トーク:法典論
話題追加書誌情報 | |
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底本: | 穂積陳重『法典論全』(新青出版,1890(明治23)年3月,再復刻版2008年7月) |
出典: | 論文復刻:http://homepage1.nifty.com/ksk-s/hotenron.htm |
入力: | HappyMidnight |
校正: | CES1596 |
完成度: | 検証済み |
注: | 国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/786139により検証済み。 |
序 補足(国立国会図書館)
[編集]法典編纂の挙は、立法史上の一紀元をなすべき大事業にして、国家千載の利害、生民億兆の休戚、之に頼りて定まる、故に苟くも国民たる者は、沈思熟考して、其是非得失を攻究せざるべからず、殊に法律専攻の士は、各微衷を尽して其意見を吐露するは、亦た其負荷に対する特務と称すべきなり。
本書は本と拙著法理学叢書第十五巻に充て、沿革法理学比較法理学上より法典を論ぜしものにして、固より時事論の為めに立案したるに非ざれば、久しく艸稿筐底に蔵めて、好材料を得る毎に、之を修補し、徐ろに其完成を期したり、然るに近来法典編纂の論世上に囂しく、学友諸氏の愚見を叩く者、亦た尠からず、是に於て、著者は毎に各国歴史上の事蹟に基きて立論し、之を諸氏に質せしに、或は同し、或は異し、其見る所各異なりと雖も、其法理学叢書予定の順序に拠らずして、直ちに之を公にするを勧誘するに至りては、殆んど一なり、加之学友法学博士富井政章、法学士宮崎道三郎、法学士伊藤悌次、及びドクトル、バイペルトの諸氏は、本書の立案に貴重なる材料を与へられ、熊谷敬太郎、大久保雅彦の両氏は、著者を助けて校訂繕写の労を執らるゝに及び、遂に筐底の塵を払ひて公衆の批正を仰ぐに至れり。本書を立案せしめたる者は、著者が学理上の研究なり、本書を公刊せしめたる者は、我国現時の状勢なり、而して此蕪稿を公衆に紹介する者は、学友諸氏の厚誼なり、此書果して法典編纂論者の矛となるべきか、将た非法典編纂論者の盾となるべきか、著者は楚人を学んで之を双方の論者に售らんとする者に非ず、唯本書は、読衆諸氏が歴史上の事蹟に徴して、今日国家重要の問題たる法典編纂論に対し、公平無私の断案を下すの原料とならん事を庶幾ふに在るのみ。
明治廿三年二月上浣
穂積陳重 識--Teetrition (トーク) 2024年3月15日 (金) 04:03 (UTC)