マルコ聖福音書1 (ラゲ訳)

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<聖書<我主イエズスキリストの新約聖書

『公敎宣敎師ラゲ譯 我主イエズスキリストの新約聖書』公敎會、

1910年発行

〔ローマ・カトリック訳〕

ラゲ訳新約聖書エミール・ラゲ(Emile Raguet,MEP)

マルコ聖福音書1 第1篇

第1章[編集]

1かみおんこイエズス、キリストのふくいんはじめ2よげんしやイザヤ[のしよ]にかきしるして、「われわがつかひなんぢめんぜんつかははさん、かれなんぢまへなんぢみちそなふべし。 3あれのよばはるひとこゑありて、いはく、なんぢしゆみちそなへよ、そのこみちなほくせよ」とあるがごとく、 4ヨハネあれのりてせんし、かつつみゆるされんために、かいしんせんれいけんことのべをしへしが、 5ユデアのぜんちはうおよびエルザレムのひとみなかれもといできたり、おのつみこくはくして、ヨルダン[がは]にてかれせんせられたりき。 6ヨハネはらくだけおりこしかはおびめ、いなごみつとをしよくりしが、せんけうしてひけるは、 7われよりもちからあるものわがのちきたたまふ。われかがみて、そのはきものひもくにもへず、 8われみづにてなんぢせんしたれども、かれせいれいにてなんぢせんたまふべし、と。 9かくそのころイエズス、ガリレアのナザレトよりきたり、ヨルダン[がは]にてヨハネにせんせられたまひしが、 10やがみづよりあがたまふや、てんひらけ、[せい]れいはとごとくだりて、わがうへとどまたまふをたまへり。 11またてんよりこゑして[いはく]、なんぢわがあいしなり、われなんぢりてこころやすんぜり、と。 12[せい]れいただちかれあれのかしめたまひしが、 13四十にち四十あれのりて、サタンにこころみられ、やじうともたまひ、てんしかれつかたり。 14ヨハネのとらはれしのち、イエズス、ガリレアにいたり、かみくにふくいんのべつたへて、 15のたまひけるは、ときちてかみくにちかづけり、なんぢかいしんしてふくいんしんぜよ、と。 16かくてガリレアのうみべたまふに、シモンとそのきやうだいアンデレアとがうみあみてるをて、――すなはれうしなりき―― 17イエズスかれらむかひ、われしたがへ、われなんぢひとすなどものらしめん、とのたまひしかば、 18かれらただちあみきてしたがへり。 19なほすこしくすすたまひて、ゼベデオのヤコボとそのきやうだいヨハネとが、またふねうちあみつくろひつつるをて、 20ただちかれらたまひしに、かれらそのちちゼベデオを、やとひひとともふねきてしたがへり。 21[いちどう]カファルナウムにりしが、イエズスやがあんそくじつごとくわいどうりてをしたまひければ、 22ひとそのをしへおどろたり。りつぱふがくしごとくせずして、けんゐあるものごとくにをしたまへばなり。 23しかるにあくきかれたるひとそのくわいどうりしが、よばはりて、 24ひけるは、ナザレトのイエズスよ、われなんぢなんかかはりかあらん、われほろぼさんとてきたたまへるか、われなんぢたれなるかをれり、すなはかみせいなるものなり、と。 25イエズスこれめて、なんぢもくしてそのひとよりでよ、とのたまひしに、 26をきそのひとひきつけさせ、こゑたかさけびつついでされり。 27かくひとみなおそれりて、なにごとぞ、なんらあたらしきをしへぞ。かれけんゐもつをきにすらめいたまへば、かれらこれしたがふよ、とたがひせんぎするにいたりければ、 28イエズスのきこえたちまちガリレアのぜんちはうひろがれり。 29かれらやがくわいどうで、ヤコボヨハネとともに、シモンとアンデレアとのいへいたりしが、 30シモンのしうとめねつわづらひてければ、ただちそのことをイエズスにまうしたるに、 31ちかづきてそのり、これおこたまひしかば、ねつたちどころりてかのをんなかれらきふじしたり。 32ゆふぐれいたりてのちひとびとめるものおよびあくまかれたるものを、ことごとくイエズスのもともたらし、 33まちひとこぞりてもんあつまたりしが、 34イエズスさまざまやまひわづらへるひとおほいやし、またあくまおほおひいだして、ものいふことをゆるたまはざりき、かれらイエズスをればなり。 35イエズスみめいおきで、さびしきところいたりていのたまへるを、 36シモンおよびともりしひとびとあとしたきて、 37これひしかば、ひとみななんぢたづぬ、とひしに、 38イエズスかれらのたまひけるは、われもよりむらむらまちまちかん、かしこにもまたせんけうすべし、われこれためきたりたればなり、と。 39かくしよしよくわいどうおよびガリレアいつぱんせんけうし、かつあくまおひはらたまへり。 40ときひとりらいびやうしやイエズスのもときたり、ひざまづきてねがひけるは、おぼしめしならばわれきよくすることたまふ、と。 41イエズスこれあはれたまひ、べ、これれてのたまひけるは、わがいなり、きよくなれ、と。 42これのたまふや、らいびやうただちかれりてかれきよくなれり。 43イエズスこれいましたまひ、 44なんぢつつしみてひとかたることなかれ、ただしきておのれしさいせ、きよくなりたるために、かれらへのしようことして、モイゼのめいぜしものをささげよ、とのたまひて、ただちかれらしめたまへり。 45しかれどもかれでてそのことかたり、いひひろはじめしかば、イエズスもはやあらはまちがたりて、そとさびしきところたまひしが、ひとびとはつぱうよりそのもとつどきたたり。

第2章[編集]

