<聖書<我主イエズスキリストの新約聖書
『公敎宣敎師ラゲ譯 我主イエズスキリストの新約聖書』公敎會、
1910年発行
〔ローマ・カトリック訳〕
『ラゲ訳新約聖書』エミール・ラゲ(Emile Raguet,MEP)
コリント前書
1神の思召に由りてイエズス、キリストの使徒と召されたるパウロ、竝に兄弟ソステネス、
2コリントに在る神の敎會、卽ちキリスト、イエズスに於て聖とせられ聖徒と召されたる人々、及び彼等の處我等の處何れの處にも在りて、我主イエズス、キリストの御名を呼べる人々一同に[書簡を贈る]。
3願はくは我父にて在す神及び主イエズス、キリストより恩寵と平安とを汝等に賜はらんことを。
4キリスト、イエズスに於て汝等に賜はりたる神の恩寵に就きて、我絕えず汝等の爲に我神に感謝し奉る。
5其は汝等彼に於て、凡ての敎、凡ての智識、何物にも富める者となりたればなり。
6蓋キリストの證明汝等の中に堅くせられたれば、
7汝等如何なる恩寵にも缺くる所なくして、我主イエズス、キリストの顯れ給ふを待てるなり。
8神は汝等を終まで堅固ならしめ、無罪にして我主イエズス、キリストの降臨の日に至らしめ給ふべし。
9其は其御子にて在す我主イエズス、キリストに與すべく、汝等を召し給へる神は、眞實にて在せばなり。
10兄弟等よ、我主イエズス、キリストの御名によりて我汝等に勸告す、汝等皆言ふ所を同うして、其間に分裂ある事なく、同意同說に全く相一致せんことを。
11蓋我兄弟等よ、クロエの家の人々より報じ來りし所に據れば、汝等の間に[種々の]爭論ある由。
12我之を云はんに、汝等各、我はパウロのもの、我はアポルロのもの我はケファのもの、我はキリストのものなりと云ふ。
13キリスト豈分割せられ給ひし者ならんや、パウロは汝等の爲に十字架に釘けられしか、或は汝等はパウロの名に由りて洗せられしか。
14我は汝等の中、クリスポとカヨとの外、誰をも洗せざりし事を神に感謝す、
15然れば一人も我名によりて洗せられたりと云ふ者はあらじ。
16尙ステファナの一家をも洗したれど、其外には我人を洗したるを知らざるなり。
17蓋我がキリストより遣はされしは、洗する爲に非ずして福音を傳へん爲なり。而も言の智惠を以てすべきに非ず、是キリストの十字架の空しくならざらん爲なり。
18蓋十字架の言は亡ぶる人には愚なる事なれども、救はるる者卽ち我等には神の大能なり。
19錄して、「我は智者の智惠を亡ぼし、賢者の賢さを傷はん」、とあればなり。
20此世の智者何處にか在る、律法學者何處にか在る、論者何處にか在る。神は此世の智を愚ならしめ給ひしに非ずや。
21蓋世[の人]は其智惠を以て、神の全智[の業]に於て神を認めざりしかば、神は宣敎の愚を以て信者を救ふを善しとし給へり。
22卽ちユデア人は徵を求め、ギリシア人は智惠を探ぬるに、
23我等は十字架に釘けられ給へるキリストを宣傳ふるなり。是ユデア人に取りては躓くもの、ギリシア人に取りては愚なる事なれども、
24召されしユデア人及びギリシア人に取りては神の大能、神の智惠たるキリストなり。
25其は神の愚なる所は人よりも敏く、神の弱き所は人よりも强ければなり。
26兄弟等よ、汝等の召されし者を看よ、肉に由れる智者は多からず、有力者は多からず、尊き者は多からず、
27却て智者を辱めんとて、神は世の愚なる所を召し給ひ、强き所を辱めんとて、神は世の弱き所を召し給ひ、
28現に在る所を亡ぼさんとて、神は世の卑しき所、蔑にせらるる所、無き所をば召し給ひしなり。
29是何人も御前に於て驕らざらん爲なり。
30汝等は神に由りてこそ、我等の智惠と義と成聖と贖とに成り給ひしキリスト、イエズスに在るなれ。
31是錄されたる如く、「誇る者は主に於て誇らん」爲なり。
1兄弟等よ、我も汝等に至りし時、高尙なる談話或は智惠を齎して、神の證明を汝等に告げしに非ず。
2蓋我汝等の中に於てイエズス、キリスト、而も十字架に釘けられ給ひたる其の外は、何をも知るを善しとせず、
3汝等の中に在りて、弱くして且懼れ、且大いに慄く者なりき。
4又我談話、我宣敎は人を屈服せしむる人智の言に在らずして、聖靈及び大能を現すに在りき。
5是汝等の信仰が人間の智惠に由らずして、神の大能に由らん爲なり。
6然れども完全なる人々の中に於ては、我等智惠の事を語る。但し此世の智惠に非ず、此世に於る亡ぶべき君主等の智惠に非ず、
7語る所は神の不可思議なる智惠にして、卽ち(永く)隱れたりしもの、神が代々に先ちて我等の光榮として豫定し給ひしものなり。
8此世の君主等は一人も之を知らざりき。蓋知りたりしならば、彼等は決して光榮の主を十字架に釘けざりしならん。
9然るに錄されし如く、神が之を愛し奉る人々に備給ひし事、目も之を見ず、耳も之を聞かず、人の意にも上らざりしを、神己が靈を以て我等に顯はし給ひしなり、
10其は靈は神の深き所に至るまで萬事を洞見し給へばなり。
11蓋人の事は、其身に在る人の靈の外に、如何なる人か之を知るべき。斯の如く神の事も亦神の靈の外に之を知る者なし。
12然て我等が受けしは此世の靈に非ず、神より出で給ふ靈にして、神より我等に賜はりたる事を知らん爲なり。
13又我等が之を語るに當りて、人智の敎ふる言を以てせず、靈の敎へ給ふ所を以てして、靈的事物に靈的事物を引合するなり。
14然るに肉的人物は神の靈の事を承容れず、是靈的に是非すべきものなれば、彼に取りては愚に見えて之を覺る事能はざるなり。
15然るに靈的人物は萬事を是非して、己は誰にも是非せられず。
16蓋誰か主の念を知りて之に諭す者あらんや、我等はキリストの念を有し奉る。
1兄弟等よ、我は曩に靈的人物に對するが如くにして汝等に語る事能はず、肉的人物卽ちキリストに於る小兒に語るが如くにして、
