フィレモン書 (ラゲ訳)

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<聖書<我主イエズスキリストの新約聖書

『公敎宣敎師ラゲ譯 我主イエズスキリストの新約聖書』公敎會、

1910年発行

〔ローマ・カトリック訳〕

ラゲ訳新約聖書エミール・ラゲ(Emile Raguet,MEP)

フィレモン書

第1章[編集]

1キリスト、イエズスの囚人しうじんたるパウロおよ兄弟きやうだいチモテオ、われあいするところ助力者じよりよくしやフィレモン、最愛さいあい姉妹しまいたるアッピア、戰友せんいうたるアルキッポ、 2およなんぢいへ敎會けうくわいに[書簡しよかんおくる]。 3ねがはくはわがちちにてましまかみおよしゆイエズス、キリストより、恩寵おんちよう平安へいあんとをなんぢたまはらんことを。 4われかみ感謝かんしやたてまつり、わがいのりうちつねなんぢ記念きねんし、しゆイエズス、キリストにおける、 5またすべての聖徒せいとたいするなんぢあい信仰しんかうとをきて、 6キリスト、イエズスにたいしてわれうち善業ぜんげふことごとしれわたれることによりて、なんぢ信仰しんかうほどこし有效いうこうならんことこひねがふ。 7兄弟きやうだいよ、聖徒せいとたちはらわたなんぢによりてやすんぜられたるがゆゑに、われなんぢあいきておほいなるよろこびなぐさめとをたり。 8ればキリスト、イエズスにおいて、ことおうじてすべきところめいずるは、あへはばからざるところなりといへども、 9むしろあいたいしてすすめ、かくごとくなるわれすなは老人らうじんにしてしかげんにイエズス、キリストの囚人しうじんたるパウロ、 10くさりりてみしところわがオネジモのためなんぢこひねがふ。 11かれかつなんぢ無益むえきなりしかど、いまわれにもなんぢにも有益いうえきなり、 12われこれなんぢおくりかへす、ねがはくはなんぢわがはらわたごとくにこれけんことを。 13われかれをして、なんぢかはりて福音ふくいんためくさりつながるるわれつかへしむるやうわれともとどまらしめんことほつしたれど、 14なんぢかずしては何事なにごとをもすをこのまざりき。これなんぢ善業ぜんげふをして、むをざるがごとくならず、篤志とくしらしめんがためなり。 15かれいちなんぢはなれしは、あるひなんぢ永遠えいえんこれけて、 16最早もはや奴隷どれいとしてにはあらず、奴隷どれいまさりて至愛しあい兄弟きやうだいさんためにはあらずや。われには、ことしかあるものなれば、ましなんぢりては、肉身にくしんおいてもしゆおいてもしからん。 17ればなんぢもしわれともとせば、かれ承容うけいるることわれおけるがごとくせよ。 18かれもしなんぢ損害そんがいあたへ、あるひ負債ふさいあらば、これわれはせよ。 19われパウロづからかきしるせり、われかならつぐのふべし。なんぢおのれもつわれつぐのふべき負債ふさいあることは、われこれはじ。 20しかり、兄弟きやうだいよ、われしゆおいなんぢたのしまん、しゆおいわがはらわたやすんぜしめよ。 21われなんぢ從順じゆうじゆんしんじ、そのさんとするところところまされるをりて、なんぢ書贈かきおくれるなり。 22同時どうじわがため宿やどそなへよ、けだしわれわがの、なんぢいのりによりてなんぢあたへられんこと希望きぼうす。 23キリスト、イエズスにりてわれとも囚人しうじんたるエパフラ、なんぢよろしくとへり。 24わが助力者じよりよくしやたるマルコ、アリスタルコ、デマス、ルカもまたおなじ。 25ねがはくは我主わがしゆイエズス、キリストの恩寵おんちようなんぢれいともらんことを、アメン。