1すうじつのち、イエズスまたカファルナウムにたまひしが、 2いへたまこときこえしかば、ひとびとおびただしくあつまきたり、かどぐちすらすきまもなきほどなるに、イエズスかれらをしへたまへり。 3ここひとびとにんかれたるひとりちゆうぶしやもたらししが、 4ぐんしゆうためこれをイエズスにさしいだだすことあたはざれば、たまところやねぎてこれひらき、ちゆうぶしやせるとこつりおろせり。 5イエズスかれらしんかうて、ちゆうぶしやむかひ、よ、なんぢつみゆるさる、とのたまひしかば、 6あるりつぱふがくしそこて、こころおもひけるは、 7かれなんかくごとふや、こればうとくするなり、かみひとりほかたれつみゆるすことをんや、と。 8イエズスかれらおもへるをただちそのこころりてのたまひけるは、なんすれおもひをこころいだける。 9ちゆうぶしやなんぢつみゆるさるとふと、きてとこりてあゆめとふと、いづれやすき。 10なんぢをして、ひとおいつみゆるすのけんあることをらしめん、とてちゆうぶしやむかひ、 11われなんぢめいず、きよ、とこりておのいへけ、とのたまひしに、 12かれたちまきてとこり、しゆうじんめのまへすぎきしかば、みなかんたんへず、かみくわうえいし、われかつかくごとことざりき、とふにいたれり。 13イエズスまたうみべたまひしに、ぐんしゆうこぞりてきたりければ、かれらをしたまひしが、 14とほりがけに、アルフェオのレヴィがしうぜいしよせるをて、われしたがへ、とのたまひしかば、かれちてしたがへり。 15かくかれいへにてしよくたまひければ、おほくのみつぎとりつみびととは、イエズスおよびそのでしたちともれつせきしたり、けだしイエズスにしたがへるものすでおほかりき。 16りつぱふがくしファリザイじん、イエズスがみつぎとりおよびつみびとともしよくたまふをて、そのでしたちひけるは、なんぢなにゆゑみつぎとりつみびとともいんしよくするぞ、と。 17イエズスこれきてかれらのたまひけるは、さうけんなるものいしやえうせず、やまひあるものこそ[これえうするなれ]、すなはちきたりしはぎじんためあらずして、ざいにんを[ためなり]、と。 18ヨハネのでしたちとファリザイじんとはだんじきしたりければ、きたりてイエズスにひけるは、ヨハネとファリザイじんとのでしだんじきするに、なんぢでしなにゆゑだんじきせざるぞ、と。 19イエズスかれらのたまひけるは、はなむこおのれともあひだかいぞへいかでかだんじきすることをん。はなむこともあひだかれらだんじきすることをず。 20れどはなむこかれらうちよりとりさらるるきたらん、そのにはだんじきせん。 21あらぬのきれふるいふくひとはあらず、しかせばそのあたらしきはぎかえつふるものひきさきて、やぶれおほいなるべし。 22またあたらしきさけふるかはぶくろひとはあらず、もししかせばさけかはぶくろきてながれ、かはぶくろまたすたらん、あたらしきさけあたらしきかはぶくろにこそるべけれ、と。 23しゆまたあんそくじつあたりて、むぎばたけよぎたまへるに、でしたちあゆみつつつみはじめしかば、 24ファリザイじんイエズスにむかひ、よ、かれらあんそくじつすべからざることせるはなんぞや、とひければ、 25イエズスのたまひけるは、ダヴィドがきふせまりて、おのれともなへるひとびとゑしときししことを、なんぢまざりしか、 26すなはちいかにして、だいしさいアビアタルのときかみいへりて、しさいたちほかしよくすべからざるそなへぱんしよくし、ともなへるひとびとにもあたへしかを。 27またのたまひけるは、あんそくじつひとためまうけられて、ひとあんそくじつためつくられず、 28ればひとまたあんそくじつしゆたるなり、と。

第3章[編集]

1イエズスまたくわいどうたまひしに、かたてえたるひとそこりければ、 2ファリザイじんイエズスをうつたへんとて、かれあんそくじついやすやいなやをうかがりしが、 3イエズスえたるひとむかひて、まんなかて、とのたまひ、 4またかれらむかひて、あんそくじつぜんすはきか、あくすはきか、ひとすくふはきか、これほろぼすはきか、とのたまひしに、かれらもくぜんたりき。 5イエズスかれらこころかたくななるをうれひ、いかりふくみてみまはしつつかのひとに、べよ、とのたまひければ、かれべて、そのえたり。 6しかるにファリザイじんは、でてただちに、いかにしてかイエズスをほろぼさんと、ヘロデのともがらともけふぎしたり。 7イエズス、でしたちともうみほうたまひしに、ぐんしゆうおびただしくガリレアおよびユデアより、 8またエルザレム、イデュメア、ヨルダン[がは]のかなたより[きたりて]したがひ、かつチロとシドンとのちはうよりも、イエズスのおこなたまへることきて、ひとびとおびただしくそのもときたりしかば、 9イエズスぐんしゆうおしせまられざらんために、こぶねわがようそなかんことでしたちめいたまへり。 10けだしきよたひといやたまふにり、やまひあるものみなかれれんとてとびほどなりき。 11をきどももイエズスをときは、そのまへひれふし、さけびて、 12なんぢかみなり、とければ、イエズスおのれあらはすなと、きびしくいましたまへり。 13かくてイエズスやまのぼり、このたまへるひとびとたまひしに、かれらきたりしかば、 14十二にんてておのれともらしめ、かつせんけうつかはさんとて、 15これあたふるに、やまひいやし、あくまおひはらけんのうもつてしたまへり。 16すなはちシモン、これをペトロとなづけ、 17ゼベデオのヤコボと、ヤコボのきやうだいヨハネ、これをボアゲルネスすなはちいかづちなづたまへり。 18またアンデレア、フィリッポ、バルトロメオ、マテオ、トマ、アルフェオのヤコボ、タデオ、カナアンのシモン、 19およびイエズスをりしイスカリオテのユダなりき。 20かれらいへいたりしに、ぐんしゆうふたたびあつまりしかば、ぱんしよくすることだにざりしが、 21イエズスのしんぞくこれき、かれきやうせりとひて、これとらへんためいできたれり。 22またエルザレムよりくだりしりつぱふがくしも、かれベエルゼブブにかれたり、そのあくまおひはらふはあくまかしらるなり、とたり。 23イエズスかれらよびあつめて、たとへもつのたまひけるは、サタンいかでかサタンをおひはらふをんや。 24くにみづかわかあらそときは、そのくにあたはず、 25いへみづかわかあらそときは、そのいへあたはず、 26サタンもしおのれさからはば、これみづかわかあらそふもの、あたはずして、かえつほろぶべし。 27いかなるひとも、つよものいへりてそのかぐかすめんには、まづつよものしばらざればあたはず、[しばりてのち]そのいへかすむべし。 28われまことなんぢぐ、ひといつさいつみおよびばうとくせしそのばうとくゆるされん、 29しかれどもせいれいばうとくせしものえいえんゆるしず、えいえんつみふくすべし、と。 30のたまひしはひとびとかれをきかれたり、とればなり。 31ときにイエズスのははきやうだいたちと、きたりてそとち、ひとつかはしてかればしめしに、 32ぐんしゆうかれめぐりてたりけるが、ひとびとかれげて、よ、なんぢははきやうだいたちそとりてなんぢたづぬ、とひしかば、 33イエズスかれらこたへてのたまひけるは、たれははきやうだいなるぞ、と。 34またおのめぐりせるひとびとみまはしつつのたまひけるは、これわがははわがきやうだいなる、 35かみみむねおこなひとは、これわがきやうだいわがしまいわがははなればなり、と。

