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チト書 (ラゲ訳)

提供:Wikisource

<聖書<我主イエズスキリストの新約聖書

『公敎宣敎師ラゲ譯 我主イエズスキリストの新約聖書』公敎會、

1910年発行

〔ローマ・カトリック訳〕

ラゲ訳新約聖書エミール・ラゲ(Emile Raguet,MEP)

チト書

第1章

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1かみしもべにしてイエズス、キリストの使徒しとたるパウロ、共通きようつう信仰しんかうによりてわが實子じつしたるチトに[書簡しよかんおくる]。使徒しとたるは、かみえらまれたる人々ひとびと信仰しんかうおうじ、またひと敬虔けいけんみちびきて、 2永遠えいえん生命せいめい希望きぼうしやうぜしむる眞理しんり知識ちしきおうずるためなり。すなはいつはたまはざるかみ世々よよ以前いぜんよりこの希望きぼうやくたまひしに、 3ときいたりて御言おんことばあらはすに宣敎せんけうもつてしたまひ、その宣敎せんけうわが救主すくひぬしにてましまかみめいによりてわれたくせられたるなり。 4ねがはくはちちにてましまかみおよわが救主すくひぬしキリスト、イエズスより恩寵おんちよう平安へいあんとをたまはらんことを。 5なんぢをクレタ[じま]にきしは、なほけたるところととのへ、かつなんぢめいぜしごと町々まちまち長老ちやうらうてしめんためなり、 6すなはとがむべきところなく、一婦いつぷをつとにして、もし子等こどもあらばこれ信徒しんとにして、放蕩はうたうもつうつたへらるることなく、したがはざることなき子等こどもてるひとたるべし。 7けだし監督かんとくは、かみ家宰いへづかさとしてとがむべきところなきひとたるべし。すなは自慢じまんせず、短氣たんきならず、さけたしまず、ひとたず、づべきもとめず、 8旅人りよじん接待せつたいし、ぜんこのみ、怜悧れいりにして義人ぎじんたり、信心家しんじんかにして節制家せつせいかたり、 9をしへによれるまことはなしかたり、健全けんぜんなるをしへによりてひとすすむることを反對はんたいとなふるひと答弁たふべんをするをひとたるべし。 10けだししたがはずしてぜいべんろうし、もつひとまどはすものこと割禮かつれい人々ひとびとうちおほし。 11彼等かれらづべきために、をしふべからざることをしへ、全家ぜんかをもくつがへすがゆゑに、彼等かれらをして閉口へいこうせしむるをえうす。 12彼等かれらうちなる一人ひとり預言よげんしやへり、「クレタじん何時いつ虛言きよげんきて、あしけもの懶惰らんだはらなり」と。 13この證言しようげんまことなり、このゆゑなんぢ彼等かれらをして信仰しんかう健全けんぜんならしめんために、するどこれ譴責けんせきし、 14ユデアけう寓言ぐうげんと、眞理しんりそむくる人々ひとびといましめとにことなからしめよ。 15きよ人々ひとびとには、ものみなきよけれども、けがれたるひと不信ふしんひとにはきよものなく、その理性りせい良心りやうしんともけがれたり。 16彼等かれらみづかかみたてまつれりと宣言せんげんすれども、おこなひおいてはこれててじつにくむべきもの、反抗はんかうするもの、一切いつさい善業ぜんげふきての廢物すたりものなり。

