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イソップ童話集/ろばとこおろぎ

提供:Wikisource
こおろぎが、ころころとかわいいこえで、ないていますと、それをきいていたろばは、すっかりかんしんしてしまいました。
そして、
「よし、私もひとつあんないいこえをだすようになって、みんなをおどろかしてやろう。」
と、がらにもない考をだして、こおろぎのところへ、やって来ました。
「ねえ、こおろぎさん、あなたたちは、そんないいこえをだしているが、いったいまいにちどんなものをたべているんです。」
と、ききました。
こおろぎは、
「私たちは、ただくさばにたまるつゆを、すっているだけです。」
と、こたえました。
ろばは、それをきいて、
「さあ、しめた。もうすぐいいこえになって見せるぞ。」
と、おもいながら、それからは、まいにち、まいにち、くさばのつゆばかりすっていましたが、いいこえが、でるどころか、だんだんからだが、やせて来て、とうとう、ほねとかわばかりになって、しんでしまいましたとさ。