第4章[編集]

1ふたたうみべにてをしはじたまひしが、ぐんしゆうおびただしくそのもとあつまりしかば、イエズスはうみうかべるふねりてたまひ、ぐんしゆうは、みなきしひてをかれり。 2かくたとへもつおほくのことをしたまひしが、そのをしへうちのたまひけるは、 3なんぢけ。たねものかんとてでしが、 4ときあるたねみちばたちしかば、そらとりきたりてこれついばめり。 5あるたねつちすくないしぢちしに、つちふかからざるによりてただちはえいでたれども、 6ひいづるやけて、なきがゆゑれたり。 7あるたねいばらなかちしに、いばらそだちてこれおほひふさぎたれば、むすばざりき。 8あるたねよきつちちしかば、でてみのち、ひとつは三十ばいひとつは六十ばいひとつは百ばいしやうじたり。 9またのたまひけるは、みみてるひとけ、と。 10イエズスひとりたまときともりし十二にんこのたとへひしかば、 11かれらのたまひけるは、なんぢかみくにおくぎことたまはりたれど、そとひとなにごとたとへもつてせらる、 12かれらゆれどもみしらず、きてきこゆれどもさとらず、これたちかへりてそのつみゆるさるることなからんためなり。 13またかれらのたまひけるは、なんぢこのたとへらざるか、らばいかにしてか、もろもろたとへさとらん。 14たねものことばくなり、 15ことばかるるときみちばたちたるものは、ひとこれきたるにサタンたちまちきたりてそのこころかれたることばうばふものなり。 16いしぢかれたるものは、おなじくことばき、ただちよろこびてこれくれども、 17おのれなく、しばしのみにして、やがことばために、こんなんはくがいおこれば、たちまちつまづくものなり。 18またいばらうちかれたるものあり、これことばくといへども19このこころづかひとみまどひそのしよよくいりきたりて、ことばおほひふさぎ、つひみのらざるにいたる。 20よきつちかれたるものは、ことばきてこれけ、あるいは三十ばいあるひは六十ばいあるひは百ばいむすぶものなり。 21またかれらのたまひけるは、ともしびもちきたるは、ますしたあるひだいしたかんためなるか、しよくだいうへせんためあらずや、 22すなはちなにごとかくされてあらはれざるはなく、ひそかにせられてつひおほやけでざるはなし。 23みみてるひとけ。 24またかれらのたまひけるは、なんぢところつつしめ。なんぢはかりたるはかりにてみづからもはかられ、しかさらくはへられん、 25てるひとなほあたへられ、たざるひとそのてるところをもうばはるべければなり。 26またのたまひけるは、かみくには、あたかもひとたねくがごとし。 27よるひるいねおきしてらざるに、そのたねはえいでてせいちやうす、 28すなはちしぜんしやうじ、まづなえつぎつぎてるむぎしやうじ、 29すでみのりてかりいれときいたれば、ただちかまるるなり。 30またのたまひけるは、われかみくになになぞらへ、いかなるたとへもつたとへんか。 31これひとつぶからしだねごとし。かるるときちじやうあらゆるたねよりもちひさけれども、 32かれたるのちそだちて、そだちてよろずやさいよりおほきく、おほいなるえだしやうじて、そらとりそのかげむをるにいたる、と。 33イエズスは、ひとびとるにおうじて、かかおほくのたとへもつをしへかたたまひ、 34たとへなくしてひとかたたまことあらざりしが、でしたちにはなにごとをも、べつときあかたまへり。 35そのくれおよびて、イエズスでしたちに、われかなたきしわたらん、とのたまひしかば、 36かれらぐんしゆうらしめ、イエズスをふねたまへるままき、ほかふねどもこれともなひたりき。 37ときおほかぜおこりて、なみふねうちり、せんちうつるにいたりしが、 38イエズスはともほうまくらしてたまへるを、でしたちよびおこしてひけるは、よ、われほろぶるをかへりたまはざるか、と。 39イエズスきてかぜいましめ、またうみむかひて、もくせよ、しづまれ、とのたまひしかば、かぜみておほなぎとなれり。 40またかれらのたまひけるは、なんぢなにゆゑおそるるぞ、いまだしんかうたざるか、と。 41かれらおそるることはなはだしく、なにびとぞや、かぜうみもこれにしたがふよ、とかたりたり。

第5章[編集]