2汝等に乳を飲ましめ、堅き食物を與へざりき。是其時汝等未だ之に適はざりし故なりしが、汝等は今も尙肉的人物なるを以て之に適はざるなり。
3卽ち汝等の間に嫉妬と爭論とあるは、是肉的にして人の如く步むに非ずや。
4或人我はパウロのものなりと云ふを、他の人我はアポルロのものなりと云へば、汝等尙人たるに非ずや。然らばアポルロ何者ぞ、パウロ何者ぞ、
5彼等は汝等が賴りて以て信ぜし僕にして、而も主の各に賜ひたる儘の者に過ぎず。
6我は植ゑ、アポルロは水濯げり、然れど發育を賜ひしは神なり。
7然れば植うる人も水濯ぐ人も、共に數ふるに足らず、唯發育を賜ふ神あるのみ。
8植うる人も水濯ぐ人も一にして、各其勞に隨ひ、面々の報を受くべきなり。
9蓋我等は神の助手にして、汝等は神の耕作地なり。神の建築物なり。
10我は、賜はりたる神の恩寵に從ひて、敏き建築者の如く基礎を据ゑしに、他人は其上に建築す、各如何にして其上に建築すべきかを慮るべし。
11其は据ゑられたる基礎卽ちキリスト、イエズスを除きては、誰も他の基礎を置く事能はざればなり。
12人若此基礎の上に、金、銀、寳石、木、草、藁を以て建築せば、
13面々の建物顯れん、蓋主の日に於て明にせらるべし、其は火を以て顯され、火は面々の建物の如何を試すべければなり。
14若誰にもあれ、其上に建築したる建物にして之に堪へなば、其人は報を得べく、
15若其建物燒けなば其人は損を受けん、然れど己は殆ど火を經たる如くに救はるべし。
16汝等は其身が神の聖殿なる事、神の靈汝等の中に住み給ふ事を知らざるか。
17人若神殿を毀たば神之を亡ぼし給ふべし、蓋神殿は聖にして汝等は卽ち其なり。
18誰も自ら欺くこと勿れ、汝等の中に己を敏しと思ふ者あらば、智者たらん爲に此世に於て愚なるべし。
19其は此世の智惠は神の御前に愚なればなり。蓋錄して、「我智者等を其狡猾によりて捕へん」、とあり。
20又、「主は智者等の思の徒なるを知り給ふ」、とあり。
21然れば誰も人を以て誇と爲すべからず、
22蓋萬事は汝等のものなり、或はパウロ、或はアポルロ、或はケファ、或は世、或は生、或は死、或は現在の事、或は未來の事、卽ち一切は汝等のものなり、
23然れど汝等はキリストのものにして、キリストは神のものなり。
1然れば人は宜しく、我等をキリストの僕、神の奧義の分配者と思ふべし。
2然て分配者に要求する所は其忠實なる事なれど、
3我は汝等により、或は人の裁判によりて是非せらるることを、聊も意と爲ず、又自ら是非する事をも爲ざるなり。
4蓋良心に何の咎むる事はなけれども、之に由りて義とせらるるには非ず、我を是非し給ふ者は主なり。
5然れば汝等主の來り給ふ迄は、時に先ちて是非すること勿れ、主は暗夜の隱れたる所をを照らし、心の謀を發き給ふべし、其時面々に神より譽を得ん。
6兄弟等よ、我が是等の事を、我とアポルロとに引當てて云ひしは、是汝等の爲、卽ち我等の例を以て、錄されたる以外に、一人を揚げ一人を蔑げて誇らざらん事を汝等に學ばしめん爲なり。
7蓋汝を差別する者は誰ぞや、汝の有てる物にして、貰はざりし物は何かある、貰ひしならば、何ぞ貰はざりしが如くに誇るや。
8汝等既に飽足れり、既に富めり、我等を措きて王となれり。然り汝等王たれかし、然らば我等も汝等と共に王たるを得ん。
9蓋我想ふに、神は使徒たる我等を、後の者、死に定まりたる者として見せ給へり。卽ち我等は全世界、天使等にも人間にも觀物とせられたるなり。
10我等はキリストの爲に愚者なるに、汝等はキリストに於て智者なり、我等は弱くして汝等は强く、汝等は尊くして我等は卑し。
11今の時に至る迄も、我等は飢ゑ、又渴き、又素肌なり、又頰を打たれ、又定まれる住所なく、
12又手業を營みて勞し、詛はれては祝し、迫害せられては忍び、
13罵られては祈り、今に至る迄も世の芥、衆人の捨物の如くになれり。
14我が斯く書記せるは、汝等を辱めんとには非ず、唯我至愛なる子として誡むるのみ。
15蓋汝等キリストに於て、師は一萬ありとも父は數多からず、其は福音を以て汝等をキリスト、イエズスに生みたるは我なればなり。
16故に我汝等に希ふ、(我がキリストに倣へる如く)汝等も我に倣へ。
17我は之が爲に、主に於て忠實なる我至愛の子チモテオを汝等に遣はしたるが、彼はキリスト、イエズスに於る我道、卽ち至る處の各敎會に我が敎ふる所を、汝等に思出さしめん。
18或人々は我汝等に至らずとて誇れども、
19主の思召ならば、我は速に汝等に至り、誇れる人々の言を措きて其實力を知らんとす。
20是神の國は言にあるに非ずして實力にあればなり。
21汝等は敦をか望める、我が鞭を以て汝等に至らん事か、將愛と溫和の心とを以て至らん事か。
1取總て聞く所によれば、汝等の中に私通あり、而も異邦人の中にも在らざる程の私通にして、或人は其父の妻を娶れりと云ふ。
2斯ても汝等は驕るか、之を行へる人の汝等の中より除かれん事を望みて嘆かざるか。
3我身こそは其處に在らざれど、精神にては其處に在りて躬之に臨めるが如く、然行ひし人を既に裁判せり。
4卽ち我主イエズス、キリストの御名に由り、汝等と我精神と相合して、我主イエズス、キリストの權力を以て、
5斯る輩をサタンに付す。是肉體は亡ぶるも、精神は我主イエズス、キリストの日に於て救はれん爲なり。
6汝等の誇れるは善き事に非ず、僅の酵は麪の全體を膨らすと知らずや。
7汝等既に無酵麪となりし如く、古き酵を除きて新しき麪たるべし。其は、我等が過越[の犧牲]たるキリストは屠られ給ひたればなり。
8故に我等は古き麪酵、及び惡事と不義との麪酵を用ひずして、純粹と眞實との無酵麪を用ひて祝はざるべからず。
9我曾て書簡にて私通者に交る勿れと書贈りしが、
10是は此世の私通者、或は貪欲者、或は掠奪者、或は偶像崇拜者に交る勿れとには非ず、若然らば、汝等此世を去らざるを得ざりしならん。
