裁判所法

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昭和22年法律第59号から転送)


法律第二百六十五号

裁判所法

裁判所構成法(明治二十三年法律第六号)の全部を改正する。

第一編 総則[編集]

(この法律の趣旨)

第一条
日本国憲法 に定める最高裁判所及び下級裁判所については、この法律の定めるところによる。

下級裁判所

第二条
  1. 下級裁判所は、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所とする。
  2. 下級裁判所の設立、廃止及び管轄区域は、別に法律でこれを定める。

(裁判所の権限)

第三条
  1. 裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。
  2. 前項の規定は、行政機関が前審として審判することを妨げない。
  3. この法律の規定は、刑事について、別に法律で陪審の制度を設けることを妨げない。

(上級審の裁判の拘束力)

第四条
上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する。

(裁判官)

第五条
  1. 最高裁判所の裁判官は、その長たる裁判官を最高裁判所長官とし、その他の裁判官を最高裁判所判事とする。
  2. 下級裁判所の裁判官は、高等裁判所の長たる裁判官を高等裁判所長官とし、その他の裁判官を判事、判事補及び簡易裁判所判事とする。
  3. 最高裁判所判事の員数は、十四人とし、下級裁判所の裁判官の員数は、別に法律でこれを定める。

第二編 最高裁判所[編集]

(所在地)

第六条
最高裁判所は、これを東京都に置く。

(裁判権)

第七条
最高裁判所は、左の事項について裁判権を有する。
一  上告
二  訴訟法において特に定める抗告

(その他の権限)

第八条
最高裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限を有する。

(大法廷・小法廷)

第九条
  1. 最高裁判所は、大法廷又は小法廷で審理及び裁判をする。
  2. 大法廷は、全員の裁判官の、小法廷は、最高裁判所の定める員数の裁判官の合議体とする。但し、小法廷の裁判官の員数は、三人以上でなければならない。
  3. 各合議体の裁判官のうち一人を裁判長とする。
  4. 各合議体では、最高裁判所の定める員数の裁判官が出席すれば、審理及び裁判をすることができる。

(大法廷及び小法廷の審判)

第十条
事件を大法廷又は小法廷のいずれで取り扱うかについては、最高裁判所の定めるところによる。但し、左の場合においては、小法廷では裁判をすることができない。
一  当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき。(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く。)
二  前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき。
三  憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき。

(裁判官の意見の表示)

第十一条
裁判書には、各裁判官の意見を表示しなければならない。

(司法行政事務)

第十二条
  1. 最高裁判所が司法行政事務を行うのは、裁判官会議の議によるものとし、最高裁判所長官が、これを総括する。
  2. 裁判官会議は、全員の裁判官でこれを組織し、最高裁判所長官が、その議長となる。

(事務総局)

第十三条
最高裁判所の庶務を掌らせるため、最高裁判所に事務総局を置く。

(司法研修所)

第十四条
裁判官の研究及び修養並びに司法修習生の修習に関する事務を取り扱わせるため、最高裁判所に司法研修所を置く。

(裁判所職員総合研修所)

第十四条の二
裁判所書記官、家庭裁判所調査官その他の裁判官以外の裁判所の職員の研究及び修養に関する事務を取り扱わせるため、最高裁判所に裁判所職員総合研修所を置く。

(最高裁判所図書館)

第十四条の三
最高裁判所に国立国会図書館の支部図書館として、最高裁判所図書館を置く。

第三編 下級裁判所[編集]

第一章 高等裁判所[編集]

(構成)

第十五条
各高等裁判所は、高等裁判所長官及び相応な員数の判事でこれを構成する。

(裁判権)

第十六条
高等裁判所は、左の事項について裁判権を有する。
一  地方裁判所の第一審判決、家庭裁判所の判決及び簡易裁判所の刑事に関する判決に対する控訴
二  第七条第二号の抗告を除いて、地方裁判所及び家庭裁判所の決定及び命令並びに簡易裁判所の刑事に関する決定及び命令に対する抗告
三  刑事に関するものを除いて、地方裁判所の第二審判決及び簡易裁判所の判決に対する上告
四  刑法第七十七条 乃至第七十九条 の罪に係る訴訟の第一審