1うみわたりてゲラサじんいたりしが、 2イエズスふねよりたまふや、をきかれたるひとはかよりでてきたむかふ。 3このひとはかすみかとし、くさりもつてすら、たれこれつなず、 4すなはちしばしばあしかせくさりとをもつつながれたりしも、くさりあしかせくだきて、たれこれせいものなかりき。 5かくえずさけび、かつみづかいしもてきずつけつつ、よるひるはかやまなかりしが、 6はるかにイエズスをて、はしりてれいはいし、 7こゑたかよばはりひけるは、いとたかかみおんこイエズスよ、われなんぢなんかかはりかあらん。わがかみによりてこひねがふ、われくるしむることなかれ、と。 8はイエズスこれむかひて、をきこのひとよりいでよ、とのたまへばなり。 9イエズス、なんぢなんぞ、とたまひしに、かれわがぐんだんなり、われかずおほければなり、とひて、 10おのれこのよりおひはらたまはざらんことを、せつねがたり。 11ここぶたおほいなるむれやまべりてくさりしが、 12[あく]どもこひねがひて、われりてぶたなかることをさせたまへ、とひければ、 13イエズスただちこれゆるたまひしに、をきどもでて、ぶたなかり、おほよそ二千びきばかりむれいきほひすさまじくうみとびいりて、うみなかおぼれしせり。 14このぶたりしものどもげて、まちゐなかふいちやうしたれば、ひとびとことてんまつんとてでしが、 15イエズスのもときたりて、かのあくまなやまされしひとの、すでいふくこころたしかにしてせるをて、おそれたり。 16またたりしものかのあくまかれたりしひとされたるしだいと、ぶたこととをげしかば、 17かれらイエズスにそのさかひたまはんことねがひいでたり。 18イエズス、ふねたまときかのあくまなやまされしひとともなはんことねがひいでたれど、 19イエズスこれれずしてのたまひけるは、なんぢいへなんぢしんせきいたりて、しゆなんぢいかばかりおほいなることをなし、[いかに]なんぢあはれたまひしかをかれらげよ、と。 20かれすなはちりて、イエズスのおのれたまひしこといかばかりおほいなるかを、デカポリにいひひろはじめしかば、ひとみなかんたんしたり。 21イエズスまたふねにてうみわたたまひしかば、ぐんしゆうおびただしくそのもとあつまりしが、うみべたまをりしも、 22くわいどうつかさひとりなる、ヤイロとへるものいできたり、イエズスをるや、あしもとひれふして、 23わがむすめなんなんとす、たすかりてくるやうきたりてこれあんしゆたまへ、としきりこひねがひければ、 24イエズスかれともたまふに、ぐんしゆうおびただしくしたがひておしせまたり。 25ここに十二ねんちろうわづらへるをんなありて、 26かつあまたいしかかりてさまざまくるしめられ、てるものことごとつひやしたれど、なんかひもなく、かえつますますしかりしに、 27イエズスのこときしかば、ざつたふうちうしろよりきたりて、そのいふくれたり。 28そのいふくにだにれなばゆべし、とたればなり。 29かくしゆつけつたちまちにみて、をんなやまひえたるをかんじたり。 30イエズスただちおのれよりれいのうでしをさとたまひ、ぐんしゆうかへりみて、たれわがいふくれしぞ、とのたまふや、と。 31でしたちひけるは、ぐんしゆうなんぢおしせまるをながらなほたれわれさわりしぞ、とのたまふや、と。 32イエズスこれししひとんとてみまはたまへば、 33をんなりたることりて、おそおののきつつきたり、みまへひれふして、つぶさじつげたり。 34イエズスこれのたまひけるは、むすめよ、なんぢしんかうなんぢすくへり、やすんじてけ、なんぢやまひえてあれかし、と。 35なほかたたまうちに、くわいどうつかさいへよりひときたりてひけるは、なんぢむすめせり。なんなほわづらはすや、と。 36イエズスそのぐるところきて、くわいどうつかさのたまひけるは、おそるることなかれ、ただしんぜよ、と。 37しかしてペトロとヤコボとヤコボのきやうだいヨハネとのほかたれにもずいかうゆるさずして、 38くわいどうつかさいへいたたまひしが、そのさわぎはなはだしく、ひとびとき、かついたなげきつつるをて、 39イエズスうちたまひ、なんぢなんさわかつくや、むすめにたるにあらず、いねたるなり、とのたまへば、 40ひとびとこれわらたり。れどひとみなそといだし、むすめふぼおのともびととをれて、むすめせるところり、 41むすめりて、タリタクミ、とのたまへり、やくして、むすめよ、われなんぢめいず、きよ、のなり。 42むすめただちきてあゆめり、としは十二さいなりき。ひとびとがくぜんとしていたおどろきしが、 43イエズスこのことたれにもらすべからずときびしくいましめ、しょくもつむすめあたへんことめいたまへり。

第6章[編集]

