶみてとこせるにひ、 34これむかひて、エネアよ、しゆイエズス、キリストなんじいやたまふ、きてみづかとこととのへよ、とひければかれただちきたり。 35かくてルッダおよびサロンにめるひとみなこれしゆ歸依きえせり。 36てヨッペに一人ひとりをんな弟子でしあり、はタビタ、やくしてドルカ[すなは鹿しか]とはれ、從來じゆうらい善行ぜんかう慈善じぜんとにみたりしが、 37このときあたりて病死びやうしせしかば、しかばねあらひて高間たかまきたり。 38かくてルッダはヨッペにちかきにり、弟子でしたちペトロの此處ここるをき、二人ふたりひとつかはして、猶豫いうよなくわれもときたれ、とはしめしかば、 39ペトロちて彼等かれらともきたりしが、そのちやくするや人々ひとびとこれ高間たかまみちびき、寡婦やもめどもみなこれを圍みてうちきつつ、ドルカがおのれためつくたりし襦袢じゆばん上衣うはぎとをしめせり。 40ペトロひとことごとそといだし、ひざまづきていのり、しかばねむかひて、タビタきよ、とひしかば、をんなひらき、ペトロをすはれり。 41ペトロしてこれたしめ、聖徒せいとたちおよ寡婦やもめたちびて、生回いきかへりたるをかへあたへたり。 42このことヨッペにわたりければ、しゆ信仰しんかうする人々ひとびとおほく、 43ペトロはシモンとへるかわなめしいへりて、ひさしくヨッペにとどまるにいたれり。

第10章[編集]

1カイザリアにコルネリオとばるるひとあり、イタリアたいしようする軍隊ぐんたい百夫ひやくふちやうにして、 2信心しんじんふかく、家族かぞく一同いちどうともかみ畏敬ゐけいし、人民じんみんおほくの施與ほどこしおこなひ、つねかみいのりつつありしが、 3いちじつ午後ごごさんごろ幻影まぼろしうちに、かみ使つかひおのもときたりて、コルネリオよ、とべるをあきらかにしかば、 4これそそおそれりて、しゆよ、何事なにごとぞや、とひしに天使てんしこたへけるは、なんじ祈祷いのり施與ほどこしとは、記念きねんとしてかみ御前みまへのぼれり、 5いまひとをヨッペにつかはして、ペトロともばるるシモンとひとまねけ、 6海岸かいがんめるシモンとへるかわなめしいへ宿やどれるなり、かれなんじそのすべきことはん、と。 7おのれかたれる天使てんしりてのち、コルネリオはおの二人ふたりしもべ部下ぶか信心しんじんふか一人ひとり兵卒へいそつとをび、 8ことごと事情じじやうかたりてヨッペにつかはせり。 9翌日よくじつ彼等かれらなほ途中とちゆうりけるが、まちちかづけるときひるの十二ごろペトロいのらんとてひら屋根やねのぼれり。 10しかるにゑて物欲ものほしかりければ、ひと支度したくするうち、うばはるるごとくになり、 11てんひらけておほいなるぬのごとうつはくだり、四隅よすみつるされて、てんよりおろさるるをたり。 12そのうちには地上ちじやうあらゆる四足よつあしのもの、ふもの、およそらとりあり。 13またこゑありて、ペトロきよ、ほふりてしよくせよ、とひしかば、 14ペトロ、しゆよ、しからじ、われかつけがれたるものあるひきよからぬものをしよくせしことし、とひけるに、 15またふたたこゑありて、かみきよたまひしものを、なんじきよからずとふことなかれ、とへり。 16かくごとことたびにして、器物うつはものたちまてん取上とりあげられたり。 17ペトロこころうちに、その幻影まぼろし如何いかなるこころぞと當惑たうわくせるをりしも、コルネリオよりつかはされたる人々ひとびと、シモンのいへたづねて門前もんぜんたちとどまり、 18おとづれて、ペトロともばるるシモンは此處ここ宿やどれりや、とたり。 19ペトロは幻影まぼろしきてうちあんけるを、聖霊せいれいこれのたまはく、よ、さんにんをとこなんじたづぬ、 20ちてくだり、躊躇ちうちよすることなく彼等かれらともけ、彼等かれらつかはしたるものなれば、と。 21ペトロ人々ひとびとところくだりてひけるは、なんじたづぬるはわれなり、如何いかなるゆゑありてきたれるぞ、と。 