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テトスへの書 (文語訳)

提供:Wikisource

<文語訳新約聖書

w:舊新約聖書 [文語]』w:日本聖書協会、1950年

w:大正改訳聖書

テトスへの書

第1章

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1:1

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神の僕またイエス・キリストの使徒パウロ――我が使徒となれるは、永遠の生命の望に基きて神の選民の信仰を堅うし、また彼らを敬虔にかなふ眞理を知る知識に至らしめん爲なり。

1:2

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僞りなき神は、創世の前に、この生命を約束し給ひしが、

1:3

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時いたりて御言を宣教にて顯さんとし、その宣教を我らの救主たる神の命令をもて我に委ねたまへり。――

1:4

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われ書を同じ信仰によりて我が眞實の子たるテトスに贈る。願はくは父なる神および我らの救主キリスト・イエスより賜ふ恩惠と平安と、汝にあらんことを。

1:5

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わが汝をクレテに遣し置きたる故は、汝をして缺けたる所を正し、且わが命ぜしごとく町々に長老を立てしめん爲なり。

1:6

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長老は責むべき所なく、一人の女の夫にして、子女もまた放蕩をもて訴へらるる事なく、服從せぬことなき信者たるべきなり。

1:7

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それ監督は神の家司なれば、責むべき所なく、放縱ならず、輕々しく怒らず、酒を嗜まず、人を打たず、恥づべき利を取らず、

1:8

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反つて旅人を懇ろに待ひ、善を愛し、謹愼あり、正しく潔く節制にして、

1:9

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教に適ふ信ずべき言を守る者たるべし。これ健全なる教をもて人を勸め、かつ言ひ逆ふ者を言ひ伏することを得んためなり。

1:10

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服從せず、虚しき事をかたり、人の心を惑す者おほし、殊に割禮ある者のうちに多し。

1:11

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彼らの口を箝がしむべし、彼らは恥づべき利を得んために、教ふまじき事を教へて全家を覆へすなり。

1:12

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クレテ人の中なる或る預言者いふ

『クレテ人は常に虚僞をいふ者、
あしき獸、また懶惰の腹なり』

1:13

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この證は眞なり。されば汝きびしく彼らを責めよ、

1:14

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彼らがユダヤ人の昔話と眞理を棄てたる人の誡命とに心を寄することなく、信仰を健全にせん爲なり。

1:15

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潔き人には凡ての物きよく、汚れたる人と不信者とには一つとして潔き物なし、彼らは既に心も良心も汚れたり。

1:16

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みづから神を知ると言ひあらはせど、其の行爲にては神を否む。彼らは憎むべきもの、服はぬ者、すべての善き業に就きて棄てられたる者なり。

第2章

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2:1

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されど汝は健全なる教に適ふことを語れ。

2:2

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老人には自ら制することと謹嚴と謹愼とを勸め、また信仰と愛と忍耐とに健全ならんことを勸めよ。

2:3

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老いたる女にも同じく、清潔にかなふ行爲をなし、人を謗らず、大酒の奴隷とならず、善き事を教ふる者とならんことを勸めよ。

2:4

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かつ彼等をして若き女に夫を愛し、子を愛し、

2:5

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謹愼と貞操とを守り、家の務をなし、仁慈をもち、己が夫に服はんことを教へしめよ。これ神の言の汚されざらん爲なり。

2:6

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若き人にも同じく謹愼を勸め、

2:7

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なんぢ自ら凡ての事につきて善き業の模範を示せ。教をなすには邪曲なきことと謹嚴と、

2:8

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責むべき所なき健全なる言とを以てすべし。これ逆ふ者をして我らの惡を言ふに由なく、自ら恥づる所あらしめん爲なり。

2:9

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奴隷には己が主人に服ひ、凡ての事において之を喜ばせ、之に言ひ逆はず、

2:10

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物を盜まず、反つて全き忠信を顯すべきことを勸めよ。これ凡ての事において我らの救主なる神の教を飾らん爲なり。

2:11

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凡ての人に救を得さする神の恩惠は既に顯れて、

2:12

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不敬虔と世の慾とを棄てて謹愼と正義と敬虔とをもて此の世を過し、

2:13

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幸福なる望、すなはち大なる神、われらの救主イエス・キリストの榮光の顯現を待つべきを我らに教ふ。

2:14

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キリストは我等のために己を與へたまへり。是われらを諸般の不法より贖ひ出して、善き業に熱心なる特選の民を己がために潔めんとてなり。

2:15

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なんぢ全き權威をもて此等のことを語り、勸め、また責めよ。なんぢ人に輕んぜらるな。

第3章

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3:1

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汝かれらに司と權威ある者とに服し、かつ從ひ、凡ての善き業をおこなふ備をなし、

3:2

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人を謗らず、爭はず、寛容にし、常に柔和を凡ての人に顯すべきことを思ひ出させよ。

3:3

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我らも前には愚なるもの、順はぬもの、迷へる者、さまざまの慾と快樂とに事ふるもの、惡意と嫉妬とをもて過すもの、憎むべき者、また互に憎み合ふ者なりき。

3:4

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されど我らの救主なる神の仁慈と、人を愛したまふ愛との顯れしとき、

3:5

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3:6

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我らの行ひし義の業にはよらで、唯その憐憫により、更生の洗と、我らの救主イエス・キリストをもて豐に注ぎたまふ聖靈による維新とにて、我らを救ひ給へり。

3:7

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これ我らが其の恩惠によりて義とせられ、永遠の生命の望にしたがひて世嗣とならん爲なり。

3:8

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この言は信ずべきなれば、我なんぢが此等につきて確證せんことを欲す。神を信じたる者をして愼みて善き業を務めしめん爲なり。かくするは善き事にして人に益あり。

3:9

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されど愚なる議論・系圖・爭鬪、また律法に就きての分爭を避けよ。これらは益なくして空しきものなり。

3:10

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異端の者をば一度もしくは二度、訓戒して後これを棄てよ。

3:11

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かかる者は汝の知るごとく、邪曲にして自ら罪を認めつつ尚これを犯すなり。

3:12

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我アルテマス或はテキコを汝に遣さん、その時なんぢ急ぎてニコポリなる我がもとに來れ。われ彼處にて冬を過さんと定めたり。

3:13

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教法師ゼナス及びアポロを懇ろに送りて、乏しき事なからしめよ。

3:14

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かくて我らの伴侶も善き業を務めて必要を資けんことを學ぶべし、これ果を結ばぬ事なからん爲なり。

3:15

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我と偕に居る者みな汝に安否を問ふ。信仰に在りて我らを愛する者に安否を問へ。願はくは御惠、なんぢら凡ての者と偕にあらん事を。