国際連合安全保障理事会決議第千五百九十六号 (コンゴ民主共和国に対する制裁に関する決議) に関する件

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平成十七年四月十八日、国際連合安全保障理事会において、コンゴ民主共和国情勢に関し、武器禁輸措置の強化のため、武器禁輸措置の適用範囲の拡大、移動の制限及び資産の凍結措置を導入すること等を決定する次の決議が採択された。

平成十七年十一月四日

外務大臣  麻生  太郎

(訳文)

二千五年四月十八日に安全保障理事会がその第五一六三回会合において採択した決議第千五百九十六号(二〇〇五)

安全保障理事会は、

コンゴ民主共和国に関する決議、特に二千三年七月二十八日の決議第千四百九十三号、二千四年三月十二日の決議第千五百三十三号、二千四年七月二十七日の決議第千五百五十二号、二千四年十月一日の決議第千五百六十五号及び二千五年三月三十日の決議第千五百九十二号を想起し、また、コンゴ民主共和国に関する同理事会の議長声明、特に二千四年十二月七日の議長声明を想起し、

コンゴ民主共和国の東部地域、特に南北キブ州及びイツリ地区において、その地域全体に不安定な情勢をもたらし続けている武装集団及び民兵の存在に対する深い懸念を再度強調し、

これら武装集団及び民兵の一部が、武装解除プログラムに参加するために彼らの所有する武器及び関連物資並びに拠点に関する目録の提出を開始している事実を歓迎し、また、これをいまだ行っていない者が速やかにこれを行うことを慫慂し、

コンゴ民主共和国の東部における継続的な不安定性がアフリカ大湖地域における平和及び安全に及ぼす影響を考慮しつつ、より広い観点から千九百九十四年五月十七日の決議第九百十八号及び千九百九十五年六月九日の決議第九百九十七号並びに千九百九十五年八月十六日の決議第千十一号の条項を検討する用意があることを表明し、

コンゴ民主共和国の域内における又は同国への武器の継続的で不法な流出入を非難し、また、二千三年七月二十八日の決議第千四百九十三号により課された武器禁輸措置の実施を密接に監視し続ける決意を宣言し、

国家統一暫定政府が治安部門改革に関する合同委員会の枠組みでの活動を継続することにより、その責任を負うところのコンゴ民主共和国軍の統合を遅延なく実施することが重要であることを想起し、また、この任務のためにドナー・コミュニティが協調して資金的及び技術的援助を供与することを慫慂し、

コンゴ民主共和国に平和及び安全を回復するために行われた事務総長、アフリカ連合及びその他の関係者による努力を称讃し、また、これに関連して、「アフリカ大湖地域における平和、安全保障、民主主義及び開発に関する国際会議」の第一回首脳会合の総括に際して二千四年十一月二十日にダルエスサラームで採択された宣言を歓迎し、

決議第千五百三十三号8の規定に従って設置された委員会(以下「委員会」という。)により伝達され、決議第千五百三十三号10の規定によって設置された専門家グループの二千四年七月十五日(S/二〇〇四/五五一)及び二千五年一月二十五日(S/二〇〇五/三十)の報告及び勧告に留意し、

コンゴ民主共和国における事態が地域の国際の平和及び地域の安全に対する脅威を構成し続けていることに留意し、

国際連合憲章第七章の下に行動して、

1  二千三年七月二十八日の決議第千四百九十三号20の規定により課され、二千四年七月二十七日の決議第千五百五十二号によって二千五年七月三十一日までの延長が決定された措置を再確認し、これらの措置を、今後コンゴ民主共和国領域内のすべての受取人に適用することを決定し、支援には軍事行動に関連する資金調達及び資金援助を含むことを再度強調する。

2  上記の措置は次のものには適用しないことを決定する。

⒜  コンゴ民主共和国の軍隊及び警察部隊に対する支援又はこれらによる使用のみを目的とする武器及び関連物資の供給若しくは技術訓練及び援助。その条件とは次のとおりである。

―  右部隊が、統合過程を完了していること。又は、

―  コンゴ民主共和国の国軍統合参謀本部又は国家警察の指揮下でそれぞれ活動すること。又は、

―  南北キブ州及びイツリ地区以外のコンゴ民主共和国領域内において統合の過程にあること。

⒝  国連コンゴ民主共和国ミッション(MONUC)に対する支援又はMONUCによる使用のみを目的とする武器及び関連物資の供給並びに技術訓練及び援助

⒞  人道的な又は防護的な使用のみを目的とする非殺生的な軍用装備の供給並びに関連する技術援助及び訓練であって、決議第千五百三十三号8⒠の規定に従い委員会に対して事前に通知がなされたもの