11然れども交る勿れと今書贈るは、若兄弟と名けらるる人にして、私通者、或は貪欲者、或は偶像崇拜者、或は侮辱者、或は酩酊者、或は掠奪者ならば、斯る人と食事を共にする事勿れとなり。
12其は我爭でか外に在る人を審く事あらんや。汝等の審くは内なる人に非ずや。
13蓋外に在る人をば神ぞ審き給ふべき。惡人を汝等の中より取除け。
1汝等の中に相關係せる事件ある時、其審判を聖徒に願はずして、正しからざる人々に願ふ事を敢てする者あるは何ぞや。
2聖徒は此世を審くべき者なりと知らずや、然れば世は汝等より審かるべきに、汝等は、極めて些細なる事を審くに足らざるか。
3知らずや我等は天使等を審くべき者なり、况や世の事をや。
4故に若審くべき此世の事件あらば、之を審く爲に敎會内の卑しき人々を立てよ。
5斯く言へるは汝等を辱しめんとてなり。然らば其兄弟の間の事を審くべき賢き者、汝等の中に一人も在らざるか。
6然るを兄弟兄弟を相手取りて、而も不信者の前に訴訟を起す。
7互に訴訟のある事すら、既に疑もなく汝等の中の失態なり。何故に寧不義を受けざる、何故に寧害を忍ばざる、
8却て汝等自ら不義と詐欺とを爲し、而も兄弟に對して之を爲せるは何ぞや。
9不義者は神の國を得る事なしと知らずや。誤ること勿れ、私通者も、偶像崇拜者も、姦淫者も、
10男娼も、男色者も、盜賊も、貪慾者も、酩酊者も、侮辱者も、掠奪者も、神の國を得ざるべし。
11汝等の中の或人々、曩には斯の如き者なりしかど、我主イエズス、キリストの御名により、又我神の靈によりて、既に洗潔められ、聖とせられ、義とせられたり。
12何事も我に可なりと雖も、皆益あるには非ず。何事も我に可なりと雖も、我は決して何物の奴隷ともならじ。
13食物は腹の爲、腹は食物の爲なれども、神は此も彼も共に亡ぼし給ふべし。肉體は私通の爲に非ずして主の爲なり、主も亦肉體の爲なり。
14抑神は主を復活せしめ給ひたれば、御能力を以て我等をも亦復活せしめ給ふべし。
15汝等の體はキリストの肢なりと知らずや、然らばキリストの肢を奪ひて娼婦の肢と爲さんか、[否々]。
16娼婦に着く人は之と一體になると知らずや、卽ち曰く、「二人一體に在らん」と、
17然れど主に着く人は一の靈となるなり。
18私通を避けよ、人の犯す罪は何れも身の外に在れども、私通する人は己が身を犯すなり。
19又汝等の五體は神より賜はりて、汝等の中に在す聖靈の神殿なる事、汝等が汝等自らのものに非ざる事を知らざるか。
20蓋汝等は高價を以て買はれたり、己が身に於て神に光榮を歸し奉れ。
1汝等が我に書贈りし事に就きては、男の女に觸れざるは善き事なり。
2然れど私通を免れん爲には各妻あるべく、女も各夫あるべく、
3夫は妻に負債を果し、妻も亦夫に然すべきなり。
4妻は其身の權利を有せずして夫之を有すると共に、夫も亦其身の權利を有せずして妻之を有す。
5相拒む事勿れ、唯祈に從事せんとて合意の上暫く之を罷むるも、再び共に其事に復るべし、是汝等が色情に就きてサタンに誘はれざらん爲なり。
6然て我が斯く云へるは、命令に非ずして許可なり。
7蓋我が望む所は、汝等皆我が如くならん事なりと雖も、人各固有の賜を神に得て、一人は此の如く一人は彼の如し。
8然れば婚姻を爲さざる人及び寡婦に向ひて我は言ふ、其儘に而も我が如くにして居らんは、彼等に取りて善き事なり。
9然れど若自ら制する事能はずば、宜しく婚姻すべし、婚姻するは[胸の]燃ゆるに優ればなり。
10婚姻に由りて結ばれたる人々には、妻は夫に別るる事勿れと命ず。是我に非ずして主の命じ給ふ所なり。
11若別るる事あらば其儘にして嫁がず、或は夫に和合すべし、夫も亦妻を離緣すべからず。
12其他の人々には我謂はん、是は主の曰ふに非ず、若兄弟に不信者なる妻を有てる者あらんに、其妻彼と同居する事を承諾せば、之を離別する事勿れ。
13若又信者たる婦、不信者なる夫を有てる事あらんに、夫之と同居する事を承諾せば、夫を離去るべからず。
14蓋不信者なる夫は(信徒たる)妻によりて聖とせられ、不信者なる妻も(信徒たる)夫によりて聖とせられたるなり。然らざれば汝等の子等は潔からざるべしと雖も、今彼等は聖たるなり。
15不信者若自ら去らば去るに任せよ、其は斯る時に當りて、兄弟或は姉妹は奴隷たるべきに非ず、神は平和に我等を召し給へるなり。
16蓋妻よ、汝爭でか能く夫を救ふべきや否やを知らん、又夫よ、汝爭でか能く妻を救ふべきや否やを知らん。
17唯主が面々に分配し給ひし儘に、神が面々を召し給ひし儘に步むべし、凡ての敎會に於て我が敎ふる所斯の如し。
18人割禮ありて召されたらんか、割禮を匿む事勿れ、人割禮なくして召されたらんか、割禮を受くる事勿れ、
19效あるは割禮に非ず、又無割禮に非ず、神の掟を守る事是なり。
20各我が召されし時の身分に止るべし。
21汝奴隷にして召されたらんか、之を思ひ煩ふ事勿れ、假令自由の身となる事を得るも、一層利用せよ。
22蓋奴隷にして主に召されたる者は主に於ては自由の身となりし者、同じく自由の身にして召されたる者はキリストの奴隷たるなり。
23汝等は價を以て買はれたり、人の奴隷となる事勿れ。
24兄弟等よ、各召されたる儘に、神に在りて之に止るべし。
25童貞女に就きては、我主の命を受けざれども、主より慈悲を蒙りたる者として、忠實ならん爲に意見を與へんとす。
26然れば目前の困難の爲には我之を善しと思ふ。其は其儘なるは人に取りて善ければなり。
27汝妻に繫がれたるか、釋かるる事を求むる勿れ、妻に絆されざるか、妻を求むる事勿れ。
28假令汝妻を娶るも罪とならず、童貞女嫁するも亦罪とならず、但斯る人は肉身上困難を受けん、我は汝等の之に遇ふことを惜む。
29兄弟等よ、我が言へるは是なり、時は縮まりぬ、然れば妻を有てる人も有たざるが如く、
30泣く人は泣かざるが如く、喜ぶ人は喜ばざるが如く、買ふ人は持たざるが如く、
