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ルカ聖福音書3 (ラゲ訳)

提供:Wikisource

<聖書<我主イエズスキリストの新約聖書

『公敎宣敎師ラゲ譯 我主イエズスキリストの新約聖書』公敎會、

1910年発行

〔ローマ・カトリック訳〕

ラゲ訳新約聖書エミール・ラゲ(Emile Raguet,MEP)

ルカ聖福音書3

第13章

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1あたかそのときひとありて、ピラトが數人すにんのガリレアじん彼等かれら犧牲いけにへまじへしことげしかば、 2イエズスこたへてのたまひけるは、なんぢは、かのガリレアじんかかひたればとて、すべてのガリレアじんまさりてつみふかかりしとおもふか。 3われなんぢぐ、しからず、れど改心かいしんせずば、なんぢみなおなじくほろぶべし。 4またシロエにおいたふれたるたふためおしころされしかの十八にんも、エルザレムにめるすべてのひとまさりて負債ふさいありしとおもふか。 5われなんぢぐ、しからず、れどもし改心かいしんせずばなんぢみなおなじくほろぶべし、と。 6イエズスまたたとへかたたまひけるは、あるひとその葡萄ぶだうばた無花果いちじくのゑたりしが、きたりてそのもとめたれどざりしかば、 7葡萄ぶだうばたけ小作こさくにんひけるは、われきたりてこの無花果いちじくのもとむれどざることすでに三ねんなり、ればこれたふせ、なんいたずらふさぐや、と。 8小作こさくにんこたへて、しゆよ、今年ことしこれゆるたまへ。われその周圍まはりりて肥料ひれうほどこしなば、 9あるひむすこともあらん、くばそののちきりたふたまふべし、とへり、と。 10安息日あんそくじつあたりて、イエズス彼等かれら會堂くわいどうにてをしたまひけるに、 11をりしも十八ねん以來いらい癈疾はいしつおにかれ、かがまりてすこしもあふることあたはざるをんなあり。 12イエズスこれよびちかづけたまひ、をんなよ、なんぢその癈疾はいしつよりすくはれたるぞ、とのたまひてこれ按手あんしゆたまひしかば、 13をんなただちびてかみ光榮くわうえいたり。 14しかるに會堂くわいどうつかさ、イエズスの安息日あんそくじついやたまひしをいきどほり、こたへて群衆ぐんしゆうむかひ、はたらくべき六日むいかあり、ればそのあひだきたりていやされよ、安息日あんそくじつにはすべからず、とひければ、 15しゆこたへてのたまひけるは、僞善ぎぜんしやどもよ、なんぢおのおの安息日あんそくじつあたりて、おのうしあるひ驢馬ろばを、かいばぶねより解放ときはなちて、みづひにひきくにあらずや。 16しかるをこの十八年間ねんかんサタンにつながれたる、アブラハムのむすめは、そのつなぎ安息日あんそくじつかるべからざりしか、と。 