1イエズス、ここりてわがふるさといたたまひ、でしたちこれしたがひいたりしが、 2あんそくじつあたくわいどうにてをしへときはじたまひしかば、ひとおほそのをしへおどろきてひけるは、かれこれこといづこよりたるぞ、そのさづけられたるちゑと、そのおこなはるるばかりのきせきとは、いかなるものぞ。 3かれはマリアのにして、ヤコボ、ヨゼフ、ユダおよびシモンのきやうだいたるしよつこうにあらずや、そのしまいわれともここるにあらずや、と。かくつひかれつまづたり。 4イエズスかれらのたまひけるは、よげんしやうやまはれざるはただそのふるさとそのいへそのしんせきうちおいてのみ、と。 5ればここにては、せうすうびやうしやあんしゆしていやたまひしほかなんらきせきをもたまはず、 6かれらしんかうおどろき、そのほとりむらむらめぐりてをしたまへり。 7イエズス十二にんびて、これふたりづつつかはすにのぞみ、をきども[にたいする]のけんのうさづけ、 8かつとちゆうつゑほかなにものをもたづさへざることたびぶくろぱんまたおびぜにつまじきこと9なみなみはきものくも、二まいしたぎまじきことめいじ、 10かれらのたまひけるは、いづこにても、あるいへらば、そのるまでそことどまれ。 11またすべなんぢけず、なんぢかざるものあらば、そこたちさりて、かれらへのしようことしてあしちりはらえ、と。 12かくでしたちでてかいしんすべきことをひとびとせつけうし、 13あまたあくまおひはらひ、ちゆうゆしておほくのびやうしやいやたり。 14かくてイエズスのあらはれしかば、ヘロデわうきて、せんしやヨハネはししやうちよりよみがへりたり、ゆゑきせきかれおこなはるるなり、とへるに、 15あるひとびとは、これエリアなりとひ、またあるひとびとは、よげんしやなり、よげんしやひとりごとし、とへば、 16ヘロデこれきてくびきりしかのヨハネは、ししやうちよりよみがへりたり、とへり。 17けだしヘロデかつそのきやうだいフィリッポのつまヘロヂアデをめとりたれば、かれためひとつかはしてヨハネをとらへ、かんごくつなぎたりき。 18はヨハネヘロデにむかひ、なんぢきやうだいつまるるはからず、とたればなり。 19ればヘロヂアデかれうらみてころさんとほつすれども、あたはざりき、 20これヘロデはヨハネのぎじんたりせいじんたるをりて、これおそかつまもり、これきておほくのことおこなひ、このみてかれたるをもつてなり。 21かくびんぎきたり、ヘロデ、だいくわんせんぷちやうおよびガリレアのきぞくせうたいしてたんじやうきやうえんひらきしが、 22かのヘロヂアデのむすめいりきたりてをどりし、ヘロデおよびれつせきひとびとこころかなひしかば、わうむすめひけるは、しきものをわれもとめよ、われかならずこれあたへん、と。 23またちかひていはく、なにごともとむるも、たとへばわがくになかばにても、われこれなんぢあたへん、と。 24そのときむすめでて、われなにもとむべきか、とははひしに、かれせんしやヨハネのかうべを、とひければ、 25むすめただちわうもといそき、せんしやヨハネのかうべぼんせて、すみやかわれたまはんことほつす、とへり。 26わううれひしかど、ちかひたいかつれつせきひとびとたいしてむすめいなことほつせず、 27けいりつかはし、ヨハネのかうべぼんせてもちきたことめいぜり。けいりかんごくにヨハネをくびきり、 28そのかうべぼんもたらして、むすめあたへしかば、むすめこれははあたへたり。 29ヨハネのでしたちきてきたり、そのしかばねりてはかはうむれり。 30しとたちイエズスのもとあつまり、すべてのししことをしへしことげしかば、 31イエズスかれらむかひ、べつさびしきところきたりてしばやすめ、とのたまへり。ゆききするひとおほくして、しよくするいとまだにあらざればなり。 32かくふねりて、べつさびしきところけり。 33かれらくをて、おほくのひとこれり、すべてのまちよりかちにてかれらさきだちて、かしこはせあつまりしが、 34イエズスでてぐんしゆうおびただしきをたまひ、そのぼくしやなきひつじごとくなるをあはれみ、おほくのことをしはじたまへり。 35すでれかかりしかば、でしたちちかづきてひけるは、ところさびしくときすでおそし。 36ひとびとかへし、あたりゐなかやおよびむらきてめんめんしょくもつふことをしめたまへ、と。 37イエズスこたへて、なんぢこれしよくもつあたへよ、とのたまひしかば、かれらひけるは、われきて二百デナリオにてぱんひ、かれらしよくせしめんか、と。 38イエズス、なんぢいくつぱんをかてる、きてよ、とのたまひしに、かれらたづりて、いつつふたつさかなとあり、とへり。 39かくめいじて、ひとびとみなあおくさうへくみぐみせしめたまひ、 40ひとびとにん五十にんづつしたるに、 41イエズスいつつぱんふたつさかなとをり、てんあふぎてしゆくし、ぱんきてでしたちあたへ、これひとびとまへかしめ、またふたつさかないちどうわかたまひしかば、 42みなしよくしてあきれり。 43のこれるくずひろひしに、さかなあはせて十二のかごちしが、 44しよくせしだんしは五千にんなりき。 45イエズスただちでしたちしひふねらしめ、おのれじんみんらしむるうみわたり、さきだちてベッサイダへおもむかしめたまひ、 46ひとらしめてのちいのらんとてやまたまへり。 47けてふねうみまんなかり、イエズスはひとりをかたまひしが、 48イエズスでしたちぎやくふうためなやめるをたまひ、あさの三ごろうみうへあゆみてかれらいたり、ゆきぎんとしたまひしに、 49でしたちそのうみうへあゆたまふをるや、ばけものならんとおもひてさけびいだせり。 50みなかれこころさわぎたればなり。イエズスただちことばいだして、たのもしかれ、われなるぞ、おそるることなかれ、とのたまひ、 51ふねりてかれらいたたまひしに、かぜみたれば、かれらいよいよますますこころうちおどろきたり。 52かれらこころかたくなにして、ぱんことさとらざりければなり。 53わたりて、ゲネザレトのいたり、きしふねけしが、 54ふねよりづるや、ひとびとたちまちイエズスをみとめて、 55そのぜんちはうはせまはり、イエズスのたまふとところに、やめものとこままきて、いづくまでもまははじめたり。 56かくいたところあるひむらあるひまちあるひゐなかやに、ひとびとびやうしやちまたき、いふくふさにだもれんことねがりしが、るるひとことごといやされつつありき。

第7章[編集]

1ファリザイじんおよびすにんりつぱふがくしエルザレムよりきたりて、イエズスのもとあつまりしが、 2でしうちなるすにんの、つねすなはあらはざるにてぱんしよくするをて、これとがめたり。 3これファリザイじんおよびすべてのユデアじんは、こじんつたへまもりて、しばしばあらはざればしよくせず、 4またいちよりきたときは、あらはざればしよくせず、そのほかさかづきどきどうきとこあらひきよなどまもるべきことおほつたへられたればなり。 5ファリザイじんりつぱふがくしイエズスにひけるは、なんぢでしたちなんこじんつたへしたがひてあゆまず、つねにてぱんしよくするや。 6こたへてのたまひけるは、よいかなイザヤがぎぜんなるなんぢきてよげんしたることかきしるして「このたみくちびるにてわれたふとべども、そのこころわれとほざかれり。 7ひとくんかいをしへて、むなしくわれたふとぶなり」とあるにたがはず。 8すなはちなんぢかみおきてててひとつたへまもり、どきさかづきなどあらひきよめ、またたぐひことおほおこなふなり、と。 9またかれらのたまひけるは、なんぢおのつたへまもらんとて、くもかみおきてはいせるよ。 10すなはちモイゼいはく、「なんぢちちははうやまへ」と、またいはく「ちちもしくはははのろひとすべし」と。 11しかるをなんぢふ、ひともしちちもしくはははむかひて、すべわれよりするコルバン、すなはちささげものは、なんぢえきとならんとはばれり、と。 12しかしてそのほかなにごとをもちちもしくはははすをゆるさず。 13おのれつたへしつたへによりてかみことばはいし、またたぐひことおほおこなふなり、と。 14イエズスふたたびぐんしゆうよびあつめて、のたまひけるは、みなわれきてさとれ。 15そとよりひとものは、なにものひとけがあたはず、ひとよりづるものこそひとけがすなれ。 16みみてるひとけ、と。 17てイエズス、ぐんしゆうはなれていへたまひしに、でしたちこのたとへことひければ、 18かれらのたまひけるは、なんぢまでにむちなるか。すべそとよりひとものは、これけがあたはざることをさとらざるか。 19これそのこころるにあらずして、はらくだり、すべしょくもつきよめてかはやづればなり、と。 20またのたまひけるは、ひとよりづるものこそひとけがすなれ。 21すなはちひとこころうちよりづるは、あくねん かんいん しつう さつじん 22ぬすみ むさぼり かうくわつ さぎ わいせつ あしきめ ばうとく がうまん ぐちにして、 23これいつさいあくじは、うちよりでてひとけがすなり、と。 24イエズスここりて、チロとシドンとのちはうき、いへりて、たれをもざらんことほつたまひたれど、かくたまはざりき。 25すなはをきかれたるむすめてるひとりをんな、イエズスのことくとひとしくいりきたりて、あしもとひれふせり。 26このをんなはシロフェニシアにまれたるいはうじんにして、わがむすめよりあくまおひはらたまはんことねがでけるに、 27イエズスのたまひけるは、まづこどもをしてあきらしめよ。こどもぱんりていぬなげあたふるはことあらず、と。 28をんなこたへて、しゆよ、しかり、れどこいぬも、しよくたくしたに、こどもおちくづくらふなり、とひしに、 29イエズスのたまひけるは、このことばによりてけ、あくまなんぢむすめよりでたり、と。 30をんないへかへりてれば、むすめとこよこたはりて、あくますでたちさりたりき。 31イエズスまたチロのちはうで、シドンをてデカポリちはうちゆうわうよぎり、ガリレアのうみいたたまひしに、 32ひとびとおしにしてみみしひなるものをイエズスにきたり、これあんしゆたまはんことねがひければ、 33イエズスこれぐんしゆううちよりよびとりて、ゆびそのみみれ、つばきしてそのしたれ、 34てんあふぎてたんじ、エフフェタ、とのたまへり、すなはちひらけよのなり。 35たちまちにしてそのみみひらけ、したもつれけてものいふことただしかりき。 36イエズスこれひとかたことかれらいましたまひしかど、いましたまふほど、ひとますますいひひろめ、 37ますますかんたんして、くこそなにごとをもたまひつれ、みみしひきこえしめ、おしものいはしめたまへり、とたり。