3  MONUCに対し、その既存の能力の範囲内であって、現行の任務の遂行を害することなく、及び下記21の規定にいう専門家グループに対し、南北キブ州及びイツリ地区における監視活動に集中することを継続するよう要求する。

4  上記2⒜の規定にいう免除に合致するものであって、将来承認されるすべての武器及び関連物資の運搬は、MONUCとの連携の下に国家統一暫定政府が指定した場所に向けるものであって、委員会に対して事前に通報されるものに限ることを決定する。

5  イツリ地区、北キブ州又は南キブ州で軍事能力を伴う上記2⒜の規定にいう者以外のすべての当事者に対し、国家統一暫定政府が外国人及びコンゴ人戦闘員の武装解除、動員解除及び社会復帰並びに治安部門改革に関する約束を実施できるよう支援することを要請する。

6  上記1の規定にいう措置の実施期間中は、地域のすべての政府、特にコンゴ民主共和国政府並びにイツリ地区及び両キブ州に隣接する各国政府は、以下の必要な措置をとることを決定する。

―  特に航空機に携行される文書の効力及び操縦士免許を確認することにより、同地域において、航空機が千九百四十四年十二月七日にシカゴで署名された国際民間航空条約に従って運航されることを確保する。

―  同条約に定められている条件又は国際民間航空機関が制定した基準に合致しない航空機の運航、特に、偽造文書又は失効文書の使用による航空機の自国の領内における運航を直ちに禁止すること、委員会に通知すること及び委員会が国又は専門家グループからこれらの航空機がシカゴ条約第五章で定められた条件及び基準を満たしていることの通知を受け、委員会がこれらの航空機が安全保障理事会の決議に合致しない目的で使用されないことを確定するまでは、かかる禁止措置を維持すること。

―  自国領域のすべての民用及び軍用空港又は飛行場が、上記1により課される措置に合致しない目的で使用されることがないよう確保すること。

7  さらに、当該地域の各政府、特にイツリ地区及び両キブ州に隣接する各国政府及びコンゴ民主共和国政府は、委員会及び専門家グループの審査を受けるために、自国領域を発しコンゴ民主共和国へ向かう航空機及びコンゴ民主共和国を発し自国領域へ向かう航空機に関するすべての情報の登録を保管しなければならないことを決定する。

8  国家統一暫定政府に対し、すべての空港及び飛行場、特にイツリ地区及び両キブ州に所在する空港及び飛行場の活動の監視を強化し、特に税関空港のみが国際航空業務のために使用されるよう確保することを求める。また、MONUCに対し、恒常的に存在する空港及び飛行場において、コンゴ民主共和国の権限のある当局の空港使用を監視し及び管理する能力を強化することを目的として、既存の能力の範囲内でコンゴ民主共和国当局と協力するよう要請する。

9  この関連で、当該地域の国々、特に二千四年十一月二十日にダルエスサラームで採択された宣言の署名国に対して、航空管制分野における地域協力を促進するよう勧告する。

10  上記1の規定にいう措置の実施期間中は、コンゴ民主共和国政府並びにイツリ地区及び両キブ州に隣接する各国政府は次の必要な措置をとることを決定する。

―  自国に関する限りにおいて、イツリ地区又は両キブ州とこれらに隣接する各国との間の国境における税関管理を強化すること。

―  自国領域におけるあらゆる輸送手段が、上記1の規定に従って加盟国が講じる措置に違反して用いられることがないことを確保し、それらの行動をMONUCに対して通知すること。

また、MONUC及び国連ブルンジ活動(ONUB)に対し、それぞれの任務に従って、恒常的に存在している場所においては、コンゴ民主共和国及びブルンジの権限のある税関当局に対して右目的のための支援を提供するよう要請する。

11  国際社会、とりわけ関係する専門的国際機関、特に国際民間航空機関及び世界税関機構に対し、国家統一暫定政府が自国の国境及び自国の空域を効果的に管理できるよう支援するため、資金・技術支援を行うよう改めて要請し、この関連で、国際通貨基金及び世界銀行に対し、コンゴ民主共和国の税関の業績の評価並びに改善及びその能力の強化を目的として支援を提供するよう要請する。

12  すべての国に対し、上記1の規定により課せられた措置に違反する武器及び関連物資の輸送のために使用される上記6及び10の規定にいうような航空機又はその他の輸送手段による活動を行った、若しくはそれに協力した自国民の行動を調査し、及び必要な場合には適切な訴えを提起するよう要請する。

13  すべての国は、上記1の規定にいう措置の実施期間中は、上記1の規定に従って加盟国が講じる措置に違反したと委員会により指定されるすべての者が自国の領域に入国し又は領域を通過することを防止するために必要な措置をとることを決定する。ただし、このパラグラフのいかなる規定も、ある国に対して自国民が自国の領域内に入ることを拒否することを義務付けるものではない。

14  委員会が、人道上の必要性(宗教上の義務を含む。)を理由として、そのような往来が事前にかつ状況に応じて個別に正当化されると決定する場合、又は、免除することが安全保障理事会の諸決議の目的、すなわちコンゴ民主共和国における和平及び国内の和解並びに地域の安定に資すると委員会が結論する場合には、前記の規定により課される措置は適用されないことを決定する。