31此世を利用する人は利用せざるが如くになるべき外なし、其は此世の態は過行くものなればなり。
32斯て我汝等の思ひ煩はざらんことを望む。妻なき人は、如何にして主を喜ばしめんかと、主の事を思ひ煩ふに、
33妻と共に居る人は、如何にして妻を喜ばしめんかと、世の事を思ひ煩ひて心分るるなり。
34婚姻せざる女と童貞女とは、身心共に聖ならん爲に主の事を思ひ、婚姻したる女は、如何にして夫を喜ばしめんかと、世の事を思ふなり。
35抑我が之を言へるは、汝等に益あらんが爲にして、汝等を罠に懸けんとするに非ず、寧汝等をして貞潔に進ましめ、餘念なく主に奉侍する事を得しめん爲なり。
36人ありて若我女の童貞女の年過ぎたるを辱しとし、然せざるを得ずと思はば、其望む所を行へ、女婚姻するも罪を犯すには非ず。
37然れど人ありて、心に堅く決する所あり、必要にも迫られず、我意の儘に事を行ふ權力ありて、心の中に女を童貞女にして保つを善しと定めたらん時に、然するは善き事なり。
38然れば己が童貞女に婚姻を結ばしむる人も善き事を爲し、結ばしめざる人も更に善き事を爲すなり。
39婦は夫の活ける間は繫がるれども、夫永眠すれば自由なり、宜しく望の人に嫁ぐべし、唯主に於て爲すべきのみ。
40然れど我が意見に從ひて若其儘に止らば、福は一層なるべし、我も神の靈を有し奉る思ふなり。
1偶像の供物に就きては、我等皆知識ある事を知る。知識は驕らすれども愛は德を建つ。
2若人ありて何をか知れりと思はば、其は未だ如何に知るべきかを知らざる者なり、
3人若神を愛し奉らば是ぞ神に知たるものなる。
4偶像の供物を食する事に就きては、偶像の世に何物にも非ざる事、又一の外に神あらざる事、我等之を知る。
5所謂神々は天にも地にも在りて、多くの神多くの主あるが如くなれども、
6我等には父にて在す神唯一あるのみ、萬物彼に由りて生り、我等も亦彼の爲なり。又獨の主イエズス、キリストあるのみ、萬物之に由りて生り、我等も之に由る。
7然れども知識は各自に之あるに非ず、或人々は、今に至るも偶像を物めかしく思ひて、之が供物として物を食すれば、其良心は弱きものなるが故に、之に由りて汚さるるなり。
8然れど食物は神の御前に於て我等を引立つるものに非ず、蓋食するも優る事なく、食せざるも*くる事なかるべし。
9但し汝等の其自由が、弱き人を躓かせざる樣注意せよ。
10蓋人若知識ある者が偶像の堂に於て食卓に就けるを見ば、其良心弱きによりて、己も誘はれて偶像の供物を食するに至るべきに非ずや。
11斯てキリストの死して贖ひ給ひし弱き兄弟は、汝の知識の爲に亡ぶべし。
12汝等が斯く兄弟に罪を犯して、其弱き良心を傷つくるは、是キリストに對し奉りて罪を犯すなり。
13故に若食物我兄弟を躓かするならば、我は兄弟を躓かせざらん爲に、何時までも肉を食せじ。
1我は自由の身ならずや、使徒ならずや、我主イエズス、キリストを見奉りしに非ずや、汝等が主に在るは、我業ならずや。
2我假令他の人に取りては使徒に非ずとするも、汝等には使徒なり、其は汝等は主に於て我使徒職の印章なればなり。
3我に問ふ人々に對する我答弁は其なり。
4然て我等は飲食する權なきか、
5他の使徒等、主の兄弟等及びケファの如く、姉妹なる婦を携ふる權なきか、
6又唯我一人とバルナバとのみ勞働せざる權なきか。
7誰か自ら費用を弁じて軍に出づる者あらんや、誰か葡萄園を植ゑて其果を食せざる者あらんや、誰か群を牧して群の乳を飲まざる者あらんや。
8我豈人間の通例に由りてのみ斯る事を言はんや、律法も斯く云ふに非ずや。
9卽ちモイゼの律法に錄して、「汝穀物を踏碾す牛の口を結ぶ事勿れ」、とあり、神は牛の爲に慮り給へるか、
10之を曰へるは實に我等の爲なるか、然り我等の爲に錄されたるなり。蓋耕す者は希望を以て耕し、穀物を踏碾す者も其果を得るの希望を以てすべきなり。
11汝等の中に靈的の物を蒔きたる我等なれば、汝等の肉的の物を刈取るとも、豈大事ならんや。
12他の人汝等の上に其權を有するに、我等何を以てか一層然らざらんや。然れども我等は此權を利用せずして、聊もキリストの福音を妨げざらん爲に、何事をも忍ぶなり。
13汝等知らずや、聖職を營む人々は[聖]殿の物を食し、又祭壇に事ふる人々は祭壇の分配に與る。
14斯の如く、主も亦福音を宣ぶる人々が福音に由りて生活する事を定め給ひしなり。
15我斯る事を一も利用せざりしに、而も之を書送るは、斯の如く爲られんとには非ず、其は此名譽の點を人に奪はるるよりは、寧死するこそ我に取りて善ければなり。
16蓋福音を宣ぶるも、之を以て名譽とするに非ず、我は其必要に迫れるなり。福音を宣傳へざらんは、我に取りて禍なればなり。
17卽ち快く之を爲せば報を得、心ならず之を爲すも、其務は我に委ねられたるなり。
18然らば我報は如何なるものぞ、其は福音を宣べて、人に費なく福音を得させ、福音に於る我權を利用せざる事是なり。
19蓋我は衆人に對して自由の身なれども、成るべく多くの人を儲けん爲に、身を以て衆人の奴隷となせり。
20ユデア人を儲けん爲には、ユデア人に對してユデア人の如くに成り、
21律法の下に在る人々を儲けん爲には、己律法の下に在ざれども、律法の下にある人々に對して律法の下に在が如くに成り、律法なき人々を儲けん爲には、己は神の律法なきに非ずしてキリストの律法の下に在ども、律法なき人々に對して律法なき者の如くに成り、
22弱き人々を儲けん爲には、弱き者に對して弱き者と成り、如何にもして數人を救はん爲には、衆人に對して如何なる者にも成れり。
23我が如何なる事をも福音の爲にするは、其分に與らんとてなり。
24汝等知らずや、競走の場を走る人は悉く走ると雖も、賞を受くるは一人のみ、汝等受け得べき樣に走れ。