第8章[編集]

1そのときまたぐんしゆうおびただしくして、しよくすべきものあらざりしかば、イエズスでしたちよびあつめてのたまひけるは、 2われこのぐんしゆうあはれむ。それすでみつかわれともすごしていましよくすべきものなし。 3かれらくうふくにしていへかへらしめば、うちにはえんぱうよりきたれるひとびとあり、みちにてたふるべし、と。 4でしたちこたへけるは、このあれのにて、たれいづこよりぱんかれらかしめべき、と。 5イエズス、なんぢいくつぱんをかてる、とたまふに、ななつひしかば、 6イエズスめいじてぐんしゆうすはらせ、ななつぱんり、しやしてこれき、ひとびとまへそなへしめんとてでしたちあたたまひしかば、かれらこれぐんしゆうまへそなへたり。 7またすこしのこざかなありけるを、イエズスこれをもしゆくたまひ、めいじてひとびとまへそなへしめたまひしかば、 8ひとびとしよくしてあきり、のこりくずななかごひろへり。 9しよくせしものおほよそせんにんなりしが、イエズスさてかれららしめたまへり。 10かくただちでしたちともふねりて、ダルマヌタちはういたたまひしに、 11ファリザイじんでてろんじかかり、イエズスをこころみててんよりのしるしもとめければ、 12イエズスこころうちたんじてのたまひけるは、げんだいひとなんしるしもとむるや、われまことなんぢぐ、げんだいひとあにしるしあたへられんや、と。 13やがかれららしめ、またふねりてうみかなたいたたまへり。 14ときでしたちぱんたづさふることわすれて、せんちうただひとつぱんあるのみなりしが、 15イエズスかれらめいじて、なんぢつつしみて、ファリザイじんぱんだねと、ヘロデのぱんだねとにようじんせよ、とのたまひしかば、 16かれらこれわれぱんたざるゆゑならん、とてあんひけるを、 17イエズスりてのたまひけるは、なんぢなんぱんたざることあんずるや、いまだらずさとらざるか、なんぢこころなほめしひなるか、 18ありてえず、みみありてこえざるか、またきおくせざるか。 19すなはちわれいつつぱんを五千にんさきあたへしときなんぢくずちたるかごいくばくとりをさめしぞ、と。かれらじふひしに、 20また[のたまひけるは、]ななつぱんせんにんさきあたへしときいくかごくずとりをさめしぞと、かれらななつひしかば、 21イエズスなんいまさとらざる、とのたまへり。 22いつかうベッサイダにいたりしに、ひとびとひとりめしひをイエズスにつれきたりて、これたまはんことねがひければ、 23イエズス、めしひりてこれむらはづれみちびき、そのつばきしてこれあんしゆし、ゆるものありや、とたまひしに、 24かれみはりて、われひと々のあゆむをるに、ごとくなり、とへり。 25やがまたそのあんしゆたまひしに、やうやひらけ、つひくわいふくして、すべてのものあきらかゆるにいたれり。 26イエズスかれそのいへかへらしめてのたまひけるは、おのいへけ、むらことなく、たれにもぐることなかれ、と。 27イエズスでしたちともにフィリッポのカイザリアのむらむらいでたまひしが、みちすがらでしたちひて、ひとびとわれたれとかへる、とのたまひしに、 28かれらこたへて、[あるひとびとは]せんしやヨハネ、あるひとびとはエリア、あるひとびとよげんしやひとりごとしとふ、とひしかば、 29イエズスかれらのたまひけるは、なんぢわれたれなりとふか、と。ペトロこたへて、なんぢはキリストなりとひけるを、 30イエズスわがことたれにもぐることなかれ、ときびしくいましたまへり。 31またひとおほくのくるしみけ、ちやうらうしさいちやうりつぱふがくしはいせきせられ、つひころされて、みつかのちふくくわつすべきことかれらをしはじたまひしが、 32そのことおほやけかたたまひければ、ペトロかれきていさめでけるを、 33イエズスかへりみてでしたちみまはたまひ、ペトロをけんせきしてのたまひけるは、サタンよ、しりぞけ、なんぢあじはへるはかみことあらずしてひとことなればなり、と。 34イエズスぐんしゆうでしたちとをよびあつめて、これのたまひけるは、ひともしわれしたがはんとほつせば、おのれて、おのじふじかりて、われしたがふべし。 35おのせいめいすくはんとほつするひとこれうしなひ、われおよびふくいんためせいめいうしなひとは、これすくふべければなり。 36ひとぜんせかいまうくとも、もしそのせいめいそんせば、なんえきかあらん。 37またひとなにもつてかそのせいめいへんや。 38けだしかんあくなるげんだいおいて、われおよびわがことばぢたるひとをば、ひとおのちちくわうえいもつて、せいなるてんしたちしたがへてきたらんときこれづべし、と。

第9章[編集]