17イエズスこのことどものたまひけるに、反對はんたいせるものどもみな赤面せきめんし、人民じんみんこぞりて、イエズスのさるる光榮くわうえいあるすべてのことよろこたり。 18すなはのたまひけるは、かみくになににかたる、われこれなににかなぞらへん、 19あだか一粒ひとつぶ芥種からしだねごとし、ひとこれりてそのはたきたれば、そだちて大木たいぼくり、そらとりそのえだやすめり、と。 20またのたまひけるは、わがかみくになににかなぞらへん、 21あだか麪酵ぱんだねごとし、をんなこれりて三うちかくせば、つひことごとふくるるにいたる、と。 22かくてイエズス、まちむらをしへつつぎてエルザレムへたびたまふに、 23あるひとしゆよ、すくはるるものすくなきか、とひしかば、人々ひとびとのたまひけるは、 24せばもんよりことつとめよ、けだしわれなんぢぐ、おほくのひとこともとむべけれども、しかあたはざるべし。 25家父かふすでりてもんぢたらんときには、なんぢそとちて、しゆよ、われひらたまへ、とひつつもんたたはじむべけれど、かれこたへて、われなんぢ何處いづこものなるかをらず、とはん。 26なんぢそのときわれなんぢ御前みまへにて飲食いんしよくし、なんぢわれちまたにてをしたまひしなり、とはんとすべし。 27しかれどもかれなんぢむかひ、われなんぢ何處いづこものなるかをらず、あくともがらよ、ことごとわれよりれ、とはん。 28かくなんぢ、アブラハム、イザアク、ヤコブおよ一切いつさい預言よげんしやかみくにりながら、おのれのみ逐出おひいださるるをば、其處そこ痛哭なげき切齒はがみとあらん。 29また東西とうざいなんぼくよりきたりて、かみくにせき人々ひとびとあらん。 30かくよ、あとなるひとさきになり、さきなるひとあとにならん、と。 31おなに、ファリザイじん數人すにんちかづきてイエズスにむかひ、ヘロデなんぢころさんとす、でて此處ここれ、とひしかば、 32彼等かれらむかひてのたまひけるは、きてかのきつねげよ、よ、今日けふ明日あすも、われ惡魔あくま逐拂おひはらひ、人々ひとびといやし、しかして三日みつかわがことをはるべし、 33しかれども、今日けふ明日あすそのつぎも、われあゆまざるべからず、はエルザレムのほかたふるるは、預言よげんしやたるものりて相應ふさわしからざればなり、と。 34エルザレムよ、エルザレムよ、預言よげんしやたちころし、なんぢつかはされたる人々ひとびといしなげうものよ、あだかとりびなつばさしたに[あつむる]ごとく、なんぢ子等こどもあつめんとせしこと幾度いくたびぞや、れどなんぢこれがへんぜざりき。 35よ、なんぢいへ荒廢あれすたれてなんぢのこらん、われなんぢぐ、しゆ御名みなによりてきたるものしゆくせられよかし、となんぢとなへんときいたるまで、なんぢわれことなかるべし、と。