25總て勝負を爭ふ人は萬事を節へ愼む、而も彼等は朽つる冠を得んとするに、我等は朽ちざる冠を得んとす。
26故に我が走るは目的なきが如くには非ず、我が戰ふは空を擊つが如くには非ず、
27而も我わが體を打ちて之を奴隷たらしむ、是は他人を敎へて自ら棄てられん事を懼るればなり。
1兄弟等よ我汝等の之を知らざるを好まず、卽ち我等の祖先は皆曾て雲の下に在り、皆海を過り、
2皆モイゼに屬きて雲と海とを以て洗せられ、
3皆同じ靈的食物を食し、
4皆同じ靈的飲料を飲めり。蓋彼等に隨ひつつありし靈的盤石より飲み居りしが、其盤石は卽ちキリストなりき。
5然れども彼等の多くは神の御旨に適はず、荒野にて斃れたり。
6是等の事は我等に於る前兆にして、彼等が貪りし如く我等が惡事を貪らざらん爲なり。
7汝等は又、彼等の中なる或人々の如く偶像崇拜者となる事勿れ、錄して、「民は坐して飲食し、立ちて樂しめり」、とあるが如し。
8又彼等の中に私通する人々ありて、死する者一日に二萬三千人に及びしが、我等は彼等の如く私通すべからず。
9又彼等の中にキリストを試むる人々ありて、蛇に亡ぼされしが、我等は彼等の如くキリストを試むべからず。
10又彼等の中に呟く人々ありて、亡ぼす者に亡ぼされしが、汝等は彼等の如く呟くべからず。
11是等の事は皆前兆として彼等に起りつつありしが、其錄されたるは、世の末が身に及べる我等の誡とならん爲なり。
12然れば自ら立てりと思ふ人は倒れじと注意すべし。
13汝等に係る試みは人の常なるもの耳、神は眞實にて在せば、汝等の力以上に試みらるる事を許し給はず、却て堪ふることを得させん爲に、試と共に勝つべき方法をも賜ふべし。
14然れば我至愛なる者よ、偶像崇拜を避けよ。
15我は智者に對する心にて語れば、汝等自ら我が言ふ所を判斷せよ。
16我等が祝する祝聖の杯は、キリストの御血を相共に授かるの義に非ずや。又我等が擘く所の麪は、相共に主の御體に與るの義に非ずや。
17蓋總て一の麪を授かる我等は、多人數なりと雖も、一の麪一の體なり。
18肉に由れるイスラエル人を看よ、犧牲を食する人々は、祭壇の分配に與るに非ずや。
19然らば何事ぞ、偶像に獻げられし犧牲は何物かなり、偶像は何物かなり、と我は言へるか、(然らず)。
20然れども異邦人の獻ぐる犧牲は、神に獻ぐるに非ずして惡鬼に獻ぐるなり、我汝等が惡鬼の友となる事を禁ず。汝等主の杯と惡鬼の杯とを飲む事能はず、
21主の祭壇と惡鬼の祭壇とに與る事能はざるなり。
22我等は主の妬を惹起こさんとするか、主よりも强き者なるか。何事も我に可なりと雖も、皆益あるには非ず、
23何事も我に可なりと雖も、皆德を立つるには非ず、
24誰も己が爲に謀らずして人の爲を求むべし。
25凡肉屋にて賣る物は、良心の爲に何事をも問はずして食せよ、
26蓋地及び之に滿てる物は主の物なり。
27汝等若不信者の中より招かれ、諾して趣く事あらば、供せらるる一切の物を、良心の爲に何事をも問はずして食せよ。
28人ありて是偶像に獻げられたる物なりと云はば、汝等之を告げたる人に對し、また良心に對して之を食する勿れ。
29我が所謂る良心は汝のには非ずして其人の良心なり。蓋何爲ぞ人の良心に由りて我自由を是非せらるるや。
30若我感謝して食せば、何爲ぞ我が感謝する所の物に就きて罵らるるや。
31然れば汝等食ふも飲むも又何事を爲すも、總て神の光榮の爲にせよ。
32汝等ユデア人にも、異邦人にも、神の敎會にも、躓かするものとなる事勿れ。
33猶我が己の利益となる事を求めず、多數の人の救はれん爲に其有益なる事を求めて、萬事に其心を得んとするが如くせよ。
1我も自らキリストに倣へる如く、汝等我に倣へ。
2兄弟等よ、我汝等が何事に於ても我を記憶し、汝等に傳へし如く我敎を守るを賞す。
3然るに我汝等の之を知らん事を欲す、卽ち凡ての男の頭はキリスト、女の頭は男、キリストの頭は神なり。
4總て男は頭に物を被りて祈祷し預言すれば其頭を辱め、
5總て女は頭に物を被らずして祈祷し預言すれば却て其頭を辱む、是剃髮せるに等しければなり。
6蓋女もし物を被らずば髮を剪るべし、然れど髮を剪り或は剃る事を女に取りて耻とせば、頭に物を被るべし。
7男は神の像にして又光榮なれば物を被るべきに非ず、然れど女は男の光榮なり、
8是男は女よりに非ずして女は男よりせり、
9男は女の爲に造られずして、女は男の爲に造られたればなり。
10此故に女は天使等に對して、[戴ける]權利[の徵]を頭に有つべきなり。
11然りながら主に在りては、男なくしては女あらず、女なくしては男あらざるなり、
12蓋女が男よりせし如く、男も亦女を以て生り、而して一切は神より出づ。
13汝等自ら判斷せよ、物を被らずして神に祈祷する事、女に取りて相應しからんや。
14自然其物も亦敎ふるに非ずや。卽ち男髮を起つれば身に取りて耻なれども、
15女の髮を起つるは身の譽なり、是女は被物として髮を與へられたればなり。
16假令之を抗弁ふと見ゆる人はありとも、我等にも神の諸敎會にも斯る慣例は存せざるなり。
17我之を命じて汝等を賞せず、其は集りて善く成らず、却て惡しく成ればなり。
18先汝等が敎會として集る時分裂ありと聞けば、我幾分か之を信ず。
19蓋汝等の中に是認せられたる人の顯れん爲には、異端さへ起るべき筈なるをや。
20然れば汝等が一に集る時は、最早主の晚餐を食せんとには非ず。
21蓋各前に己が晚餐を食するが故に、飢ゑたる人あれば酩酊したる人もあり。
22飲食する爲には自宅にあるに非ずや、或は神の敎會を輕んじて乏しき人を辱めんとするか、汝等に何をか謂ふべき、汝等を賞せんか、我之をば賞せざるなり。
23蓋我が主より承りて汝等にも傳へし所にては、主イエズス付され給へる夜に當りて麪を取り、
24謝して之を擘き、然て曰く、汝等取りて食せよ、是は汝等の爲に付さるべき我體なり、汝等我記念として之を爲せ、と。