(その他の権限)

第十七条
高等裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限を有する。

(合議制)

第十八条
  1. 高等裁判所は、裁判官の合議体でその事件を取り扱う。但し、法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定があるときは、その定に従う。
  2. 前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。但し、第十六条第四号の訴訟については、裁判官の員数は、五人とする。

(裁判官の職務の代行)

第十九条
  1. 高等裁判所は、裁判事務の取扱上さし迫つた必要があるときは、その管轄区域内の地方裁判所又は家庭裁判所の判事にその高等裁判所の判事の職務を行わせることができる。
  2. 前項の規定により当該高等裁判所のさし迫つた必要をみたすことができない特別の事情があるときは、最高裁判所は、他の高等裁判所又はその管轄区域内の地方裁判所若しくは家庭裁判所の判事に当該高等裁判所の判事の職務を行わせることができる。

(司法行政事務)

第二十条
  1. 各高等裁判所が司法行政事務を行うのは、裁判官会議の議によるものとし、各高等裁判所長官が、これを総括する。
  2. 各高等裁判所の裁判官会議は、その全員の裁判官でこれを組織し、各高等裁判所長官が、その議長となる。

(事務局)

第二十一条
各高等裁判所の庶務を掌らせるため、各高等裁判所に事務局を置く。

(支部)

第二十二条
  1. 最高裁判所は、高等裁判所の事務の一部を取り扱わせるため、その高等裁判所の管轄区域内に、高等裁判所の支部を設けることができる。
  2. 最高裁判所は、高等裁判所の支部に勤務する裁判官を定める。

第二章 地方裁判所[編集]

(構成)

第二十三条
各地方裁判所は、相応な員数の判事及び判事補でこれを構成する。

(裁判権)

第二十四条
地方裁判所は、次の事項について裁判権を有する。
一  第三十三条第一項第一号の請求以外の請求に係る訴訟(第三十一条の三第一項第二号の人事訴訟を除く。)及び第三十三条第一項第一号の請求に係る訴訟のうち不動産に関する訴訟の第一審
二  第十六条第四号の罪及び罰金以下の刑に当たる罪以外の罪に係る訴訟の第一審
三  第十六条第一号の控訴を除いて、簡易裁判所の判決に対する控訴
四  第七条第二号及び第十六条第二号の抗告を除いて、簡易裁判所の決定及び命令に対する抗告

(その他の権限)

第二十五条
地方裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限及び他の法律において裁判所の権限に属するものと定められた事項の中で地方裁判所以外の裁判所の権限に属させていない事項についての権限を有する。

(一人制・合議制)

第二十六条
  1. 地方裁判所は、第二項に規定する場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱う。
  2. 左の事件は、裁判官の合議体でこれを取り扱う。但し、法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定があるときは、その定に従う。
    一 合議体で審理及び裁判をする旨の決定を合議体でした事件
    二 死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪(刑法第二百三十六条 、第二百三十八条又は第二百三十九条の罪及びその未遂罪、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)第一条ノ二第一項若しくは第二項又は第一条ノ三の罪並びに盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)第二条又は第三条の罪を除く。)に係る事件
    三 簡易裁判所の判決に対する控訴事件並びに簡易裁判所の決定及び命令に対する抗告事件
    四 その他他の法律において合議体で審理及び裁判をすべきものと定められた事件
  3. 前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。

(判事補の職権の制限)

第二十七条
  1. 判事補は、他の法律に特別の定のある場合を除いて、一人で裁判をすることができない。
  2. 判事補は、同時に二人以上合議体に加わり、又は裁判長となることができない。

(裁判官の職務の代行)