第14章

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1イエズス安息日あんそくじつぱんしよくせんとて、ファリザイじんかしらだちたるあるものいへたまひしかば、彼等かれらこれうかがたり、 2をりしも水腫すいしゆかかれるひと御前みまへりければ、 3イエズスこたへて律法りつぱふ學士がくしとファリザイじんとにむかひ、安息日あんそくじついやすはきか、とのたまひしに、 4彼等かれら默然もくぜんたりしかば、イエズスかれとらへていやし、さてこれらしめて、 5彼等かれらこたへてのたまひけるは、なんぢうちおの驢馬ろばあるひうしちたるものあらんに、安息日あんそくじつなりとも、たれすみやかこれ引上ひきあげざらんや、と。 6彼等かれらこれたいして、こたふることあたはざりき。 7またまねかれたる人々ひとびと上席じやうせきえら狀態ありさまて、彼等かれらたとへかたりてのたまひけるは、 8なんぢこんえんまねかれたるとき上席じやうせきくことなかれ、おそらくはなんぢよりもたふとひとまねかれたらんに、 9なんぢかれとをまねきたるひときたりてなんぢむかひ、このきやくせきゆづれとはん、しからばなんぢ赤面せきめんして末席まつせきくにいたるべし。 10ればまねかれたるとききて末席まつせきけ、しからばまねきたるひときたりて、ともかみすすめとはん。かくなんぢ列席れつせきせる人々ひとびとまへ面目めんぼくあるべし。 11けだしすべみづかたかぶひとげられ、みづかへりくだひとげらるべし、と。 12イエズスまたおのれまねきたるひとのたまひけるは、なんぢ午餐ごさんまた晚餐ばんさんまうくるとき朋友ほういう兄弟きやうだい親族しんぞくめる隣人りんじんまねくことなかれ、おそらくは彼等かれらまたなんぢまねきてなんぢむくいとならん。 13さて饗筵ふるまひまうけば、貧窮ひんきゆう廢疾かたはあしなへめしひなるひとまねけ、 14彼等かれらなんぢむくゆべきよしなくして、なんぢさいはひなるべし。義人ぎじん復活ふくくわつときむくいらるべければなり、と。 15列席れつせきしや一人ひとりこれきてイエズスにひけるは、かみくににてぱんしよくせんひとさいはひなるかな、と。 16イエズスこれのたまひけるは、あるひとおほいなる晚餐ばんさんまうけて、おほくのひと招待せうたいせしが、 17晚餐ばんさん時刻じこくいたりてしもべつかはし、最早もはや萬事ばんじととのひたればきたられよ、とまねかれたる人々ひとびとはしめしに、 18彼等かれらみな一同いちどうことわでたり。はじめものは、われ小作こさくひたればきてざるべからず、われゆるせ、とひ、 19つぎものは、われいつくびきうしひたればきてこころみんとす、われゆるせ、とひ、 20また一人ひとりは、われつまめとりたるがゆゑくことあたはず、とひしかば、 21しもべかへりてその次第しだい主人しゆじんげしに、家父かふいかりてしもべひけるは、すみやかまちちまたつじとにきて、貧窮ひんきゆう廢疾かたはめしひあしなへなる人々ひとびと此處ここともなきたれ、と。 22しもべやがて、しゆめいたまひしごとくにしかどなほ空席くうせきあり、とひしかば、 23そのとき主人しゆじんしもべひけるは、なんぢみちおよびまがきもとき、ひとひて、我家わがいへつるまでらしめよ、と。 24われなんぢぐ、かのまねかれたるものうち一人ひとりわが晚餐ばんさんあじははじ、と。 25群衆ぐんしゆうおびただしくイエズスにともなひければ、かへりみてのたまひけるは、ひとわれきたりて、 26その父母ふぼ妻子さいし兄弟きやうだい姉妹しまいおの生命せいめいまでもにくむにあらざれば、わが弟子でしたることあたはず、 27またおの十字架じふじかになひてわれしたがはざるひとは、わが弟子でしたることあたはず。 28なんぢうちたれか、たふてんとほつして、まづしてこれえうする費用ひようはかり、てるものこれ成就じやうじゆするにれりやいなやをかぞへざらんや、 29もしいしずゑさだめたるのち成就じやうじゆすることあたはずば、ものこれあざけでて、 30このひとはじめて成就じやうじゆすることあたはざりき、とはん。 31また如何いかなるわうか、でてわうたたかひまじへんとするにあたり、まづして、二まんひききたものに、わがまんもつむかふことをべきか、と、おもんぱからざらんや、 32もしべからずばてきなほとほあひだに、使節しせつつかはして講和かうわもとむべし。 33これひとしくなんぢうちそのてるものことごと見限みかぎらざるものは、たれにてもあれわが弟子でしたることあたはず。 34しほものなり、れどしほもしそのあぢうしなはば、なにもつてかこれしほせん、 35土地とちにも肥料ひれうにもえきなくして、そとてられんのみ、みみてるひとけ、と。