25晚餐の後同じく杯を取りて曰く、此杯は我血に於る新約なり、飲む度每に汝等我記念として之を爲せ、と。
26蓋主の來り給ふまで、汝等此麪を食し又杯を飲む度每に、主の死を示すなり。
27故に誰にもあれ相應しからずして此麪を食し、或は主の杯を飲まん人は、主の御體と御血とを犯さん。
28然れば人は己を試し、然して後彼麪を食し杯を飲むべし。
29其は相應しからずして飲食する人は、主の御體を弁へず、己が宣告を飲食する者なればなり。
30此故に汝等の中には、病める者弱れる者多く、且死せる者多し。
31我等もし自ら審かば審かるる事なからん、
32審かるるも、其は此世と共に罪せられざらん爲に主より懲され奉るなり。
33然れば我兄弟等よ、食せんとて集る時、互に待合はせよ。
34飢たる人あらば、汝等が集りて審かるる事を免れん爲に、自宅にて食事すべし。其他の事は我至らん時之を定めん。
1兄弟等よ、靈的[賜]に關しては、我汝等の知らざるを好まず。
2汝等異邦人たりし時、誘はるる儘に、言はぬ偶像に趣き居たりし次第は、汝等の知れる所なり。
3故に我汝等に示さん、誰も神の靈に由りて語るに、イエズス詛はれよと言ふ人なく、又誰も聖靈に由らずして、イエズスを主にて在すと言を得ず。
4偖て賜の分配は異なれども靈は同一にて在す。
5聖役の分配も亦異なれども主は同一にて在す。
6作業の分配も亦異なれども、總ての人の中に總ての事を行ひ給ふ神は同一にて在す。
7然るに靈の顯れ給事を人々に賜はるは公益の爲にして、
8一人は靈を以て知識の詞を賜はり、
9一人は同じ靈に從ひて學識の詞を賜はり、一人は同じ靈に由りて信仰を賜はり、一人は同じ靈に由りて病を醫す惠を賜はり、
10一人は奇蹟を行ひ、一人は預言し、一人は精神を識別し、一人は他國語を語り、一人は他國語を通譯する事を賜はるなり。
11然れども此等を悉く行ひ給ふものは同一の靈に在して、思召の儘に面々に分與へ給ふなり。
12是身は一なるに其肢は多く、身に於る一切の肢は多しと雖も一の身なるが如く、キリストも亦然るなり。
13卽ち我等は、或はユデア人、或はギリシア人、或は奴隷、或は自由の身なるも、一體と成らん爲に悉く一の靈に於て洗せられ、皆一の靈に飲飽かしめられたり。
14蓋身は一の肢に非ずして多くの肢なり、
15足もし我は手に非ざる故に身に屬せずと云はば、果して身に屬せざるか、
16耳もし我は目に非ざる故に身に屬せずと云はば、果して身に屬せざるか、
17若身を擧りて目ならば聞く所は何處ぞ、身を擧りて聞く所ならば嗅ぐ所は何處ぞ、
18然れば神は、思召の儘に肢を其々身に置き給へるなり。
19皆一の肢ならば、身は何處にか在るべき、
20今肢は多しと雖も、身は一なり。
21目手に向ひて、我汝の助を要せずと云ひ、頭も亦兩足に向ひて、汝等我に必要ならずと云ふ能はず。
22身の中に最も弱しと見ゆる肢は却て必要なり。
23又身の中に於て我等が殊に卑しと思へる肢は、之に物を纏ひて更に光榮を添へ、又醜き部分は一層之を鄭重にすれども、
24尊き部分に至りては却て何物をも要せず、神は身體を調和し給ひて、*乏せる所には尙豐に榮耀を加へ給へり。
25是身の中に分裂ある事なく、肢の相一致し扶合はんが爲にして、
26一の肢苦しめば諸の肢共に苦しみ、一の肢尊ばるれば諸の肢共に喜ぶなり。
27今汝等はキリストの身にして、其幾分の肢なり。
28斯て神は敎會に於て或人々を置き給ふに、第一に使徒等、第二に預言者、第三に敎師、次に奇蹟[を行ふ人]、其次に病を醫す賜[を得たる人]、施[を爲す人]、司る者、他國語を語る者、他國語を通譯する者を置き給へり。
29擧りて使徒なるか、擧りて預言者なるか、擧りて敎師なるか、
30擧りて奇蹟を行ふ者なるか、擧りて病を醫す惠を有する者なるか、擧りて他國語を語る者なるか、擧りて通譯する者なるか、
31汝等は最も善き賜を慕へ、我は尙勝たる道を示さん。
1我假令人間と天使との言語を語るとも、愛なければ鳴る鐘、響く鐃鈸の如くなりたるのみ。
2我假令預言する事を得て、一切の奧義一切の學科を知り、又假令山を移す程なる一切の信仰を有すとも、愛なければ何物にも非ず。
3我假令わが財産を悉く(貧者の食物として)分與へ、又我身を燒かるる爲に付すとも、愛なければ聊も我に益ある事なし。
4愛は堪忍し、情あり、愛は妬まず、自慢せず、驕らず、
5非禮を爲さず、己の爲に謀らず、怒らず、惡を負はせず、
6不義を喜ばずして眞實を喜び、
7何事をも包み、何事をも信じ、何事をも希望し、何事をも怺ふるなり。
8預言は廢り、言語は止み、知識は亡ぶべきも、愛は何時も絕ゆる事なし。
9蓋我等の知る事は不完全に、預言する事は不完全なれども、
10完全なるところ來らば不完全なるところは廢らん。
11我が小兒たりし時は、語る事も小兒の如く、判斷する事も小兒の如く、考ふる事も小兒の如くなりしかど、大人となりては小兒の事を棄てたり。
12今我等の見るは鏡を以てして朧なれども、彼時には顏と顏とを合せ、今我が知る所は不完全なれども、彼時には我が知らるるが如くに知るべし。
13今存するものは信、望、愛此三なれども、就中最大いなるものは愛なり。
1汝等愛を求め、且靈的賜、殊に預言せん事を冀へ。
2蓋他國語を語る者は人に語らずして神に語る者なり、其は靈によりて奧義を語るも、聞取る人なければなり。
3然れども預言する者は人に語りて其德を立て、且之を勸め、之を慰む。
4他國語を語る者は己が德を立つれども、預言する者は神の敎會の德を立つ。
5我は汝等が皆他國語を語る事を欲すれども、預言をする事に於ては尙切なり。其は他國語を語る人、敎會の德を立てん爲に通譯するに非ざれば、預言する人は之に優ればなり。
6然れば兄弟等よ、我今汝等に至りて他國語を語るとも、もし默示、或は知識、或は預言、或は敎訓を以て語るに非ずば、汝等に何の益する所かあらん。