第二十八条
  1. 地方裁判所において裁判事務の取扱上さし迫つた必要があるときは、その所在地を管轄する高等裁判所は、その管轄区域内の他の地方裁判所、家庭裁判所又はその高等裁判所の裁判官に当該地方裁判所の裁判官の職務を行わせることができる。
  2. 前項の規定により当該地方裁判所のさし迫つた必要をみたすことができない特別の事情があるときは、最高裁判所は、その地方裁判所の所在地を管轄する高等裁判所以外の高等裁判所の管轄区域内の地方裁判所、家庭裁判所又はその高等裁判所の裁判官に当該地方裁判所の裁判官の職務を行わせることができる。

(司法行政事務)

第二十九条
  1. 最高裁判所は、各地方裁判所の判事のうち一人に各地方裁判所長を命ずる。
  2. 各地方裁判所が司法行政事務を行うのは、裁判官会議の議によるものとし、各地方裁判所長が、これを総括する。
  3. 各地方裁判所の裁判官会議は、その全員の判事でこれを組織し、各地方裁判所長が、その議長となる。

(事務局)

第三十条
各地方裁判所の庶務を掌らせるため、各地方裁判所に事務局を置く。

(支部・出張所)

第三十一条
  1. 最高裁判所は、地方裁判所の事務の一部を取り扱わせるため、その地方裁判所の管轄区域内に、地方裁判所の支部又は出張所を設けることができる。
  2. 最高裁判所は、地方裁判所の支部に勤務する裁判官を定める。

第三章 家庭裁判所(第31条の2 - 第31条の5)[編集]

(構成)

第三十一条の二
家庭裁判所は、相応な員数の判事及び判事補でこれを構成する。


(裁判権その他の権限)  

第三十一条の三
  1. 家庭裁判所は、次の権限を有する。
    一  家事審判法 (昭和二十二年法律第百五十二号)で定める家庭に関する事件の審判及び調停
    二  人事訴訟法 (平成十五年法律第百九号)で定める人事訴訟の第一審の裁判
    三  少年法 (昭和二十三年法律第百六十八号)で定める少年の保護事件の審判
    四  少年法第三十七条第一項 に掲げる罪に係る訴訟の第一審の裁判
  2. 家庭裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限を有する。


(一人制・合議制) 

第三十一条の四
  1. 家庭裁判所は、審判又は裁判を行うときは、次項に規定する場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱う。
  2. 次に掲げる事件は、裁判官の合議体でこれを取り扱う。ただし、審判を終局させる決定並びに法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定めがあるときは、その定めに従う。
    一  合議体で審判又は審理及び裁判をする旨の決定を合議体でした事件
    二  他の法律において合議体で審判又は審理及び裁判をすべきものと定められた事件
  3. 前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。                            

              

(地方裁判所の規定の準用)  

第三十一条の五
第二十七条乃至第三十一条の規定は、家庭裁判所にこれを準用する。

第四章 簡易裁判所[編集]

(裁判官)

第三十二条
各簡易裁判所に相応な員数の簡易裁判所判事を置く。

(裁判権)

第三十三条
  1. 簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
    一  訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)
    二  罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪又は刑法第百八十六条 、第二百五十二条若しくは第二百五十六条の罪に係る訴訟(第三十一条の三第一項第四号の訴訟を除く。)
  2. 簡易裁判所は、禁錮以上の刑を科することができない。ただし、刑法第百三十条 の罪若しくはその未遂罪、同法第百八十六条 の罪、同法第二百三十五条 の罪若しくはその未遂罪、同法第二百五十二条 、第二百五十四条若しくは第二百五十六条の罪、古物営業法 (昭和二十四年法律第百八号)第三十一条 から第三十三条 までの罪若しくは質屋営業法 (昭和二十五年法律第百五十八号)第三十条 から第三十二条 までの罪に係る事件又はこれらの罪と他の罪とにつき刑法第五十四条第一項 の規定によりこれらの罪の刑をもつて処断すべき事件においては、三年以下の懲役を科することができる。
  3. 簡易裁判所は、前項の制限を超える刑を科するのを相当と認めるときは、訴訟法の定めるところにより事件を地方裁判所に移さなければならない。

