「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明
胡錦濤中華人民共和国主席は、日本国政府の招待に応じ、2008年5月6日から10日まで国賓として日本国を公式訪問した。胡錦濤主席は、日本国滞在中、天皇陛下と会見した。また、福田康夫内閣総理大臣と会談を行い、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関し、多くの共通認識に達し、以下のとおり共同声明を発出した。
- 双方は、日中関係が両国のいずれにとっても最も重要な二国間関係の一つであり、今や日中両国が、アジア太平洋地域及び世界の平和、安定、発展に対し大きな影響力を有し、厳粛な責任を負っているとの認識で一致した。また、双方は、長期にわたる平和及び友好のための協力が日中両国にとって唯一の選択であるとの認識で一致した。双方は、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、また、日中両国の平和共存、世代友好、互恵協力、共同発展という崇高な目標を実現していくことを決意した。
- 双方は、1972年9月29日に発表された日中共同声明、1978年8月12日に署名された日中平和友好条約及び1998年11月26日に発表された日中共同宣言が、日中関係を安定的に発展させ、未来を切り開く政治的基礎であることを改めて表明し、三つの文書の諸原則を引き続き遵守することを確認した。また、双方は、2006年10月8日及び2007年4月11日の日中共同プレス発表にある共通認識を引き続き堅持し、全面的に実施することを確認した。
- 双方は、歴史を直視し、未来に向かい、日中「戦略的互恵関係」の新たな局面を絶えず切り開くことを決意し、将来にわたり、絶えず相互理解を深め、相互信頼を築き、互恵協力を拡大しつつ、日中関係を世界の潮流に沿って方向付け、アジア太平洋及び世界の良き未来を共に創り上げていくことを宣言した。
双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないことを確認した。双方は、互いの平和的な発展を支持することを改めて表明し、平和的な発展を堅持する日本と中国が、アジアや世界に大きなチャンスと利益をもたらすとの確信を共有した。
(1)日本側は、中国の改革開放以来の発展が日本を含む国際社会に大きな好機をもたらしていることを積極的に評価し、恒久の平和と共同の繁栄をもたらす世界の構築に貢献していくとの中国の決意に対する支持を表明した。
(2)中国側は、日本が、戦後60年余り、平和国家としての歩みを堅持し、平和的手段により世界の平和と安定に貢献してきていることを積極的に評価した。双方は、国際連合改革問題について対話と意思疎通を強化し、共通認識を増やすべく努力することで一致した。中国側は、日本の国際連合における地位と役割を重視し、日本が国際社会で一層大きな建設的役割を果たすことを望んでいる。
(3)双方は、協議及び交渉を通じて、両国間の問題を解決していくことを表明した。
- 台湾問題に関し、日本側は、日中共同声明において表明した立場を引き続き堅持する旨改めて表明した。
双方は、以下の五つの柱に沿って、対話と協力の枠組みを構築しつつ、協力していくことを決意した。
(1)政治的相互信頼の増進
双方は、政治及び安全保障分野における相互信頼を増進することが日中「戦略的互恵関係」構築に対し重要な意義を有することを確認するとともに、以下を決定した。
- 両国首脳の定期的相互訪問のメカニズムを構築し、原則として、毎年どちらか一方の首脳が他方の国を訪問することとし、国際会議の場も含め首脳会談を頻繁に行い、政府、議会及び政党間の交流並びに戦略的な対話のメカニズムを強化し、二国間関係、それぞれの国の国内外の政策及び国際情勢についての意思疎通を強化し、その政策の透明性の向上に努める。
- 安全保障分野におけるハイレベル相互訪問を強化し、様々な対話及び交流を促進し、相互理解と信頼関係を一層強化していく。
- 国際社会が共に認める基本的かつ普遍的価値の一層の理解と追求のために緊密に協力するとともに、長い交流の中で互いに培い、共有してきた文化について改めて理解を深める。
(2)人的、文化的交流の促進及び国民の友好感情の増進
双方は、両国民、特に青少年の間の相互理解及び友好感情を絶えず増進することが、日中両国の世々代々にわたる友好と協力の基礎の強化に資することを確認するとともに、以下を決定した。
- 両国のメディア、友好都市、スポーツ、民間団体の間の交流を幅広く展開し、多種多様な文化交流及び知的交流を実施していく。
- 青少年交流を継続的に実施する。
(3)互恵協力の強化
双方は、世界経済に重要な影響力を有する日中両国が、世界経済の持続的成長に貢献していくため、以下のような協力に特に取り組んでいくことを決定した。