22彼等かれらひけるは、百夫ひやくふちやうコルネリオは、かみ畏敬ゐけいしてユデアじん一般いつぱん好評かうひやうある義人ぎじんなるが、せいなる天使てんしより、なんじそのいへまねきてなんじことばけとのつげけたり、と。 23ここおいてペトロ、彼等かれらしやうじて宿やどらしめ、翌日よくじつ諸共もろとも出立しゆつたつしけるが、ヨッペより數人すにん兄弟きやうだいこれともなへり。 24次日つぎのひカイザリアにりしに、コルネリオはすで親族しんぞくおよしたしき朋友ほういう呼集よびあつめて、彼等かれら待受まちうけたり。 25ペトロの入來いりきたるや、コルネリオいでむかへてその足下あしもと禮拝れいはいせしかば、 26ペトロこれおこしてひけるは、て、われひとなり、と。 27かくあひかたりつつうちり、おほくのひとあつまれるをて、 28この人々ひとびとひけるは、ユデアじんにして異邦いはうじんつらなあるひちかづくことおきてかなはざるは、なんじところなり。れど何人なにびとをも、けがれたるものきよからぬものとふべからざることを、かみわれしめたまへり。 29ゆゑわれまねかれて躊躇ちうちよすることなくきたりしが、なんじはん、われまねきし所以ゆゑんなんぞ、と。 30コルネリオひけるは、よつ以前いぜん午後ごごさん我家わがいへりていのれるに、をりしもかがやける衣服いふくけたる一人ひとり男子だんしわがまへちてひけるは、 31コルネリオよ、なんじいのりはききれられ、なんじ施與ほどこしかみ御前みまへ記念きねんせられたり。 32ゆゑひとをヨッペにつかはし、ペトロともばるるシモンをむかええよ、かれ海岸かいがんなるかわなめしシモンのいへ宿やどれり、と。 33これりてただちひとなんじつかはししが、くこそたまひつれ。ればいまわれみなかみ御前みまへりて、しゆよりなんじめいぜられたることことごとうけたまはらんとす、と。 34そのときペトロくちひらきてひけるは、かみかたよたまはず、 35いづれの國民こくみんにもあれ、これ畏敬ゐけいしておこなひと御意みこころかなへることわれまことこれみとむ。 36かみ御言おんことばをイスラエルのおくり、イエズス、キリストをもつ平安へいあんたまひしが、これ萬民ばんみんしゆましますなる。 37なんじユデア一般いつぱんりしことれるならん、これすなはちヨハネの宣傳のべつたへし洗禮せんれいのち、ガリレアよりはじまりしことにして、 38かみはナザレトよりでたるイエズスに、聖霊せいれい能力のうりよくとをもつ注油ちゆうゆたまひしなり。かれ慈善じぜんおこなひ、かつすべ惡魔あくまおさへられたるひといやしつつすごたまへり、これかみかれともましましたればなり。 39われは、そのユデアじんおよびエルザレムにおいたまひ一切いつさいこと證人しようにんなるがユデアじんこれはりつけてころしたれども、 40かみ三日みつかこれ復活ふくくわつせしめかつあらはれしめたまへり。 41ただし人民じんみん一般いつぱんにはあらで、かみより預定よていせられし證人しようにんすなは死者ししやうちより復活ふくくわつたまひたるのちかれとも飲食いんしよくしたるわれあらはれしめたまひしなり。 42かつかみよりてられて、生者せいしや死者ししやとの審判しんぱんしやたること人民じんみんをしかつ證明しようめいすべしと、イエズスみづかわれめいたまひしなり。 43すべこれしんずるひとの、その御名みなによりてつみゆるしくることは、預言よげんしやみな證明しようめいしたるところなり、と。 44ペトロなほこれことばかたりつつあるに、聖霊せいれいことばける人々ひとびと一同いちどううへくだたまひ、 45ペトロにともなきたれる割禮かつれいある信徒しんとは、聖霊せいれい恩寵おんちよう異邦いはうじんにもそそがれたるにあきれてたり。 46彼等かれらことなることばかたりてかみあがたてまつるをけばなり。 47ここおいてペトロこたへけるは、この人々ひとびとすでわれごと聖霊せいれいかうむりたれば、たれみづきんじてそのせんせらるるをこばんや、と。 48かく彼等かれらがイエズス、キリストの御名みなによりてせんせられんことめいぜしかば、彼等かれらはペトロが數日すじつこのいへとどまらんことへり。

