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森の上のこの神楽殿

いそがしくのぼりて立てば

くわくこうはめぐりてどよみ

松の風頬を吹くなり


野をはるに北をのぞめば

紫波の城の二本の杉

かゞやきて黄ばめるものは

そが上に麦熟すらし


さらにまた夏雲の下

青々と山なみははせ

従ひて野は澱めども

かのまちはつひに見えざり


うらゝかに野を過ぎり行く

かの雲の影ともなりて

きみがべにありなんものを


さもわれののがれてあれば

うすくらき古着の店に

ひとり居て祖父や怒らん

いざ走せてこととふべきに


うちどよみまた鳥啼けば

いよいよに君ぞ恋しき

野はさらに雲の影して

松の風日に鳴るものを

この著作物は、1933年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。