(その他の権限)

第三十四条
簡易裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限を有する。

(一人制)

第三十五条
簡易裁判所は、一人の裁判官でその事件を取り扱う。

(裁判官の職務の代行)

第三十六条
  1. 簡易裁判所において裁判事務の取扱上さし迫つた必要があるときは、その所在地を管轄する地方裁判所は、その管轄区域内の他の簡易裁判所の裁判官又はその地方裁判所の判事に当該簡易裁判所の裁判官の職務を行わせることができる。
  2. 前項の規定により当該簡易裁判所のさし迫つた必要をみたすことができない特別の事情があるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する高等裁判所は、同項に定める裁判官以外のその管轄区域内の簡易裁判所の裁判官又は地方裁判所の判事に当該簡易裁判所の裁判官の職務を行わせることができる。

(司法行政事務)

第三十七条
各簡易裁判所の司法行政事務は、簡易裁判所の裁判官が、一人のときは、その裁判官が、二人以上のときは、最高裁判所の指名する一人の裁判官がこれを掌理する。

(事務の移転)

第三十八条
簡易裁判所において特別の事情によりその事務を取り扱うことができないときは、その所在地を管轄する地方裁判所は、その管轄区域内の他の簡易裁判所に当該簡易裁判所の事務の全部又は一部を取り扱わせることができる。

第四編 裁判所の職員及び司法修習生(第39条 - 第68条)[編集]

第一章 裁判官[編集]

(最高裁判所の裁判官の任免)

第三十九条
  1. 最高裁判所長官は、内閣の指名に基いて、天皇がこれを任命する。
  2. 最高裁判所判事は、内閣でこれを任命する。
  3. 最高裁判所判事の任免は、天皇がこれを認証する。
  4. 最高裁判所長官及び最高裁判所判事の任命は、国民の審査に関する法律の定めるところにより国民の審査に付される。


(下級裁判所の裁判官の任免)

第四十条
  1. 高等裁判所長官、判事、判事補及び簡易裁判所判事は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。
  2. 高等裁判所長官の任免は、天皇がこれを認証する。
  3. 第一項の裁判官は、その官に任命された日から十年を経過したときは、その任期を終えるものとし、再任されることができる。


(最高裁判所の裁判官の任命資格)

第四十一条
  1. 最高裁判所の裁判官は、識見の高い、法律の素養のある年齢四十年以上の者の中からこれを任命し、そのうち少くとも十人は、十年以上第一号及び第二号に掲げる職の一若しくは二に在つた者又は左の各号に掲げる職の一若しくは二以上に在つてその年数を通算して二十年以上になる者でなければならない。
    一  高等裁判所長官
    二  判事
    三  簡易裁判所判事
    四  検察官
    五  弁護士
    六  別に法律で定める大学の法律学の教授又は准教授
  2. 五年以上前項第一号及び第二号に掲げる職の一若しくは二に在つた者又は十年以上同項第一号から第六号までに掲げる職の一若しくは二以上に在つた者が判事補、裁判所調査官、最高裁判所事務総長、裁判所事務官、司法研修所教官、裁判所職員総合研修所教官、法務省の事務次官、法務事務官又は法務教官の職に在つたときは、その在職は、同項の規定の適用については、これを同項第三号から第六号までに掲げる職の在職とみなす。
  3. 前二項の規定の適用については、第一項第三号乃至第五号及び前項に掲げる職に在つた年数は、司法修習生の修習を終えた後の年数に限り、これを当該職に在つた年数とする。
  4. 三年以上第一項第六号の大学の法律学の教授又は准教授の職に在つた者が簡易裁判所判事、検察官又は弁護士の職に就いた場合においては、その簡易裁判所判事、検察官(副検事を除く。)又は弁護士の職に在つた年数については、前項の規定は、これを適用しない。