第15章

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1とき稅吏みつぎとり罪人つみびと、イエズスにかんとてちかづきければ、 2ファリザイじん律法りつぱふ學士がくしつぶやきて、このひと罪人つみびとけてともしよくするよ、とたりしかば、 3イエズス彼等かれらたとへかたりてのたまひけるは、 4なんぢうちたれか、ひやくとうひつじありてそのいつとううしなひたらんに、九十九とうきてそのせたるものを見出みいだすまでたずねざらんや。 5これ見出みいださば、よろこびておのかたせ、 6いへかへりて朋友ほういう隣人りんじん呼集よびあつめ、われせたりしひつじいだしたればわれともよろこべ、とはん、 7われなんぢぐ、かくごとく、改心かいしんする一個ひとり罪人つみびとためには、改心かいしんえうせざる九十九の義人ぎじんためよりも、てんおいよろこびあるべし。 8また如何いかなるをんなか、ダラクマ十まいありてそのいちまいうしなひたらんに、ともしびともし、いへきていだすまでさがさざらんや。 9いださば、おのれ朋友ほういう隣人りんじん呼集よびあつめて、うしなひたりしダラクマをいだしたればわれともよろこべ、とはん。 10われなんぢぐ、かくごとく、改心かいしんする一個ひとり罪人つみびとためには、かみ使つかひたちまへよろこびあるべし、と。 11またのたまひけるは、あるひと二人ふたりありしが、 12次男じなんなるものちちむかひ、ちちよ、われてらるべきぶん財産ざいさんわれたまへ、とひしかば、ちち子等こども財産ざいさんわかてり。 13幾日いくにちざるに、次男じなん一切いつさいかきあつめて遠國ゑんごく出立しゆつたつし、彼處かしこにて放蕩はうたうなる生活せいくわつ財産ざいさん浪費らうひせり。 14すで一切いつさいつひやしてのちかの地方ちはうだい飢饉ききんおこりしかば、かれやうやとぼしくなり、 15その地方ちはうあるひともといたりてこれすがりしに、そのひとこれおの小作こさくりてぶたはせたり。 16かくぶたくらまめがらもておのはらたさんことのぞたりしかど、これあたふるものなかりき。 17やがみづからかへりみてひけるは、わがちちいへにはぱんける傭人やとひにん幾許いくばくかあるに、われ此處ここにてうゑなんとす。 18ちてわがちちもといたり、ちちよ、われてんたいしてもなんぢまへにもつみおかせり、 19われ最早もはやなんぢばるるにらず、ねがはくはわれなんぢ傭人やとひにん一人ひとり視做みなたまへ、とはん、と。 20すなはちてちちもとしてきしが、いまほどとほかりけるに、ちちこれあはれかんじ、はしりきてそのくびいだき、これ接吻せつぷんせり。 21は、ちちよ、われてんたいしてもなんぢまへにもつみおかせり、われ最早もはやなんぢばるるにらず、とひしかど、 22ちちしもべむかひ、はや最上さいじやうふくとりきたりてこれせ、その指輪ゆびわめ、あしくつ穿かせよ、 23またえたるこうしひききたりてほふれ、われ會食くわいしよくしてたのしまん、 24このわがしたるによみがへり、せたるにいだされたればなり、とひてえんひらけり。 25しかるに長男ちやうなんはたけたりしが、かへりきたりていへちかづくとき奏樂なりもの舞踏をどり物音ものおときこえしかば、 26しもべ一人ひとりびて、何事なにごとぞとひしに、 27しもべひけるは、なんぢおとときたれり、これつつがなくむかへたるにより、なんぢちちえたるこうしほふりたるなり、と。 28長男ちやうなんいきどほりていへことがへんぜざりしかば、ちちでてねんごろこひでけるに、 29かれこたへてひけるは、よ、われ多年たねんなんぢつかへ、いまだかつなんぢめいそむきしことなきに、一疋いつぴき山羊やぎだも、朋友ともだちとも會食くわいしよくせんために、なんぢよりあたへられしことなし、 30しかるを娼妓しやうぎとも財産ざいさんくひつくしたる、かのなんぢきたるや、なんぢこれためえたるこうしほふれり、と。 31ちちこれひけるは、よ、なんぢつねわれともりて、わがものみななんぢものなり、 32れどもなんぢをととは、したるによみがへり、せたるにいだされたれば、われ愉快ゆくわいつくしてよろこばざるをざりしなり、と。