第2章

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1しかれどもなんぢ健全けんぜんなるをしへ相當さうたうすることかたれ。 2老人らうじんには節制せつせいし、たふとかつさとくして、信仰しんかうあい忍耐にんたいとに健全けんぜんならんことすすめ、 3老女らうぢよにはおなじく聖女せいぢよらしき行儀ぎやうぎまもりて、そしらず、さけたしまず、をしへんことすすめ、 4彼等かれらをしてわかをんなさとをしへしめ、そのをつとあいし、その子等こどもいつくしみ、 5怜悧れいり貞操ていさう謹愼きんしん)にして家事かじをさめ、親切しんせつにしてをつとしたがひ、かみ御言おんことばののしられざるやうにすべきことをしへさせよ。 6青年せいねんにはおなじく謹愼きんしんならんことすすむべし。 7萬事ばんじきておのれ善業ぜんげふ模範もはんきようし、をしふるに廉潔れんけつ嚴格げんかくとをあらはし、 8ことば健全けんぜんにしてとがむべきところなかるべし、これ反對者はんたいしやが、われあくぐるにすべなくしてみづかぢんためなり。 9奴隷どれいにはその主人しゆじんしたがひて、何事なにごとそのむねし、いひさからはず、かすめず、 10わが救主すくひぬしにてましまかみをしへ萬事ばんじかざらんために、何事なにごときても忠實ちゆうじつあらはさんことをすすめよ。 11けだし一切いつさいひとすくひかみ恩寵おんちようあらはれ、 12われさとすに、敬虔けいけん世俗せぞくよくとをてて、謹愼きんしん正義せいぎ敬虔けいけんとをもつこの生活せいくわつすべきこと13さいはひなる希望きぼうすなはち、われ救主すくひぬしにてましま大御神おほみかみイエズス、キリストの光榮くわうえいなる公現こうげんつべきこともつてせり。 14キリストがわれためおのれわたたまひしは、われ一切いつさい不義ふぎよりあがなひて、善業ぜんげふ熱心ねつしんなる固有こいうたみを、おのためきよたまはんとてなり。 15なんぢこれことまつた權威けんゐもつかたり、かつすすめ、かついさめよ、たれなんぢかろんずべからず。

第3章

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1なんぢ彼等かれらさとして、君主くんしゆおよ有權者いうけんしやふくし、はるることしたがひ、すべての善業ぜんげふおのれそなへ、 2たれをもののしらず、あらそひこのまず、寬仁くわんじんにしてすべてのひとたいして所有あらゆる溫和をんわあらはことわすれざらしめよ。 3けだしわれも、かつ無知むち不信心ふしんじんにして、まよひて樣々さまざま慾望よくぼう快樂くわいらくとの奴隷どれいり、あく嫉妬しつととのうち生活せいくわつし、にくまるべくしてあひにくものなりき。 4しかれどもわが救主すくひぬしにてましまかみ慈惠じけい仁愛じんあいとのあらはるるにおよび、 5われおこなひしわざによらず、おん慈悲じひによりて聖靈せいれいたま再生さいせい一新いつしんとの水洗みづあらひもつてわれすくひたまひ6わが救主すくひぬしイエズス、キリストをもつて、聖靈せいれいゆたかわれそそたまひしは、 7われその恩寵おんちようによりてとせられ、永遠えいえん生命せいめい希望きぼうおけ世嗣よつぎらんためなり。 8これ眞實しんじつはなしにして、われこれきてなんぢ斷言だんげんせんことほつす、かみしんたてまつ人々ひとびとをして、はげみて善業ぜんげふ從事じゆうじせしめんためなり。かかげふこそは善良ぜんりやうにしてひとえきあることなれ。 9おろかなる問題もんだい系圖けいづと、爭論さうろん律法りつぱふじやうあらそひとをけよ、無益むえきにして、むなしければなり。 10異說者いせつしや一度ひとたび二度ふたたび訓戒くんかいしてのちこれとほざかれ、 11かくごとひとつみせらるるは、みづからの判斷はんだんにもよることなれば、よこしまにしてあやまれるものなることればなり。 12われアルテマあるひはチキコをなんぢつかはしなば、いそぎてニコポリなるわがもときたれ、われふゆ彼處かしこすごさんとけつしたればなり。 13法律家はふりつかなるゼナおよびアポルロを手厚てあつおくりて、らざることなからしめよ。 14かくわれの[兄弟等きやうだいたち]も、むすばざるものらざらんため、[兄弟きやうだいの]必要ひつえうおうじて善業ぜんげふ從事じゆうじすることまなぶべし。 15われとも人々ひとびとみななんぢよろしくとへり。信仰しんかうおいわれあいする人々ひとびとよろしくつたへよ。ねがはくはかみ恩寵おんちようなんぢ一同いちどうともらんことを、アメン。