(高等裁判所長官及び判事の任命資格)

第四十二条
高等裁判所長官及び判事は、次の各号に掲げる職の一又は二以上に在つてその年数を通算して十年以上になる者の中からこれを任命する。
一  判事補
二  簡易裁判所判事
三  検察官
四  弁護士
五  裁判所調査官、司法研修所教官又は裁判所職員総合研修所教官
六  前条第一項第六号の大学の法律学の教授又は准教授
2 前項の規定の適用については、三年以上同項各号に掲げる職の一又は二以上に在つた者が裁判所事務官、法務事務官又は法務教官の職に在つたときは、その在職は、これを同項各号に掲げる職の在職とみなす。
3 前二項の規定の適用については、第一項第二号乃至第五号及び前項に掲げる職に在つた年数は、司法修習生の修習を終えた後の年数に限り、これを当該職に在つた年数とする。
4 三年以上前条第一項第六号の大学の法律学の教授又は准教授の職に在つた者が簡易裁判所判事、検察官又は弁護士の職に就いた場合においては、その簡易裁判所判事、検察官(副検事を除く。)又は弁護士の職に在つた年数については、前項の規定は、これを適用しない。司法修習生の修習を終えないで簡易裁判所判事又は検察官に任命された者の第六十六条の試験に合格した後の簡易裁判所判事、検察官(副検事を除く。)又は弁護士の職に在つた年数についても、同様とする。


(判事補の任命資格)

第四十三条
判事補は、司法修習生の修習を終えた者の中からこれを任命する。


(簡易裁判所判事の任命資格)

第四十四条
  1. 簡易裁判所判事は、高等裁判所長官若しくは判事の職に在つた者又は次の各号に掲げる職の一若しくは二以上に在つてその年数を通算して三年以上になる者の中からこれを任命する。
    一  判事補
    二  検察官
    三  弁護士
    四  裁判所調査官、裁判所事務官、司法研修所教官、裁判所職員総合研修所教官、法務事務官又は法務教官
    五  第四十一条第一項第六号の大学の法律学の教授又は准教授
  2. 前項の規定の適用については、同項第二号乃至第四号に掲げる職に在つた年数は、司法修習生の修習を終えた後の年数に限り、これを当該職に在つた年数とする。
  3. 司法修習生の修習を終えないで検察官に任命された者の第六十六条の試験に合格した後の検察官(副検事を除く。)又は弁護士の職に在つた年数については、前項の規定は、これを適用しない。


(簡易裁判所判事の選考任命)

第四十五条
  1. 多年司法事務にたずさわり、その他簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある者は、前条第一項に掲げる者に該当しないときでも、簡易裁判所判事選考委員会の選考を経て、簡易裁判所判事に任命されることができる。
  2. 簡易裁判所判事選考委員会に関する規程は、最高裁判所がこれを定める。


(任命の欠格事由)

第四十六条
他の法律の定めるところにより一般の官吏に任命されることができない者の外、左の各号の一に該当する者は、これを裁判官に任命することができない。
一  禁錮以上の刑に処せられた者
二  弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者


(補職)

第四十七条
下級裁判所の裁判官の職は、最高裁判所がこれを補する。


(身分の保障)

第四十八条
裁判官は、公の弾劾又は国民の審査に関する法律による場合及び別に法律で定めるところにより心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合を除いては、その意思に反して、免官、転官、転所、職務の停止又は報酬の減額をされることはない。


(懲戒)

第四十九条
裁判官は、職務上の義務に違反し、若しくは職務を怠り、又は品位を辱める行状があつたときは、別に法律で定めるところにより裁判によつて懲戒される。


(定年)

第五十条
最高裁判所の裁判官は、年齢七十年、高等裁判所、地方裁判所又は家庭裁判所の裁判官は、年齢六十五年、簡易裁判所の裁判官は、年齢七十年に達した時に退官する。


(報酬)

