イソップ童話集/狐と樵夫
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- 一ぴきの狐が、狩人に追われて、一生けんめい、にげて来ると、樵夫が木を伐っているところへ出ました。狐はあえぎながら、
- 「おねがいですから、たすけて下さい。」
- と、たのみますと、樵夫は、
- 「よしよし、あの中にかくれるがいい。」
- と、云って、すぐそばの小舎をおしえてくれたので、狐は大いそぎで、その中へとびこみました。
- 間もなく狩人が追いついて来て、
- 「樵夫さん、ここへ狐がにげて来なかったかね。」
- と、たずねますと、樵夫は、
- 「いいや、来なかったよ。」
- と、口では云いながら、そっと指を出して、小舎を示しました。
- けれども、狩人はいそいでいたので、樵夫のその合図には気がつかずに、そのまま先へ走っていきました。
- 狩人が見えなくなると、狐はそっと小舎から出て来て、だまって立ち去ろうとしました。樵夫はおこって、
- 「この恩知らずめ、おまえは、おれのおかげで、命びろいをしたんじゃないか。それだのに一言のれいも云わずに立ち去るということがあるか。」
- と、なじりますと、狐は
- 「なるほど、あなたの言葉は私をたすけました。しかし、あなたの指は、もうすこしで私を殺すところでしたからね。」
- と、こたえて、すたすた行ってしまいましたとさ。