7魂なくして音を發するものすら、或は笛、或は琴、若異なる音を發するに非ずば、爭でか其吹かれ、或は彈かるる所の何なるを知るべき。
8喇叭もし定まりなき音を發せば、誰か戰闘の準備を爲さんや。
9斯の如く、汝等も言語を以て明かなる談話を爲すに非ずば、爭でか其言ふ所を知らるべき、空に向ひて語る者ならんのみ。
10世に言語の類然ばかり夥しけれども、一として意味あらざるはなし。
11我若音の意味を知らずば、我が語れる人に夷となり、語る者も我に夷とならん。
12斯の如く、汝等も靈的賜を冀ふ者なれば、敎會の德を立てん爲に豐ならん事を求めよ。
13故に他國語を語る人は、亦通譯する事をも祈るべし。
14蓋我他國語を以て祈る時は、靈は祈ると雖も智惠は好果を得ざるなり。
15然らば之を如何にすべき、我は靈を以て祈り、又智惠を以て祈らん。靈を以て謳ひ又智惠を以て謳はん。
16蓋汝若靈[のみ]を以て祝せば、常人を代表する人、如何ぞ汝の祝言に答へてアメンと唱へんや、其は汝の何を言へるかを知らざればなり。
17蓋汝が感謝するは善き事なれども、他の人は德を立てざるなり。
18我は汝等一同よりも多く他國語を語る事を我が神に感謝し奉る。
19然れど敎會に於て、他國語にて一萬の言を語るよりは、他の人をも敎へん爲に、我が智惠を以て五の言を語る事を好む。
20兄弟等よ、智惠に於ては汝等子兒となる事勿れ。惡心に於ては子兒たるべく、智惠に於ては大人たるべし。
21律法に錄して、「主曰く、我此民に向ひて、異なる言語、異なる唇にて語らん、然も我に聽かじ」、とあり。
22然れば他國語の徵となるは、信者の爲に非ずして不信者の爲なり、預言は却て不信者の爲に非ずして信者の爲なり。
23故に若敎會擧りて一處に集れる時、皆他國語にて語りなば、常人又は不信者の入來りて、汝等を狂へる者と謂はざらんや。
24然れど若皆預言せば、入來る不信者常人は、一同に對して屈服し、一同の爲に是非せられ、
25心の祕密を暴露せられ、然平伏て神を禮拜し奉り、神實に汝等の中に在すと宣言するならん。
26兄弟等よ、然らば之を如何にすべき。汝等が集る時は、各聖歌あり、敎訓あり、默示あり、他國語あり、通譯する事あり、一切の事皆德を立てしめん爲にせらるべし。
27他國語を語る人あらば、二人、多くとも三人、順次に語りて、一人通譯し、
28若通譯する人なくば、敎會の中に在りては、沈默して己と神とに語るべし。
29預言者は二人或は三人言ひて、他の人は判斷すべし。
30若坐せる者にして默示を蒙る人あらば、前の者は默すべし。
31其は人皆學びて勸を受くべく、汝等皆順次に預言する事を得ればなり。
32預言者の靈は預言者に從ふ、
33蓋神は爭の神に非ずして平和の神にて在す。聖徒の諸敎會に於る如く、
34婦人は敎會に於て默すべし。律法にも云へる如く、彼等は語るを許されずして從ふべき者なり。
35若何事をか學ばんと欲せば、自宅にて夫に問ふべし、其は敎會に於て語るは婦人に取りて耻づべき事なればなり。
36神の御言は汝等より出でしものなるか、或は汝等にのみ至れるものなるか、
37人若或は預言者、或は靈に感じたるものと思はれなば、我が汝等に書送るは主の命なる事を知るべし。
38若し知らずば、其人自らも知られざらん。
39然れば兄弟等よ、汝等預言せんことを冀ひて、他國語を語るを禁ずる勿れ。
40然れど一切の事正しく且秩序を守りて行はるべきなり。
1兄弟等よ、我が既に傳へし所の福音を今更に汝等に告ぐ、汝等は曩に之を受けて尙之に據りて立てり、
2若徒に信じたるに非ずして、我が傳へし儘に之を守らば、汝等は之によりて救はるるなり。
3卽ちわが第一に汝等に傳へしは、我自らも受けし事にて、キリストが聖書に應じて我等の罪の爲に死し給ひし事、
4葬られ給ひし事、聖書に應じて三日目に復活し給ひし事、
5ケファに顯れ給ひ、其後又十二使徒に顯れ給ひし事、是なり。
6次に五百人以上の兄弟に一度に顯れ給ひしが、其中には永眠したる者あれども、今尙生存ふる者多し。
7次にヤコボに顯れ、次に凡ての使徒に顯れ、
8最終には月足らぬ者の如き我にも顯れ給へり。
9蓋我は神の敎會を迫害せし者なれば、使徒中の最も小き者にして、使徒と呼ばるるに足らず。
10然るに我が今の如くなるは、是神の恩寵に由れるなり、斯て其恩寵は我に於て空しからず、我は彼等一同よりも多く働けり。然れども是我に非ず、神の恩寵我と共に爲る所なり。
11卽ち我にまれ彼等にまれ、我等は斯の如く宣傳へ、汝等も亦斯の如く信じたるなり。
12然てキリスト死者の中より復活し給へりと宣傳ふるに對して、死者の復活する事なしと云ふ人々、汝等の中に在るは何ぞや。
13死者の復活する事なくば、キリストも復活し給はざるべし。
14若キリスト復活し給はざりしならば、我等の宣敎は空しく、汝等の信仰も亦空しく、
15而も我等は神の僞證人と成るべし。其は死者にして復活せざる者ならば、キリストを復活せしめ給はざりしものを、我等は神に反して之を復活せしめ給へりと證したればなり。
16蓋死者にして復活する事なければ、キリストも復活し給ひし事なし。
17キリスト復活し給ひし事なければ、汝等の信仰は空し、其は汝等尙罪に在ればなり。
18然らばキリストに於て永眠したる人々も亡びたるならん。
19我等がキリストに於る希望若此世のみならば、我等は凡ての人よりも憫然なる者なり。
20然れど現に、キリストは永眠せる人々の初穗として、死者の中より復活し給ひしなり。
21蓋死は人に由りて來り、死者の復活も亦人に由りて來れり。
22一切の人アダンに於て死するが如く、一切の人亦キリストに於て復活すべし。
23但各其順序に從ひて、初穗はキリスト、次は其降臨の時キリストのものたる人々、
24次は終にして、キリスト父にて在す神に國を付し給ひて、一切の權威、權能、權力を亡ぼし給ひたらん時なり。