第11章[編集]

1異邦いはうじんかみ御言おんことばうけれしこと使徒しとたちおよびユデアに兄弟等きやうだいたちきこえしかば、 2ペトロがエルザレムにのぼるや、割禮かつれいある人々ひとびとこれなじりて、 3ひけるは、なんじなん割禮かつれいひとうちりてともしよくせしや、と。 4ペトロこと次第しだいときいだしてひけるは、 5われヨッペのまちりていのりしに、うばはるるごとくにして幻影まぼろしひしが、おほいなるぬのごと器物うつはもの四隅よすみつるされつつてんよりくだりてわがもときたるを6つらつらそのなかながむるに、地上ちじやう四足よつあしのもの、野獣やじう爬蟲はふものおよそらとりあるをたり。 7また、ペトロきよ、ほふりてしよくせよ、とわれへるこゑをもきたれば、 8われしゆよ、しからじ、けがれたるものきよからぬものはかつわがくちりしことなし、とひしに、 9ふたたてんよりこゑありて、かみきよたまひしものをなんじきよからずとふことなかれ、とこたへ、 10たびまでかくごとくなりしが、つひそのものみなまたてん引上ひきあげられたり。 11をりしもカイザリアより、わがもとつかはされたるものさんにんいへたちとどまりしかば、 12躊躇ちうちよすることなく彼等かれらともけ、と[せい]れいわれのたまへり。かくこのろくにん兄弟きやうだいわれともなきたり、一行いつかうかのひといへりたるに、 13かれ天使てんしおのいへちて、おのれつぎごとものいふを次第しだいかたれり。すなはち、ひとをヨッペにつかはして、ペトロとばるるシモンをまねけ、 14かれなんじおよなんじ一家いつかたすかるべき御言おんことばなんじかたらん、と。 15しかるにかたりいづるや、最初さいしよわれうへくだたまひしごとく、聖霊せいれい彼等かれらうへくだたまひたれば、 16我主わがしゆかつて、ヨハネはみづにてせんしたるになんじ聖霊せいれいにてせんせられん、とのたまひし御言おんことばおもひいだせり。 17すなはかみすでにイエズス、キリストを信仰しんかうせるわれ同様どうやうなる恩寵おんちよう彼等かれらにもたまひしを、われそもそもたれなれば、かみきんずることべかりしぞ、と。 18人々ひとびとこれこときて黙然もくぜんたりしが、またかみ光榮くわうえいたてまつりてひけるは、ればかみは、生命せいめいさせんために、異邦いはうじんにも改心かいしんたまひしなり、と。 19そもそもステファノのときおこりし迫害はくがいため離散りさんしたりし人々ひとびとは、フェニケア[しう]、クプロ[じま]、およびアンチオキア[]までめぐりきしも、ユデアじんほかたれにも御言おんことばかたらざりしが、 20彼等かれらうちにクプロおよびクレネの人々ひとびとありて、アンチオキアにりしかば、ギリシアじんにもかたりて、しゆイエズスのことげ、 21しゆ御手みて彼等かれらともりければ、數多あまたひとしんじてしゆ歸依きえせり。 22これ沙汰さたエルザレムなる教會けうくわいみみりしかば、バルナバをつかはしてアンチオキアまでいたらしめしに、 23かれいたりてかみ恩寵おんちようよろこび、決心けつしんしてしゆとどまらんこと一同いちどうすすたり。 24けだしかれ善人ぜんにんにして聖霊せいれい信仰しんかうとにてるひとなりければ、おびただしき群集ぐんしゆうしゆけり。 25てバルナバ、サウロをたづねんとてタルソにいたり、これひてアンチオキアにともなき、 26兩人りやうにん彼處かしこ教會けうくわいまんいちねんすごして、おびただしき群集ぐんしゆうをしへたり。かく弟子でしたちはアンチオキアにおいて、はじめ基督信徒キリシタンばるるにいたれり。 27そのときある預言よげんしやたち、エルザレムよりアンチオキアにいたりしが、 28彼等かれらうちより一人ひとりのアガポとへるものちて、だい飢饉ききんぜん世界せかいおこるべきことを、聖霊せいれいによりてたりけるに、はたしてクロウヂオ[皇帝くわうてい]の時代じだいおこりしかば、 29弟子でしたちおのおのちからおうじてユデアにめる兄弟きやうだい補助ほじよおくらんことさだめ、 30ついこれげて、バルナバとサウロとのたくして長老ちやうらうたちおくれり。