- エネルギー、環境分野における協力が、我々の子孫と国際社会に対する責務であるとの認識に基づき、この分野で特に重点的に協力を行っていく。
- 貿易、投資、情報通信技術、金融、食品・製品の安全、知的財産権保護、ビジネス環境、農林水産業、交通運輸・観光、水、医療等の幅広い分野での互恵協力を進め、共通利益を拡大していく。
- 日中ハイレベル経済対話を戦略的かつ実効的に活用していく。
- 共に努力して、東シナ海を平和・協力・友好の海とする。
(4)アジア太平洋への貢献
双方は、日中両国がアジア太平洋の重要な国として、この地域の諸問題において、緊密な意思疎通を維持し、協調と協力を強化していくことで一致するとともに、以下のような協力を重点的に展開することを決定した。
- 北東アジア地域の平和と安定の維持のために共に力を尽くし、六者会合のプロセスを共に推進する。また、双方は、日朝国交正常化が北東アジア地域の平和と安定にとって重要な意義を有しているとの認識を共有した。中国側は、日朝が諸懸案を解決し国交正常化を実現することを歓迎し、支持する。
- 開放性、透明性、包含性の三つの原則に基づき東アジアの地域協力を推進し、アジアの平和、繁栄、安定、開放の実現を共に推進する。
(5)グローバルな課題への貢献
双方は、日中両国が、21世紀の世界の平和と発展に対し、より大きな責任を担っており、重要な国際問題において協調を強化し、恒久の平和と共同の繁栄をもたらす世界の構築を共に推進していくことで一致するとともに、以下のような協力に取り組んでいくことを決定した。
- 「気候変動に関する国際連合枠組条約」の枠組みの下で、「共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力」原則に基づき、バリ行動計画に基づき2013年以降の実効的な気候変動の国際枠組みの構築に積極的に参加する。
- エネルギー安全保障、環境保護、貧困や感染症等のグローバルな問題は、双方が直面する共通の挑戦であり、双方は、戦略的に有効な協力を展開し、上述の問題の解決を推進するために然るべき貢献を共に行う。
福田康夫(署名)
胡錦濤(署名)
2008年5月7日、東京
この著作物は、日本国著作権法10条2項又は13条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同法10条2項及び13条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 憲法その他の法令
- 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
- 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
- 上記いずれかのものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの
- 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道
この著作物は、米国政府、又は他国の法律、命令、布告、又は勅令等(Edict of governmentも参照)であるため、ウィキメディアサーバの所在地である米国においてパブリックドメインの状態にあります。“Compendium of U.S. Copyright Office Practices”、第3版、2014年の第313.6(C)(2)条をご覧ください。このような文書には、“制定法、裁判の判決、行政の決定、国家の命令、又は類似する形式の政府の法令資料”が含まれます。
この著作物は 政府標準利用規約(第2.0版)に準拠したウェブサイトの規約に定める条件下で利用することができます。 政府標準利用規約(第 2.0 版)が適用されるコンテンツではクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際ライセンスと互換性がある旨明記されています。
この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際ライセンスのもとに利用を許諾されています。
あなたは以下の条件に従う場合に限り、自由に
- 共有 – 本作品を複製、頒布、展示、実演できます。
- 再構成 – 二次的著作物を作成できます。
あなたの従うべき条件は以下の通りです。
- 表示 – あなたは適切なクレジットを表示し、ライセンスへのリンクを提供し、変更があったらその旨を示さなければなりません。これらは合理的であればどのような方法で行っても構いませんが、許諾者があなたやあなたの利用行為を支持していると示唆するような方法は除きます。