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マタイ伝福音書-第七章 (文語訳)

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<マタイ伝福音書 (文語訳)

マタイ伝福音書 第七章(マタイでんふくいんしょ だいななしょう)

  • 底本:『舊新約聖書』 神戸英国聖書協会 1927年刊

1なんぢら人をさばくな、審かれざらんためなり。 2おのがさばく審判さばきにておのれもさばかれ、おのがはかるはかりにておのれも量らるべし。 3何ゆゑ兄弟きやうだいにあるちりて、おのがにある梁木うつばりを認めぬか。 4よ、おのが目には梁木うつばりのあるに、いかで兄弟きやうだいにむかひて、なんぢの目よりちりをとり除かせよと言ひんや。 5僞善者ぎぜんしやよ、まづおのが目より梁木うつばりをとり除け、さらば明らかにえて兄弟の目より塵を取りのぞき得ん。

6聖なる物を犬にあたふな。また眞珠しんじゆぶたまへぐな。おそらくは足にてみつけ、かへりてなんぢらをみやぶらん。

7求めよ、らば與へられん。たづねよ、さらば見出みいださん。もんたゝけ、さらば開かれん。 8すべて求むる者は、たづぬるものは見いだし、もんをたたく者は開かるるなり。 9汝等なんぢらのうち、たれかそのパンを求めんに石を與へ、 10うをもとめんにへびあたへんや。 11らば、なんぢしきものながら、賜物たまものをそのらにあたふるをる。ましててんにいますなんぢらのちゝは、もとむるものものたまはざらんや。 12らば、すべひとられんとおもふことは、ひとにもまたそのごとくせよ。これは律法おきてなり、預言者よげんしやなり。

13せまもんよりれ、ほろびにいたるもんおほきく、そのみちひろく、これよりものおほし。 14生命いのちにいたるもんせまく、そのみちほそく、これ見出みいだすものすくなし。

15僞預言者にせよげんしやこゝろせよ、ひつじ扮裝よそほひしてきたれども、うちうばかすむる豺狼おほかみなり。 16そのによりてかれらをるべし。いばらより葡萄ぶだうを、あざみより無花果いちじくをとるものあらんや。 17く、すべてをむすび、しきしきをむすぶ。 18しきむすぶことあたはず、しきはよきむすぶことあたはず。 19すべてむすばぬは、られて投入なげいれらる。 20らばそのによりてかれらをるべし。 21われむかひてしゆよ主よといふ者、ことごとくは天國てんこくらず、ただてんにいますちゝ御意みこゝろをおこなふ者のみ、これるべし。 22そのおほくのもの、われにむかひて「しゆしゆよ、われらはなんぢによりて預言よげんし、なんぢによりて惡鬼あくきひいだし、なんぢによりておほくの能力ちからあるわざししにあらずや」とはん。 23そのときわれ明白あらはげん「われえてなんぢらをらず、不法ふはふをなす者よ、われはなれされ」と。

24さらばすべがこれらのことばをききておこなものを、いはうへいへをたてたるさとひとなずらへん。 25あめふりながれみなぎり、かぜふきていへをうてどたふれず、これいはうへてられたるゆゑなり。 26すべてがこれらのことばをききておこなはぬものを、すなうへいへてたるおろかなるひとなずらへん。 27あめふりながれみなぎり、かぜふきていへをうてば、たふれてその顛倒たふれはなはだし』

28イエスこれらのことばかたりをへたまへるとき、群衆ぐんじゆうそのをしへおどろきたり。 29それは學者がくしやらのごとくならず、権威けんゐあるもののごとくをしたまへるゆゑなり。