25彼凡ての敵を御足の下に置き給ふ迄は、王たらざるを得ざるなり。
26最終に亡ぼさるべき敵は死なり、是神はキリストの御足の下に萬物を服せしめ給ひたればなり。
27萬物之に服せりと曰へば、萬物を服せしめ給へるものは其數に入らざる事疑なし。
28萬物己に服するに至らば、御子自らも亦、己に萬物を服せしめ給ひしものに服し給ふべし、是神は萬物に於て萬事となり給はん爲なり。
29若然らずして、死者全く復活する事なくば、死者の代に洗せらるる人々は何とかすべき、彼等が死者の代に洗せらるるは何故ぞ。
30又我等も時々刻々危險に遇へるは何の爲ぞ。兄弟等よ、我は我主イエズス、キリストに於て、汝等に就きて我が[受くべき]名譽を指して誓言す、
31我は日々死の危險に遇ふなり。
32我唯人の如くにしてエフェゾに獸と闘ひしならば、我に何の益かあらん。死者果して復活せずば、我等いざ飲食せん、其は明日死ぬべければなり。
33汝等欺かるる事勿れ、惡き交際は善き風俗を腐敗せしむ。
34汝等誠實に警戒して罪を犯す事勿れ。我が言ふ所汝等の面目を傷くれども、汝等の中に神を知らざる者あるなり。
35然れども人或は云はん、死者如何にして復活すべきか、如何なる體を以て來るべきか、と。
36愚なる者よ、汝の蒔くものは先死なざれば活くること無し、
37又其蒔くは將來あるべき體を蒔くに非ず、假令ば麥等の凡の種粒のみ。
38斯て神は思召す儘に之に體を與へ、各の種に固有の體を與へ給ふ。
39凡ての肉は同じ肉に非ず、人肉あり、獸肉あり、鳥肉あり、魚肉ありて各相異なり。
40又天體あり、地上の體あり、然れど天上のものと地上のものとの光澤は相異なり。
41日の輝も、月の輝も、星の輝も異にして、星と星とは輝によりて相異なり。
42死者の復活も亦然り。[身體は]腐敗に於て蒔かれ、不朽を以て復活せん、
43卑賤に於て蒔かれ、光榮を以て復活せん、虛弱に於て蒔かれ、力を以て復活せん、
44動物的身體に蒔かれ、靈的身體に復活せん。動物的身體あれば、靈的身體もあり、錄して、
45「第一の人アダンは活ける魂とせられたり」、とあるが如く、最後のアダンは活かす靈とせられたり。
46始よりあるは靈的のものに非ず、動物的のものにして、靈的のものは後に在り。
47第一の人は土より出でて土に屬し、第二の人は天より出でて天に屬す。
48土に屬する人々は土に屬せる彼のものの如く、天に屬する人々は天に屬せる彼のものの如し。
49然れば我等は土に屬するものの形を帶びし如く、天に屬するものの形をも帶ぶべし。
50兄弟等よ、我は言はん、血肉は神の國を嗣ぐ能はず、又腐敗は不朽を得べからず、と。
51看よ、我汝等に奧義を語らん、我等は皆永眠すべきに非ざれども、皆變化すべき者なり。
52卽ち倐忽の間、瞬く間、終の喇叭の鳴らん時、蓋喇叭は鳴るべく、死者は不朽の者に復活すべく、我等も變化すべきなり。
53其は此腐敗すべきもの不朽を帶び、此死すべきもの不死を帶ぶべければなり。
54此死すべきもの不死を帶びたらん時、錄されたる言は成就せん、[曰く]、「死は勝利に呑まれたり」、
55「死よ、汝の勝利は何處にかある、死よ、汝の針は何處にかある」と。
56而して死の針は罪なり、罪の力は律法なり、
57我主イエズス、キリストを以て我等に勝利を賜ひたる神に感謝し奉る。
58然れば我が愛する兄弟等よ、確固として動かず、汝等の勞働が主に於て空しからざる事を覺りて、絕えず力を主の業に盡せ。
1聖徒等の爲にする據金に就きては、我がガラチアの諸敎會に命ぜし如く、汝等も亦然せよ。
2我が汝等の許に至りて後據金せざらん爲に、一週間の初の日每に、汝等各成功に應じて自宅に貯金すべし。
3斯て我汝等の許に至りなば、添書して汝等の選まん人々を遣はし、汝等の惠をエルザレムに齎さしめん。
4若我も行くべき價値あらば、彼等は我と共に行くべきなり。
5我はマケドニアを通らんとする故に、マケドニアを通りて汝等の許に至り、
6多くは汝等と共に留り、或は冬を過す事もあらん。是何處に行くも汝等より送られん爲なり。
7其は我路の次に汝等を見る事を好まず、主の許し給はば暫く汝等の中に留らん事を希望すればなり。
8ペンテコステまではエフェゾに留らんとす、
9其は廣くして且貢獻あるべき門、我前に開け、又敵對する者多ければなり。
10チモテオ汝等の許に至らば、注意して懼るる所なからしめよ。彼は我と齊しく主の業を行へる者なればなり。
11故に誰も彼を蔑にせず、途中を安らかに送りて我方に來る事を得しめよ、蓋我は彼と兄弟等とを待てるなり。
12兄弟アポルロの事を告げんに、我篤く彼が兄弟等と共に汝等の許に至らん事を願ひたれど、彼今は行く事を肯ぜず、機よき時を以て行くならん。
13汝等警戒して固く信仰に立ち、雄々しく擧動ひ、且堅固なれ。
14汝等の業悉く愛を以て行はれよかし。
15兄弟等よ、我汝等に希ふ、ステファナの家はアカヤ州の初穗にして、聖徒等の世話に身を委ねたるは汝等の知る所なれば、
16汝等も斯の如き人々及び總て協力して働ける人々に服せよ。
17我ステファナ、フォルツナト、及びアカイコの此處に居るを喜ぶ、其は汝等の不在を補ひ、
18卽ち我と汝等との精神を安んぜしめたればなり。然れば汝等斯の如き人物を重んぜよ。
19[小]アジアの諸敎會汝等に宜しくと言へり。アクィラとプリシルラ及び其家の敎會は、主に於て懇に宜しくと言へり、(我彼等の家に宿る)。
20凡ての兄弟汝等に宜しくと云へり。聖なる接吻を以て互に宜しく傳へよ。
21我パウロ自筆を以て宜しく言ふ。
22人若我主イエズス、キリストを愛せずば排斥せられよ。我主來り給ふ。
23願はくは我主イエズス、キリストの恩寵汝等と共に在らん事を。
24我愛はキリスト、イエズスに於て汝等一同と共に在るなり、アメン。