第五十一条
裁判官の受ける報酬については、別に法律でこれを定める。


(政治運動等の禁止)

第五十二条
裁判官は、在任中、左の行為をすることができない。
一  国会若しくは地方公共団体の議会の議員となり、又は積極的に政治運動をすること。
二  最高裁判所の許可のある場合を除いて、報酬のある他の職務に従事すること。
三  商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと。

第二章 裁判官以外の裁判所の職員[編集]

(裁判所書記官)

第六十条
  1. 各裁判所に裁判所書記官を置く。
  2. 裁判所書記官は、裁判所の事件に関する記録その他の書類の作成及び保管その他他の法律において定める事務を掌る。
  3. 裁判所書記官は、前項の事務を掌る外、裁判所の事件に関し、裁判官の命を受けて、裁判官の行なう法令及び判例の調査その他必要な事項の調査を補助する。
  4. 裁判所書記官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に従う。
  5. 裁判所書記官は、口述の書取その他書類の作成又は変更に関して裁判官の命令を受けた場合において、その作成又は変更を正当でないと認めるときは、自己の意見を書き添えることができる。

(裁判所速記官)

第六十条の二
  1. 各裁判所に裁判所速記官を置く。
  2. 裁判所速記官は、裁判所の事件に関する速記及びこれに関する事務を掌る。
  3. 裁判所速記官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に従う。

(裁判所技官)

第六十一条
  1. 各裁判所に裁判所技官を置く。
  2. 裁判所技官は、上司の命を受けて、技術を掌る。

(家庭裁判所調査官)

第六十一条の二
  1. 各家庭裁判所及び各高等裁判所に家庭裁判所調査官を置く。
  2. 家庭裁判所調査官は、各家庭裁判所においては、第三十一条の三第一項第一号の審判及び調停、同項第二号の裁判(人事訴訟法第三十二条第一項 の附帯処分についての裁判及び同条第三項 の親権者の指定についての裁判(以下この項において「附帯処分等の裁判」という。)に限る。)並びに第三十一条の三第一項第三号の審判に必要な調査その他他の法律において定める事務を掌り、各高等裁判所においては、同項第一号の審判に係る抗告審の審理及び附帯処分等の裁判に係る控訴審の審理に必要な調査を掌る。
  3. 最高裁判所は、家庭裁判所調査官の中から、首席家庭裁判所調査官を命じ、調査事務の監督、関係行政機関その他の機関との連絡調整等の事務を掌らせることができる。
  4. 家庭裁判所調査官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に従う。

(家庭裁判所調査官補)

第六十一条の三
  1. 各家庭裁判所に家庭裁判所調査官補を置く。
  2. 家庭裁判所調査官補は、上司の命を受けて、家庭裁判所調査官の事務を補助する。

(執行官)

第六十二条
  1. 各地方裁判所に執行官を置く。
  2. 執行官に任命されるのに必要な資格に関する事項は、最高裁判所がこれを定める。
  3. 執行官は、他の法律の定めるところにより裁判の執行、裁判所の発する文書の送達その他の事務を行う。
  4. 執行官は、手数料を受けるものとし、その手数料が一定の額に達しないときは、国庫から補助金を受ける。

(廷吏)

第六十三条
  1. 各裁判所に廷吏を置く。
  2. 廷吏は、法廷において裁判官の命ずる事務その他最高裁判所の定める事務を取り扱う。
  3. 各裁判所は、執行官を用いることができないときは、その裁判所の所在地で書類を送達するために、廷吏を用いることができる。

(任免)

第六十四条
裁判官以外の裁判所の職員の任免は、最高裁判所の定めるところにより最高裁判所、各高等裁判所、各地方裁判所又は各家庭裁判所がこれを行う。

(勤務裁判所の指定)

