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  • 「秋の虫の声、いづれとなき中に、松虫なむすぐれたるとて、中宮の、はるけき野辺を分けて、いとわざと尋ね取りつつ放たせたまへる、しるく鳴き伝ふるこそ少なかなれ。名には違ひて、命のほどはかなき虫にぞあるべき。 心にまかせて、人聞かぬ奥山、はるけき野の松原に、声惜しまぬも、いと隔て心ある虫になむありける。鈴虫は、心やすく、今めいたるこそらうたけれ」…
    20キロバイト (4,413 語) - 2022年12月1日 (木) 08:14
  • どに、日も暮れにけり。ひぐらしの声はなやかなるに、御前の撫子の夕映えを、一人のみ見たまふは、げにぞかひなかりける。 「つれづれとわが泣き暮らす夏の日を かことがましき虫の声かな」 蛍のいと多う飛び交ふも、「夕殿に蛍飛んで」と、例の、古事もかかる筋にのみ口馴れたまへり。 「夜を知る蛍を見ても悲しきは 時ぞともなき思ひなりけり」…
    30キロバイト (6,380 語) - 2022年12月1日 (木) 08:10
  • せて、かりそめの御しつらひしたり。水の心ばへなど、さる方にをかしくしなしたり。田舎家だつ柴垣して、前栽など心とめて植ゑたり。風涼しくて、そこはかとなき虫の声々聞こえ、蛍しげく飛びまがひて、をかしきほどなり。 人びと、渡殿より出でたる泉にのぞきゐて、酒呑む。主人も肴求むと、こゆるぎのいそぎありくほど、…
    66キロバイト (14,372 語) - 2022年12月1日 (木) 08:10
  • 高辛氏(こうしんし)の時代に、王宮にいる老婦人が久しく耳の疾(やまい)に罹って医師の治療を受けると、医師はその耳から大きな繭のごとき虫を取り出した。老婦人が去った後に、瓠(ひさご)の籬(かき)でかこって盤(ふた)をかぶせて置くと、虫は俄かに変じて犬となった。犬の毛皮には五色の文(あ…
    49キロバイト (10,507 語) - 2019年2月26日 (火) 15:16