第16章

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1イエズスまた弟子でしたちのたまひけるは、ある富豪ふがう一人ひとり家令かれいありしが、主人しゆじん財産ざいさん浪費らうひせりとて、うつたへでられしかば、 2主人しゆじんかれび、なんぢきてところこれ何事なにごとぞや、なんぢ最早もはや家令かれいたるをざれば、家令かれいたりしとき會計くわいけい差出さしいだせ、とひしに、 3家令かれいこころうちひけるは、わが主人しゆじん家令かれいしよくわれよりうばへるうへは、われなにすべきぞ、たがやことかなはず、乞食こじきするははづかし、 4家令かれいめられたるのち人々ひとびといへけられんためには、すべきやうこそあれ、とて、 5主人しゆじん負債ふさいある人々ひとびと呼集よびあつめて、はじめ一人ひとりひけるは、わがしゆじんたいするなんぢ負債ふさい幾許いくばくぞ、と。 6かれあぶらたるなり、とひしに、家令かれいひけるは、なんぢしようしより、はやして五十とけ、と。 7またつぎものひけるは、なんぢ負債ふさい幾許いくばくぞと、かれむぎこくなりとひしに、家令かれいひけるは、なんぢしようしよりて八十とけ、と。 8しかるに主人しゆじんこの不正ふせいなる家令かれいめて、その手段しゆだん巧妙たくみなりとせり。けだしこの子等こどもたがひひかり子等こどもよりも巧妙たくみなればなり。 9われまたなんぢぐ、なんぢ不正ふせいとみもつ友人いうじんつくり、いきえしのちなんぢ永遠えいえん住處すみかうけれしむべくよ。 10そもそも小事せうじちゆうなるひと大事だいじにもまたちゆうなり、小事せうじ不正ふせいなるひと大事だいじにもまた不正ふせいなり。 11ればなんぢ不正ふせいとみおいちゆうならざりせば、たれまこととみなんぢたくせん。 12また他人たにんものおいちゆうならざりせば、たれなんぢものなんぢあたへん。 13一人ひとりしもべ二人ふたりしゆかねつかふることあたはず、あるひ一人ひとりにくみて一人ひとりあいし、あるひ一人ひとりしたがひて一人ひとりうとむべければなり。なんぢかみとみとにかねつかふることあたはず、[とのたまへり]。 14しかるに貪欲どんよくなるファリザイじんこの始終しじゆうこときてあざけりければ、 15イエズス彼等かれらのたまひけるは、なんぢひとまへみづかとするものなり、れどかみなんぢこころたまふ、けだしひとりてたかものは、かみ御前みまへにくむべきものなり。 16律法りつぱふ預言よげんしやたちとはヨハネをかぎりとす、そのときよりかみくに宣傳のべつたへられ、ひとみなちからつくしてこれいたらんとす。 17天地てんちすたるは、律法りつぱふいつくわくつるよりはやすし。 18すべつまいだしてめとひと姦淫かんいんおこなものなり、またをつとよりいだされたるをんなめとひと姦淫かんいんおこなものなり。 19かつ一人ひとり富豪ふがうあり、緋色ひいろぬの亞麻あまぬのとをまとひ、日々ひびおごらしたるに、 20またラザルとへる一人ひとり乞食こつじきあり、全身ぜんしんはれただれて富豪ふがう門前もんぜんし、 21その食卓しよくたくよりつるくずあきらんことほつすれどもあたふるひとなく、しかいぬどもきたりてその腫物しゆもつねぶたり。 22しかるに乞食こつじきにければ、天使てんしたづさへられてアブラハムのふところいたりたるに、富豪ふがうまたして地獄ぢごくほうむられしが、 23苦痛くつううちりて、げて、はるかにアブラハムとそのふところなるラザルとを24さけびてひけるは、ちちアブラハムよ、われあはれみてラザルをつかはし、その指先ゆびさきみづひたしてわれしたひやさせたまへ、われこのほのほうちいたくるしめるを、と。 25アブラハムこれひけるは、よ、なんぢ存命ぞんめいあひだものけ、ラザルがおなあひだあしものけしを記憶きおくせよ、ればこそいまかれなぐさめられてなんぢくるしむなれ。 26加之しかのみならずわれなんぢとのあひだにはおほいなるふち定置さだめおかれたれば、此處ここよりなんぢところわたらんとほつするもかなはず、其處そこより此處ここうつことかなはざるなり、と。 27富豪ふがうまたひけるは、しからばちちよ、こひねがはくはラザルをわがちちいへつかはし、 28われ兄弟きやうだいにんあれば、彼等かれらまたこの苦惱くなうところきたらざるやうこれ證明しようめいせしめたまへ、と。 29アブラハムこれひけるは、モイゼと預言よげんしやたちとあれば、彼等かれらこれくべきなり、と。 30富豪ふがういなちちアブラハムよ、れどもし死者ししやうちよりいたものあらば、彼等かれら改心かいしんすべし、とひければ、 31アブラハムこれむかひて、もしモイゼと預言よげんしやたちとにかざる彼等かれらならば、假令たとひ死者ししやうちより復活ふくくわつすともしんぜざるべし、とへり、と。