第六十五条
裁判所調査官、裁判所事務官(事務局長たるものを除く。)、裁判所書記官、裁判所速記官、家庭裁判所調査官、家庭裁判所調査官補、執行官及び裁判所技官の勤務する裁判所は、最高裁判所の定めるところにより最高裁判所、各高等裁判所、各地方裁判所又は各家庭裁判所がこれを定める。

(裁判官以外の裁判所の職員に関する事項)

第六十五条の二
裁判官以外の裁判所の職員に関する事項については、この法律に定めるものの外、別に法律でこれを定める。

第三章 司法修習生[編集]

第五編 裁判事務の取扱[編集]

第一章 法廷(第69条 - 第73条)[編集]

(開廷の場所)

第六十九条
  1. 法廷は、裁判所又は支部でこれを開く。
  2. 最高裁判所は、必要と認めるときは、前項の規定にかかわらず、他の場所で法廷を開き、又はその指定する他の場所で下級裁判所に法廷を開かせることができる。

(公開停止の手続)

第七十条
裁判所は、日本国憲法第八十二条第二項 の規定により対審を公開しないで行うには、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。判決を言い渡すときは、再び公衆を入廷させなければならない。

(法廷の秩序維持)

第七十一条
  1. 法廷における秩序の維持は、裁判長又は開廷をした一人の裁判官がこれを行う。
  2. 裁判長又は開廷をした一人の裁判官は、法廷における裁判所の職務の執行を妨げ、又は不当な行状をする者に対し、退廷を命じ、その他法廷における秩序を維持するのに必要な事項を命じ、又は処置を執ることができる。

(警察官の派出要求)

第七十一条の二
  1. 裁判長又は開廷をした一人の裁判官は、法廷における秩序を維持するため必要があると認めるときは、警視総監又は道府県警察本部長に警察官の派出を要求することができる。法廷における秩序を維持するため特に必要があると認めるときは、開廷前においてもその要求をすることができる。
  2. 前項の要求により派出された警察官は、法廷における秩序の維持につき、裁判長又は一人の裁判官の指揮を受ける。

(法廷外における処分)

第七十二条
  1. 裁判所が他の法律の定めるところにより法廷外の場所で職務を行う場合において、裁判長又は一人の裁判官は、裁判所の職務の執行を妨げる者に対し、退去を命じ、その他必要な事項を命じ、又は処置を執ることができる。
  2. 前条の規定は、前項の場合にこれを準用する。
  3. 前二項に規定する裁判長の権限は、裁判官が他の法律の定めるところにより法廷外の場所で職務を行う場合において、その裁判官もこれを有する。

(審判妨害罪)

第七十三条
第七十一条又は前条の規定による命令に違反して裁判所又は裁判官の職務の執行を妨げた者は、これを一年以下の懲役若しくは禁錮又は千円以下の罰金に処する。

第二章 裁判所の用語[編集]

第三章 裁判の評議[編集]

第四章 裁判所の共助[編集]

第六編 司法行政[編集]

(司法行政の監督)

第八十条
司法行政の監督権は、左の各号の定めるところによりこれを行う。
一 最高裁判所は、最高裁判所の職員並びに下級裁判所及びその職員を監督する。
二 各高等裁判所は、その高等裁判所の職員並びに管轄区域内の下級裁判所及びその職員を監督する。
三 各地方裁判所は、その地方裁判所の職員並びに管轄区域内の簡易裁判所及びその職員を監督する。
四 各家庭裁判所は、その家庭裁判所の職員を監督する。
第三十七条に規定する簡易裁判所の裁判官は、その簡易裁判所の裁判官以外の職員を監督する。

(監督権と裁判権との関係)

第八十一条
前条の監督権は、裁判官の裁判権に影響を及ぼし、又はこれを制限することはない。

(事務の取扱方法に対する不服)

第八十二条
裁判所の事務の取扱方法に対して申し立てられた不服は、第八十条の監督権によりこれを処分する。

第七編 裁判所の経費[編集]


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