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イソップ童話集/はげあたまの騎士

提供:Wikisource
はげあたまの騎士がありました。
それをかくすために、いつも、かつらをかぶって居りました。そのかつらは、人の髪の毛で、たいへんうまく出来ているので、だれもかつらだなどと気のつく人はありませんでした。
あるとき、友だちと狩に出かけますと、にわかに大風がふいて来て、あっという間に、その騎士の帽子ばかりか、かつらまでいっしょに、とおくへふきとばしてしまいました。
あとは、つるつるのはげあたまです。みんなはどっと笑ってはやしたてました。
はげあたまの騎士は、まっかになって、はげあたまをかかえながらいいました。
「私のものでもない髪の毛が私のあたまからとんで行ったって、ちっともふしぎじゃないさ。あの髪の毛はほんとうのもち主―いっしょに生れたもち主さえもみすてたんじゃないか。」