第12章[編集]

1當時そのころヘロデわうは、教會けうくわいある人々ひとびとなやまさんとしてくだし、 2やいばもつてヨハネの兄弟きやうだいヤコボをころししが、 3がユデアじんこころかなへるをて、またペトロをもとらへたり。とき無酵たねなしぱん祭日さいじつなりしかば、 4これとらへて監獄かんごくれ、過越すぎこしのまつりのち人民じんみんまへいださん心構こころがまへにて、にんぐみ兵卒へいそつくみこれまもらせたり。 5かくてペトロは監獄かんごくまもられつつあるに、教會けうくわいしきりかれためかみいのりをたり。 6てヘロデがかれいださんとするそのまへよる、ペトロ二個ふたつくさりつながれて二人ふたり兵卒へいそつあひだねむり、看守かんしゆ門前もんぜんりて監獄かんごくまもたるに、 7をりしもしゆ使つかひかたはらあらはれ、光明くわうみよう室内しつないかがやきたり。天使てんしペトロのわきたたきてこれまし、いそきよ、とひければ、くさりそのよりちたり。 8天使てんしまたなんじおびめて履物はきもの穿け、とひしに、ペトロしかししかば、また上衣うはぎまとひてわれしたがへ、とへり。 9ペトロでてこれしたがたりしが、天使てんしよりらるることまことなるをらず、幻影まぼろし心地ここちたり。 10だいだい二の番所ばんしよぎて、まちつうずるてつもんいたりしかば、そのもんみづか彼等かれらためひらけ、ともでて一筋ひとすじまちきしに、天使てんしにはかかれれり。 11そのときペトロわれかへりて、しゆその使つかひりてわれをヘロデのおよびユデアじんたみ待設まちまうけしすべてのことより救出すくひいだたまひたるをいままことさとりたる、とひて、 12思案しあんしつつ、マルコとばるるヨハネのははマリアのいへいたれり。おほくのひと此處ここあつまりていのけるを、 13ペトロもんとびらたたきければ、ロデとへる下女げぢよきにで、 14ペトロのこゑききるや、よろこびあまもんひらかずしておくかけり、ペトロ門前もんぜんてり、とげしかば、 15人々ひとびとロデにむかひ、なんじこころくるへり、とひたれど、下女げぢよは、それなりと断言だんげんするに、人々ひとびとはペトロの天使てんしならん、とたり。 16れどペトロたたきてまざれば、人々ひとびともんひらき、かれおどろきしが、 17かれ手眞似てまねにて人々ひとびとしづめ、しゆおのれ監獄かんごくより取出とりいだたまひし次第しだいかたり、これことをヤコボおよ兄弟等きやうだいたちげよ、とひて、でてところけり。 18あけおよびて、ペトロは如何いかにせしぞ、とて兵卒へいそつちゆうさわぎ一方ひとかたならず、 19ヘロデはペトロをもとめてこれ見出みいださざりしかば、看守かんしゆ審問じんもんして死罪しざいしよし、かくてユデアよりカイザリアにくだりて、其處そことどまれり。 20てチロおよびシドンの人々ひとびと、ヘロデのいかりれしにより、こころあはせてかれもといたり、王室わうしつ侍從じじゆうプラストの紹介せうかい和睦わぼくもとめたり、彼等かれら地方ちはうわうくにによりて糊口ここうすればなり。 21期日きじつあたりてヘロデわうふくちやくし、高座かうざきて彼等かれら談話だんわしけるを、 22人民じんみんこれかみこゑなり、ひとこゑあらず、と稱讃しようさんせるに、 23ヘロデかみ光榮くわうえいせざりければ、たちましゆ使つかひたれ、むしまれてせり。 24かくて、しゆ御言おんことばさかひろがりつつありしが、 25バルナバとサウロとはせいえきへ、マルコともばるるヨハネをたづさへてエルザレムよりかへれり。

第13章[編集]