1またかれらのたまひけるは、われまことなんぢぐ、かみくにけんゐもつきたるをるまで、あじははざるべきひとびとここてるものうちり、と。 2むいかのちイエズス、ペトロヤコボヨハネのみをべつしたがへて、たかやまみちびたまひしに、かれらまへにておんかたちかはり、 3いふくかがやきてましろなることゆきごとく、ちじやうぬのさらしざるほどなりき。 4ときにエリアモイゼとともかれらあらはれて、イエズスとかたりしが、 5ペトロこたへて、イエズスにひけるは、ラビ、よいかなわれここことわれみついほりつくり、ひとつなんぢためひとつはモイゼのためひとつはエリアのためにせん、と。 6けだしかれそのところらざりき、みないたおそたればなり。 7かくひとむらくもかれらたちおほひ、こゑくもうちよりきたりてのたまはく、これわれさいあいなる、これけ、と。 8かれらただちみまはしけるに、イエズスとおのれとのそとまたたれをもざりき。 9イエズスかれらやまくだときひとししやうちよりふくくわつするまでは、そのしことをひとかたるな、といましたまひしかば、 10かれらこれまもりしが、ししやうちよりふくくわつするまでとはなにごとぞ、とろんひたり。 11かくてイエズスにひて、しからばエリアさききたるべしとファリザイじんりつぱふがくしへるはなんぞや、とひければ、 12こたへてのたまひけるは、エリアさききたりてばんじくわいふくすべし、またひときては、おほくのくなんかつないがしろにせらるべし、とかきしるされたるごとく、 13われなんぢぐ、エリアもすできたれり、かつひとびとほしいままかれあしらひしことかれきてかきしるされたるにたがはず、と。 14イエズスでしたちもときたたまひしに、おびただしきぐんしゆうかれらかこみ、りつぱふがくしかれらろんりしが、 15じんみんただちにイエズスをて、みなおどろおそれ、はせりてけいれいせり。 16イエズスりつぱふがくしむかひ、なにろんへるぞ、とのたまひしに、 17ぐんしゆううちよりいちにんこたへてひけるは、よ、われおしなるあくきかれたるわがなんぢもたらしたるが、 18あくきかるれば、いづこにもあれ、たふされてあわき、くひしばり、ごたいこはる。これおひいださんことなんぢでしたちひたれどあたはざりき、と。 19イエズスかれらこたへてのたまひけるは、ああしんかうなきじだいなるかなわれいつまでなんぢともらんや、いつまでなんぢしのばんや。われたづさきたれ、と。 20すなはちたづさきたりしが、かれイエズスをるや、ただちあくきためけいれんおこし、たふされてあわきつつふしまろびたり。 21イエズスそのちちむかひ、かれこのことおこれるは、いつころよりぞ、とたまひしに、 22ちちひけるは、えうせうときよりなり、しかしてあくきこれころさんと、しばしばみづれたり。なんぢもしべきやうもあらば、われあはれみてたすたまへ、と。 23イエズスこれのたまひけるは、なんぢもししんずることをば、しんずるひとにはなにごとあたはざるなし、と。 24ちちたちまちなみだともよばはりてひけるは、しゆよ、われしんず、わがしんかうたすたまへ、と。 25イエズスぐんしゆうはせあつまるををきめ、おしにしてみみしひなるあくきよ、われなんぢめいず、このひとよりたちさりて、ふたたびることなかれ、とのたまひしに、 26あくきさけびつつかれけいれんせしめていでされり。かれしにんごとくにりしかば、せりとひとおほかりしが、 27イエズスそのりておこたまひければ、かれたちあがれり。 28イエズスいへたまひしに、でしたちひそかに、われこれおひいだすことあたはざりしはなにゆゑぞ、とひしかば、 29イエズスかれらのたまひけるは、かかたぐひは、きたうだんじきとによらでは、いかにしてもおひいだすことあたはざるなり、と。 30かくここりていつかうガリレアをよぎりしが、イエズスたれにもられざらんことほつたまひ、 31でしたちをしへて、ひとひとうられ、これころされ、ころされてみつかふくくわつすべし、とのたまひしかども、 32かれらそのことばさとらず、またことをもはばかたりき。 33かれらカファルナウムにいたりていへりしに、イエズスひて、なんぢみちみちなにろんじたりしぞ、とのたまへば、 34かれらもくぜんたりき、おのれうちもつともおほいなるものたれぞ、とみちすがらあひあらそひたればなり。 35イエズスして十二にんび、これのたまひけるは、ひともしだい一のものたらんとほつせばいちどうあとり、いちどうめしつかいるべし、と。 36ひとりをさなごりてかれらうちき、これいだきてかれらのたまひけるは、 37たれにもあれ、わがために、かかをさなごひとりくるひとは、われくるものなり、またたれにもあれ、われくるひとは、われくるにはあらずして、われつかはしたまひしものくるなり。 38ヨハネこたへてひけるは、よ、われしたがはざるひとりが、なんぢもつあくまおひはらふをたれば、われこれきんじたりき。 39イエズスのたまひけるは、きんずることなかれ、わがもつきせきおこなひながら、ただちわれそしものあらざればなり。 40すなはちなんぢはんせざるひとは、なんぢためにするものなり。 41なんぢがキリストにぞくするものなればとて、わがためいつぱいみづまするひとあらば、われまことなんぢぐ、かれそのむくいうしなはじ。 42またわれしんずるこのちひさものひとりつまづかするひとは、ろばうすくびけられてうみなげいれらるることむしろかれりてまされり。 43もしなんぢなんぢつまづかさばこれれ、かたわにてせいめいるは、りやうてありてじごくえざるくより、なんぢりてまされり、 44かしこにはそのうじなず、えざるなり。 45もしなんぢあしなんぢつまづかさばこれれ、かたあしにてえいえんせいめいるは、りやうあしありてえざるじごくなげいれらるるより、なんぢりてまされり。 46かしこにはそのうじなず、えざるなり。 47もしなんぢなんぢつまづかさば、これくじりれ、かためにてかみくにるは、りやうめありてじごくなげいれらるるより、なんぢりてまされり、 48かしこにはそのうじなず、えざるなり。 49おのおのもつしほづけられ、いけにへおのおのしほもつしほづけられん。 50しほものなり、れどしほもしそのあじうしなはば、なにもつてかこれしほせんや。なんぢこころしほあれ、なんぢあひだへいわあれ、[とのたまへり]。

第10章[編集]