第17章

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1イエズス弟子でしたちのたまひけるは、つまづきはきたらざるをず、れどこれきたひとわざはひなるかな2いしうすくびけられてうみ投入なげいれらるるは、このちひさもの一人ひとりつまづかするよりは、むしろかれりてまされり。 3なんぢみづか注意ちゆういせよ。もしなんぢ兄弟きやうだいなんぢつみをかさばこれいさめよ、しかしてもし改心かいしんせばこれゆるせ、 4いちにちななたびなんぢつみをかして、いちにちななたび改心かいしんすとひつつなんぢかへらばこれゆるせ、と。 5使徒しとたちねがはくはわれ信仰しんかうたまへ、としゆひしかば、 6しゆのたまひけるは、なんぢもしからし一粒ひとつぶほど信仰しんかうだにあらば、このくわむかひて、けてうみうつて、とはんに、かならなんぢしたがはん。 7なんぢうちたれか、しもべたがやあるひぼくしてはたけよりかへれるときこれむかひて、ただちきてしよくせよ、とものあらんや。 8かえつわが夕餉ゆうげ支度したくし、飲食いんしよくするうちおびしてわれ給仕きふじせよ、さてのちなんぢ飲食いんしよくすべしとふにあらずや。 9めいぜしことしたればとて、主人しゆじんかのしもべ感謝かんしやするか、 10われおもふにしからず。かくごとく、なんぢめいぜられしことことごとしたらんときわれ無益むえきしもべなり、すべきことしたるみみへ、と。 11イエズスエルザレムへおもむたまふとて、サマリアとガリレアとの中程なかほどとほたまひしが、 12あるむらたまとき、十にんらい病者びやうしやこれむかへて、はるかたちとどまり、 13こゑげてひけるは、イエズスよ、われあはれたまへ、と。 14イエズスこれたまふや、なんぢきておのれ司祭しさいたちせよ、とのたまひしかば、彼等かれらほどに、途中とちうにてきよくなれり。 15そのうち一人ひとりおのれきよくなりたるをるや、こゑたかかみ光榮くわうえいしつつかへりきたり、 16イエズスの足下あしもと平伏ひれふして感謝かんしやせしが、これサマリアじんなりき。 17イエズスこたへてのたまひけるは、きよくなりしものは十にんあらずや、そのにん何處いづこにかる、 18この異邦いはうじんほかは、たちかへりてかみ光榮くわうえいたてまつれるものえざるなり、と。 19すなはこれのたまひけるは、ちてけ、けだしなんぢ信仰しんかうなんぢすくへり、と。 20かみくに何時いつきたるべきかと、ファリザイじんはれしとき、イエズスこたへてのたまひけるは、かみくにえてきたるものにあらず、 21またよ、此處ここ彼處かしこにありとふべきにもあらず、かみくにすなはなんぢうちればなり、と。 22また弟子でしたちのたまひけるは、なんぢひといちじつんとほつするきたらん、れどこれざるべし。 23またひとは、此處ここ彼處かしこり、とはんも、くことなかれ、したがふことなかれ、 24電光いなづまひらめきてそらはてよりはてひかごとく、ひとそのあたりてしかあるべければなり。 25れどあらかじおほくのくるしみけ、かつこの時代じだいひとてられざるべからず。 26ノエのおこりしごとく、ひとにもまたしかあらん、 27すなはちノエが方舟はこぶねまで、人々ひとびと飲食のみくひし、つまめとり、めあはせられりしが、洪水こうずゐきたりてことごと彼等かれらほろぼせり。 28またロトのおこりしごとくならん、すなは人々ひとびと飲食のみくひし、賣買うりかひし、ゑ、てなどりしが、 29ロトがソドマよりでしには、てんより硫黃いわうりて、彼等かれらことごとほろぼせり。 30ひとあらはるべきにもまたかくごとくなるべし。 31そのときひと屋根やねりて器具きぐいへうちらば、これらんとてくだるべからず、はたけひとまたおなじくかへるべからず。 32ロトのつまことおもへ。 33すべおの生命せいめいすくはんとほつするひとこれうしなひ、うしなはんひとこれたもたん。 34われなんぢぐ、かのには二人ふたり一個ひとつどこらんに、一人ひとりられ一人ひとりのこされん、 35二人ふたりをんなともうすらんに、一人ひとりられ一人ひとりのこされん、二人ふたりをとこはたけらんに、一人ひとりられ一人ひとりのこされん、と。 36弟子でしたちこたへて、しゆよ、何處いづこぞ、とひしかば、 37何處いづこにもあれ、しかばねらんところわしまたあつまるべし、とのたまへり。