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プログラマが知るべき97のこと/命を吹き込む魔法

提供:Wikisource

あなたのプロジェクトにコードネームはありますか? 製品名でも、契約書の題目でもなく、あなたのチームが使うコードネームです。コードネームがないならつけてみましょう。誰も文句はいいません。

製品名のような「正式な名前」があるのに、なぜコードネームが必要なのでしょうか。それは普段から口にする名前こそが私達プログラマにとって「本当の名前」だからです。契約上の名前だけを持つプロジェクトが「開発一課でやってるやつ」あるいは「A社向け」などその場限りの指示語で呼ばれるのを耳にしたことはありませんか? リリースの直前まで製品名が決まらなかったことは? 呼び名もないプロジェクトやソフトウェアをどう愛せるというのでしょう。プロジェクトに指示語やラベルではない本当の名前を与えるのが、コードネームの役割です。

プロジェクトが始まったらコードネームを決めましょう。決めてどんどん使いましょう。Wikiのサイト名、ソースコードのレポジトリ名、メーリングリストなど、身近な識別子をコードネームで統一します。内部向け資料のフッタに埋め込むのも忘れずに。これだけで、チームのメンバーや関係者は自然とコードネームを口にしはじめます。

もう少し羽目を外したいなら、ソースコード上のパッケージ名や名前空間、サービスのURLなどにもコードネームを使うことができます。ただしエンドユーザや顧客の目にとまり、弁明を求められるかもしれません。

コードネームは命名の便宜だけに使うものではありません。チームをまとめるシンボルにもなります。コードネームを連想するアイコンを描き、プロジェクトのウェブサイトやツールに使いましょう。コードネームとアイコンをあしらったTシャツを作り、リリース祝いに配りましょう。名前の由来を写真にとってWikiや扉に貼り付けましょう。コードネームにちなんだマスコットキャラクタを探し、エラーページやデバッグコンソールに忍ばせるのも一興です。

あるコードネームならではの仕掛けを探す楽しみもあります。たとえばコードネームが食べ物や飲み物なら、パーティーの定番メニューにしましょう。コードネームが地名なら、一度はチームで出かけましょう。コードネームが人名なら、伝記を読むのはどうでしょう。

さて、コードネームは毎日つきあうものですから、素敵な名前をつけたいものです。

名前の由来が具体的で、身近なものを選びましょう。コードネームの仕掛けで遊ぶときにも、よく知っている名前の方が連想が弾みます。造語も悪くはないですが、どちらかというと「公式な名前」向きです。衆目をひく強い個性は必ずしもコードネームに求められていません。不慣れな外国語から探した単語や、長い名前の略語も避けた方が良いでしょう。一目で意味のとれない名前は覚えられませんからね。読み方がわからず定着しそこねるコードネームは不幸です。

仲間が多く、連想のふくらむ名前を選びましょう。プロジェクトが成功すればバージョンアップがおこります。大きなプロジェクトにはサブプロジェクトがつきものです。関係するプロジェクト同士に連想しあう名前をつけると一体感がうまれます。

素敵なコードネームをつけることができたら、その名前を口にして、その名前を呼び、いつも何度も口にしましょう。コードネームはチームを結束する秘密の合言葉であり、プロジェクトを遊ぶための無害な口実であり、姿の見えないソフトウェアに命を吹き込む魔法なのです。