1イエズスここたちでて、ヨルダン[がは]のかなたなるユデアのさかひいたたまひしに、ぐんしゆうまたそのもとあつまりければ、れいごとまたかれらをしたまへり。 2ときにファリザイじんちかづきてこれこころみ、ひとそのつまいだすはよきか、とひしに、 3イエズスこたへて、モイゼはなんぢなにめいぜしぞ、とのたまひしかば、 4かれらふ、モイゼはりえんじやうきてつまいだことゆるせり。 5イエズスかれらこたへてのたまひけるは、かれなんぢこころかたくななるによりてこそ、かのおきてなんぢかきあたへつれ。 6れどかいびやくはじめに、かみひとなんによつくたまへり、 7このゆゑひとちちはははなれてそのつまがつし、 8りやうにんいつたいとなるべし。ればすでふたりあらずしていつたいなり。 9ゆゑかみあはたまひしところひとこれわかつべからず、と。 10でしたちいへおいて、またおなこときてひしかば、 11かれらのたまひけるは、たれにてもつまいだしてめとるは、これかのをんなたいしてかんいんおこなふなり。 12またつまそのをつとててとつぐは、これかんいんおこなふなり、と。 13ときにイエズスのこれたまはんために、ひとびとをさなごさしいだしたるに、でしたちそのさしいだひとしかりければ、 14イエズスこれいきどほたまひ、かれらのたまひけるは、をさなごわれきたるをゆるせ、これきんずることなかれ、かみくにかくごとひとためなればなり。 15われまことなんぢぐ、すべをさなごごとくにかみくにけざるひとは、つひににこれらじ、と。 16かくをさなごいだき、あんしゆしてこれしゆくたまへり。 17イエズスみちたまひしに、あるひとはせきたり、そのまへひざまづきて、よ、えいえんせいめいんには、われなにすべきか、とひければ、 18イエズスこれのたまひけるは、なんわれきとふや、かみひとりほかきものなし、 19なんぢおきてれり、かんいんするなかれ、ころなかれ、ぬすなかれ、ぎしようするなかれ、がいするなかれ、なんぢちちははうやまへ、とこれなり、と。 20かれこたへて、よ、われえうねんよりことごとこれまもれり、とひしかば、 21イエズスこれそそぎ、いつくしみてのたまひけるは、なんぢなほひとつけり、きててるものことごとこれひんしやほどこせ、しからばてんおいたからん、しかしてきたりてわれしたがへ、と。 22かれこのことばかなしうれひつつれり。おほくのざいさんてるものなればなり。 23イエズスみめぐらしつつでしたちに、かたかなかねてるひとかみくにこと、とのたまひければ、 24でしたちこのことばおどろきしかば、イエズスまたこたへてのたまひけるは、せうしよ、かたかなかねたのめるひとかみくにこと25ふしやかみくにるよりも、らくだはりあなとほるはやすし、と。 26かれらいよいよあやしみてかたりひけるは、しからばたれすくはるることをん、と。 27イエズスかれらそそぎつつのたまひけるは、ひとおいあたはざるところなれども、かみおいてはしからず、かみおいてはなにごとあたはざるところなし、と。 28ペトロイエズスにむかひて、われいつさいててなんぢしたがひたり、といひいでたるに、 29イエズスこたへてのたまひけるは、われまことなんぢぐ、すべわがためまたふくいんために、あるひいへあるひきやうだいあるひしまいあるひちちあるひははあるひこどもあるひたはたはなるるひとは、 30たれにてもあれ、ひやくばいほどけざるはなし、すなはちいまこのにては、いへきやうだいしまいははこどもたはたはくがいともに[け、]のちにては、えいえんせいめいけざるはなし。 31ただしおほさきなるひとあとになり、あとなるひとさきになるべし、と。 32エルザレムにのぼとちゆう、イエズスでしたちさきだたまふを、かれらおどろかつおそれつつしたがりしに、イエズスふたたび十二にんちかづけて、おのれおこるべきことかたりたまひけるは、 33よ、われエルザレムにのぼる。かくひとしさいちやうりつぱふがくしちやうらうられ、かれらこれしざいしよし、いはうじんわたし、 34かつこれなぶり、これつばきし、これむちうちてころさん、しかしてみつかふくくわつすべし、と。 35ときに、ゼベデオのヤコボとヨハネとイエズスにちかづきてひけるは、よ、のぞむらくは、われねがところを、なにごとにもあれわれたまはんことを、と。 36イエズス、なんぢなにさんことねがふぞ、とのたまひければ、 37かれらなんぢくわうえいうちひとりそのみぎひとりそのひだりすることをわれさせたまへ、とひしに、 38イエズスのたまひけるは、なんぢねがところらず、なんぢさかづきみ、せんせらるるせんれいにてせんせられるか、と。 39かれらわれ、とひしに、イエズスのたまひけるは、なんぢじつさかづきまん、またせんせらるるせんれいにてせんせられん、 40れどみぎあるひひだりするは、なんぢさすべきことあらず、まちまうけられたるひとびとさすべきなり、と。 41にんものこれきて、おほいにヤコボとヨハネとをいきどほはじめければ、 42イエズスかれらびてのたまひけるは、いはうじんつかさどるとゆるひとこれしゆとなり、またそのきみたるひとけんそのうへふるふは、なんぢれるところなり。 43れどなんぢうちおいてはしからず、かえつたれにもあれ、おほいならんとほつするものなんぢめしつかいとなり、 44たれにもあれ、なんぢうちだい一のものたらんとほつするものいちどうしもべとなるべし。 45すなはちひときたれるも、つかへらるるためあらず、かえつつかへんためかつしゆうじんあがなひとしていのちあたへんためなり、と。 46かくみなエリコにいたりしが、イエズスでしたちおびただしきぐんしゆうともなひてエリコをたまとき、チメオのなるめしひバルチメオ、みちばたしてほどこしりしに、 47これナザレトのイエズスなりとくや、さけでてダヴィドのイエズスよ、われあはれたまへ、とひければ、 48おほくのひとかれしかりてもくせしめんとすれども、かれますますはげしく、ダヴィドのよ、われあはれたまへ、とよばはりたり。 49イエズスたちとどまりて、かれことめいたまひしかば、ひとびとめしひびて、こころやすかれ、て、なんぢたまふぞ、とふや、 50めしひうはぎなげて、をどりあがりておんもといたりしが、 51イエズスこたへて、われなにられんことほつするぞ、とのたまひしにめしひは、ラッボニ、わがえんことを、とへり。 52イエズスこれむかひて、け、なんぢしんかうなんぢすくへり、とのたまひしかば、かれたちまちこととちゆうまでイエズスにしたがけり。