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プロジェクト・マネジャーが知るべき97のこと/まずプロジェクトの「目的」を確認せよ

提供:Wikisource

 プロマネの第一の使命は、担当したプロジェクトを成功に導くことです。ところが、どのような条件をクリアすれば「成功」といえるのかが、明確となっていないプロジェクトが存在します。これは様々な利害関係者(ステークホルダー)が存在して、それぞれの立場があれば当然のことで、プロジェクトの計画策定時点では、いろいろな目的が複雑に入り込んでいることの方が多いためです。

 コンピュータ・システムを最終的に利用するエンド・ユーザは、時間のかかっていた処理が迅速に行われることや、重複したデータ入力の省力化を重視しているかも知れません。後方の事務処理部門では、これまで手作業によっていた処理が自動化されることで、事務の正確さと稼動減少を求めているかも知れません。開発の窓口を担当している開発部門では新技術の採用を実現してアピールしたいと考えていることもあります。さらに、企業の管理部門ではコストの大幅削減に期待しているかも知れません。

 プロジェクトの計画を認めてもらうためには、多くの甘言が必要かも知れません。特に自分で構築を担当しないコンサルティングなどが計画を担当した場合には、このような「バラ色の夢」が描かれることも少なくありません。プロマネはプロジェクトを成功に導くために、これらの「バラ色の夢」と格闘することになります。プロジェクトの成功の第一歩は、「品質」を守ること、すなわち、Q =品質、C =コスト、D =納期を守ることと教えられます。これはプロジェクトの計画が完璧であるならば、という条件付きの話です。実際のプロジェクトの現場では、実現可能性をきちんと確かめていない絵に描いた餅のようなプロジェクトがたくさんあります。

 プロジェクトというのは、たいていが一品料理なので、毎回違うものを作ります。ですから、やってみないと本当にうまく行くか否かわからないということの方が多いと思います。計画通りに進めることができなくなったときに、費用が増えてもかまわないのか、それとも多少は質を落として対応するのかを悩むこととなります。

 こうしたことは、「バラ色の夢」を全部達成できない場合には、何を優先して考えるのかという優先順位づけの問題です。ところが、一度計画が進み始めて途中の段階で優先順位の話を始めると、なかなか決着がつきにくくなります。大きなプロジェクトで、たくさんの利害関係者がいるときほど決着が難しくなるのは、当然のことといえるでしょう。こうした問題が発生すると、本来はプロジェクトの進行管理を中心に考えるべきプロマネが、やむなく利害関係者の間を飛び回って、その調整を行うのが仕事になってしまうことも少なくありません。そこまで行ってしまうと、もはやプロジェクトの管理どころの話ではなくなってしまいます。

 これらの避けられない問題を回避する最もよい方法は、プロジェクトの「目的」をそのスタート前によく確認して文書化しておくことです。そうして何か問題が生じたときには、その「目的」に照らして、どうするかを判断するのです。多くの目的が定義されて「バラ色の夢」が描かれているときには、必ず、一番の目的を確認することが必要です。「バラ色の夢」でもほとんどの場合には、重要な 1 つの目的を達成することにより、ほかの事柄は派生するものであるというように理解して、目的を絞ることができるはずです。