1アンチオキアの教會けうくわいに、數人すにん預言よげんしやおよ教師けうしありて、そのなかにバルナバと、黒人こくじんなづくるシモンと、クレネのルシオと、ぶんこくわうヘロデの乳兄弟ちきやうだいなるマナヘンと、サウロとりしが、 2彼等かれらしゆまつりかつ断食だんじきしけるに、聖霊せいれいのたまひけるは、なんじバルナバとサウロとをわがためわかちて、彼等かれらにんじたるげふ從事じゆうじせしめよ、と。 3ここおい彼等かれら断食だんじきおよ祈祷きたうし、兩人りやうにん按手あんしゆして、これかしめたり。 4れば兩人りやうにん聖霊せいれいによりつかはされてセリュキアにき、彼處かしこよりクプロ[じま]に航海かうかいして、 5サラミネにいたりしかば、ユデアじんしよ會堂くわいどうにてかみ御言おんことば宣傳のべつたへ、ヨハネは助手じよしゆとして彼等かれらともりき。 6彼等かれらあまねしまめぐりてパフォスにいたりしに、魔術まじゆつしやにして預言よげんしやなる一人ひとりのユデアじんへり。をバリエズとひてセルジオ、パウロとへる地方ちはう総督そうとくともりしが、 7この総督そうとく智慮ちりよあるひとにて、バルナバとサウロとをまねきてかみ御言おんことばかんとほつすれども、 8かの魔術まじゆつしやエリマ、そのやくせらる、兩人りやうにん抵抗ていかうして、総督そうとく信仰しんかうよりとほざからしめんとつとたり。 9そのときパウロともへるサウロ、聖霊せいれいたされてこれそそぎ、 10嗚呼ああ所有あらゆる狡猾かうくわつ僞計ぎけいとにてるものよ、惡魔あくまよ、一切いつさいてきよ、なんじしゆすぐなるみちげてまず、 11いまよ、しゆ御手みてなんじうへかかり、なんじ瞽者めしひとなりてときいたるまでざるべし、とひけるに、たちま朦朧かすみ暗黒くらやみそのおほひ、かれさぐりまはりつつ手引てびきするものもとたりしかば、 12総督そうとくそのりしことて、しゆをしへ感嘆かんたん信仰しんかうせり。 13パウロおよそのともなへる人々ひとびと、パフォより出帆しゆつぱんしてパンフィリア[しう]の[みやこ]ペルゲンにいたりしが、ヨハネは彼等かれらりてエルザレムにかへれり。 14彼等かれらはペルゲンをてピジヂア[しう]の[みやこ]アンチオキアにいたり、安息日あんそくじつ會堂くわいどうりてせしかば、 15律法りつぱふおよ預言よげんしや[のしよ]を捧読ほうどくしたるのち會堂くわいどうつかさたちひと彼等かれらつかはしてはせけるは、兄弟きやうだいたる人々ひとびとよ、なんじ人民じんみんためすすめとなるべきはなしあらばかたれ、と。 16そのときパウロちて、(沈黙ちんもくせしめんために)手眞似てまねして、ひけるは、イスラエルの男子だんしおよかみ畏敬ゐけいせる人々ひとびとよ、け、 17イスラエルじんみんかみわれ先祖せんぞえらみ、そのエジプト地方ちはう寄留きりうせしとき人民じんみん引立ひきたて、かつおんうでげて彼處かしこよりみちびいだし、 18四十ねんあひだ荒野あれのおい彼等かれら挙動ふるまひしのび、 19かつカナアンのおいななつ民族みんぞくほろぼし、その土地とち彼等かれらがしめたまひしが、 20これ四百四十ねんたるのちことなり。そののち預言よげんしやサムエルにいたるまで判事はんじたまひ、 21彼等かれらつひわうもとめしかば、かみは四十ねんあひだベンヤミンぞくひと、シスのたるサウルをたまひ、 22これ退しりぞけてのちダヴィドをげてわうたまひしが、これ證明しようめいしてのたまへらく、「われわがこころかなへるひと、エッセのなるダヴィドをたり、かれことごと我意わがいすべし」と。 23かみおん約束やくそくままに、かれ子孫しそんうちより救主すくひぬしイエズスをイスラエルにいだたまひしが、 24そのきたるにさきだちてヨハネは改心かいしん洗禮せんれいをイスラエルの人民じんみんあまね宣傳のべつたへたり。 25れどヨハネおの使命しめいふるにあたりて、われなんじそれおもへるひとあらず、りながらよ、わがのちきたひとあり、われそのはきものくにもらず、とたりき。 