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イソップ童話集/獅子と兎と鹿

提供:Wikisource
たいへんおなかのすいた一ぴきの獅子が、何かたべものはないかとさがしまわっているうちに、ふと、ある穴の中に、ぐっすりねこんでいるうさぎをみつけました。
しめたとおもって、まさにつかみかかろうとしたとき、すぐそばを、わかい見事な牡鹿が小走に通っていきました。すると獅子は、すこしでも大きなえものの方がいいと思って、兎をそのままにして、大いそぎで、牡鹿のあとを追いかけました。その音にめをさましたうさぎは、びっくりして、とおくへにげ出してしまいました。
獅子は、ながいあいだ牡鹿を追っかけましたが、おなかがすいているので、おもうように走れず、とうとう、見失ってしまいました。
「しかたがない、ちいさい兎でがまんしよう。」
こうおもって、ヘトヘトになって、さっきの穴のところへかえってみますと、穴の中には、ひからびた大根のしっぽが、ちらばっているだけでした。