15  すべての国は、上記1の規定にいう措置の実施期間中は、この決議の採択の日から、自国の領域内に存在する資金、その他の金融資産及び経済資源であって、委員会により上記13の規定に基づき指定される者により直接的若しくは間接的に所有され若しくは管理されるもの、又は委員会が指定するとおり、それらの者の代理として若しくは彼らの指示により行動する者により直接的若しくは間接的に所有され若しくは管理される団体に保持されるものを直ちに凍結することを決定し、さらに、すべての国は、いかなる資金、金融資産又は経済資源も、自国の国民又はその領域内にいる者により、そのような者又は団体の利益のために利用可能とならないことを確保することを決定する。

16  前記の規定は、次の資金、その他の金融資産又は経済資源には適用しないことを決定する。

⒜  関係国により、食糧、賃料若しくは抵当、医薬品及び医療、租税、保険料並びに公共料金のための支払いを含む基礎的な経費、若しくは、妥当な専門手数料若しくは法的役務の提供に関連して生じる費用の払戻のために充てられる支払い、又は、凍結された資金、その他の金融資産及び経済資源の日常の保有若しくは維持のための国内法に基づく手数料若しくはサービス料として必要であると決定され、関係国より委員会に対し、適当と認められる場合に、そのような資金、その他の金融資産及び経済資源へのアクセスを認める意図が通知され、かつ、委員会がそのような通知がなされてから四作業日以内に否定的な決定を行なわなかったもの

⒝  関係国により臨時経費として必要であると決定され、そのような決定が関係国から委員会に対し通知され、かつ、委員会によって承認されたもの

⒞  関係国により司法、行政若しくは仲裁上の担保又は判決の対象であると決定され、当該資金、その他の金融資産及び経済資源がその担保又は判決を充足させるために使用されるものであって、その担保又は判決がこの決議の採択日よりも前に記録され、上記15の規定に基づいて委員会により指定される個人又は団体の利益のためではなく、かつ、関係国により委員会に対し通知されたもの

17  特に国軍及び国家警察のそれぞれの統合に関して、コンゴ民主共和国における和平及び移行プロセスにおいて達成された進展にかんがみ、二千五年七月三十一日までに上記1、6、10、13及び15の規定に定められた措置を再検討することを決定する。

18  決議第千五百三十三号8の規定に掲げられた任務に加え、委員会は次の任務を遂行することを決定する。

⒜  上記1、6、10、13及び15の規定に定められた措置に関する航空機及び航空企業を含む個人及び団体を指定し、同一覧表を定期的に更新すること。

⒝  関連する諸問題をより詳細に議論をするため委員会に代表者を派遣する機会をすべての国に与えることを含め、すべての関係国、特に地域の関係国に対し、上記1、6、10、13及び15の規定により課された措置を実施するために講じた措置に関する情報及び委員会が有用と考える更なる情報を求めること。

⒞  すべての関係国、特に地域の関係国に対し、上記⒜の規定に基づいて委員会が指定した個人を適当な場合に調査及び訴追するために講じた措置に関する情報を、委員会に提供するよう要請する。

⒟  上記14及び16の規定に定める免除の申請を受けた場合に検討し決定すること。

⒠  上記6、10、13及び15の規定の実施を促進するため必要とされる指針を定めること。

19  すべての当事者及びすべての国に対して、下記21にいう専門家グループ及びMONUCの作業に全面的に協力すること並びに以下の事項について確保することを要請する。

―  構成員の安全

―  特に、上記1、6、10、13及び15の規定に従って加盟国が講じる措置の違反の疑いに関するあらゆる情報を提供すること並びに専門家グループの任務の執行に関連すると考えられる個人、文書及び場所への専門家グループのアクセスを容易にすることによる専門家グループの構成員への妨害のない速やかなアクセス

20  すべての関係国、特に地域の関係国に対し、この決議の採択日から四十五日以内に、上記6、10、13及び15の規定により課される措置を実施するためにとった行動について委員会に報告するよう要求し、委員会に対し、その後、委員会が任務を遂行するために必要と考えるあらゆる情報をすべての加盟国に要求する権限を与える。

21  事務総長に対し、委員会と協議した上で、この決議の採択日から三十日以内に、かつ、二千五年七月三十一日までの期間中に、五人目となる金融問題の専門家を加えた上で決議第千五百三十三号十の規定にいう専門家グループを再設するよう要求し、任務の遂行のために必要な財源を専門家グループに提供することを要求する。

22  上記専門家グループに対し、二千五年七月一日までに、上記1、6、10、13及び15の規定により課される措置の実施に関するものを含む報告書を委員会を通じて安全保障理事会に提出するよう要求する。

23  この問題に引き続き関与することを決定する。


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