26兄弟きやうだいたる人々ひとびとよ、アブラハムのすゑ子等こたちよ、またなんじうちかみ畏敬ゐけいするものよ、なんじにこそ、この救霊たすかりことばおくられたるなれ。 27はエルザレムにめるひとおよそのかしらたちは、キリストをみしらず、安息日あんそくじつごと捧読ほうどくする預言よげんしやたちことばをもらず、かれつみして預言よげんまつたうせり。 28かつ死罪しざい理由りいうひとつ見出みいださずして、ピラトにこれころさんこともとめ、 29かくこれくわんしてかきしるされたりしことことごとまつたうしたるのちよりおろしてこれはかをさめたり。 30れどかみ三日みつかこれ死者ししやうちより復活ふくくわつせしめたまひしかば、 31おほくのあひだかれともにガリレアよりエルザレムにのぼりし人々ひとびとあらはたまひ、彼等かれらいまいたるまで人民じんみんたいしてその證人しようにんたり。 32われかつわが先祖せんぞされしかの約束やくそく福音ふくいんなんじぐ、 33かみイエズスを復活ふくくわつせしめて、われ子等こらためこの約束やくそくまつたうしたまひたればなり、だいへんかきしるして、「なんじわがなり、われ今日こんにちなんじめり」、とあるがごとし。 34またこれ死者ししやうちより復活ふくくわつせしめたまひて、ふたた腐敗ふはいすべからざること指示さししめしてのたまへらく、「われダヴィドにししせいなる約束やくそくたしかまつたうせん」と。 35ればまたところに、「なんじせいなるもの腐敗ふはいたまことなかるべし」とへることあり、 36すなはちダヴィドは、生涯しやうがいかみ思召おぼしめしおうじてつかへ、ねむりてのち先祖せんぞともかれて腐敗ふはいたれども、 37かみ死者ししやうちより復活ふくくわつせしめたまひしもの腐敗ふはいざりしなり。 38ればなんじこれさとれ、兄弟きやうだいたる人々ひとびとよ、イエズスにりてこそ、なんじつみゆるしげられ、 39またモイゼの律法りつぱふもととせらるるをざりし一切いつさいつみきても、これしんずるひとみなとせらるるなれ。 40このゆゑなんじつつしめや、預言よげんしやたちの[しよに]はれしことおそらくはなんじ到來たうらいせん。 41すなはち「よ、あなどれる人々ひとびと感嘆かんたんし、しかしてほろびよ、けだしなんじいたりてわれいつげふさん、これひとなんじかたるともなんじしんぜざるべきほどげふなり」とあり、と。 42パウロバルナバの兩人りやうにん會堂くわいどうづるときつぎ安息日あんそくじつにもこのことばかたらんことはれしが、 43散會さんくわいのちおほくのユデアじんおよびユデアけう歸依きえせし人々ひとびと兩人りやうにんしたがきたりしかば、兩人りやうにん彼等かれらかたりて、かみ恩寵おんちようとどまらんことすすたり。 44つぎ安息日あんそくじつには、かみ御言おんことば聴聞ちやうもんせんとて、ほとんまちこぞりてあつまりしが、 45ユデアじん群集ぐんしゆうおびただしきをねたましさにたされ、ののしりてパウロのところこばみければ、 46パウロバルナバ毅然きぜんとしてひけるは、かみ御言おんことばまづなんじかたるべかりき。しかるになんじこれ退しりぞけて、みづか永遠えいえん生命せいめいるにらずとせるをもつて、われ転じて異邦いはうじんむかはんとするなり。 47けだししゆわれめいじて、「われなんじてて異邦いはうじんともしびとし、はてまですくひとならしめん」とのたまへり、と。 48異邦いはうじんこれきてよろこび、またしゆ御言おんことばあがゐたりしが、永遠えいえん生命せいめい預定よていせられし人々ひとびとことごとこれ信仰しんかうせり。 49かくしゆ御言おんことばぜん地方ちはうひろまりければ、 50ユデアじん敬虔けいけんなる貴夫人きふじんたちおよまち重立おもだちたる人々ひとびと煽動せんどうして、パウロとバルナバとにたいして迫害はくがいおこさせ、おの地方ちはうより彼等かれら追出おひいだせり。 51兩人りやうにん人々ひとびとむかひてあしちりはらい、イコニオムにいたりしが、 52弟子でしたち欣喜よろこび聖霊せいれいとにたされてありき。