テサロニケ人への前の書(文語訳)

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<文語訳新約聖書

w:舊新約聖書 [文語]』w:日本聖書協会、1950年

w:大正改訳聖書

テサロニケ人への前の書

第1章[編集]

1:1[編集]

パウロ、シルワノ、テモテ、書を父なる神および主イエス・キリストにあるテサロニケ人の教會に贈る。願はくは恩惠と平安と汝らに在らんことを。

1:2[編集]

われら祈のときに汝らを憶えて、常に汝ら衆人のために神に感謝す。

1:3[編集]

これ汝らが信仰のはたらき、愛の勞苦、主イエス・キリストに對する望の忍耐を、我らの父なる神の前に絶えず念ふに因りてなり。

1:4[編集]

神に愛せらるる兄弟よ、また汝らの選ばれたることを知るに因りてなり。

1:5[編集]

それ我らの福音の汝らに至りしは、言にのみ由らず、能力と聖靈と大なる確信とに由れり。且われらが汝らの中にありて汝らの爲に如何なる行爲をなししかは、汝らの知る所なり。

1:6[編集]

かくて汝らは大なる患難のうちにも、聖靈による喜悦をもて御言をうけ、我ら及び主に效ふ者となり、

1:7[編集]

而してマケドニヤ及びアカヤに在る凡ての信者の模範となれり。

1:8[編集]

それは主のことば汝等より出でて、啻にマケドニヤ及びアカヤに響きしのみならず、神に對する汝らの信仰のことは諸方に弘りたるなり。されば之に就きては何をも語るに及ばず。

1:9[編集]

人々親しく我らが汝らの中に入りし状を告げ、また汝らが偶像を棄てて神に歸し、活ける眞の神に事へ、

1:10[編集]

神の死人の中より甦へらせ給ひし御子、すなはち我らを來らんとする怒より救ひ出すイエスの、天より降りたまふを待ち望むことを告ぐればなり。

第2章[編集]

2:1[編集]

兄弟よ、我らの汝らに到りしことの空しからざりしは、汝ら自ら知る。

2:2[編集]

前に我らは汝らの知るごとく、ピリピにて苦難と侮辱とを受けたれど、我らの神に頼りて大なる紛爭のうちに、憚らず神の福音を汝らに語れり。

2:3[編集]

我らの勸は、迷より出でず、汚穢より出でず、詭計を用ひず、

2:4[編集]

神に嘉せられて福音を委ねられたる者なれば、人を喜ばせんとせず、我らの心を鑒たまふ神を喜ばせ奉つらんとして語るなり。

2:5[編集]

我らは汝らの知るごとく何時にても諂諛の言を用ひず、事によせて慳貪をなさず(神これを證し給ふ)

2:6[編集]

キリストの使徒として重んぜらるべき者なれども、汝らにも他の者にも人よりは譽を求めず、

2:7[編集]

汝らの中にありて優しきこと、母の己が子を育てやしなふ如くなりき。

2:8[編集]

かく我らは汝らを戀ひ慕ひ、なんぢらは我らの愛する者となりたれば、啻に神の福音のみならず、我らの生命をも與へんと願へり。

2:9[編集]

兄弟よ、なんぢらは我らの勞と苦難とを記憶す、われらは汝らの中の一人をも累はすまじとて、夜晝工をなし、勞しつつ福音を宣傳へたり。

2:10[編集]

また信じたる汝等にむかひて、如何に潔く正しく責むべき所なく行ひしかは、汝らも證し神も證し給ふなり。

2:11[編集]

汝らは知る、我らが父のその子に對するごとく各人に對し、

2:12[編集]

御國と榮光とに招きたまふ神の心に適ひて歩むべきことを勸め、また勵まし、また諭したるを。

2:13[編集]

かくてなほ我ら神に感謝して巳まざるは、汝らが神の言を我らより聞きし時、これを人の言とせず、神の言として受けし事なり。これは誠に神の言にして、汝ら信ずる者のうちに働くなり。

2:14[編集]

兄弟よ、汝らはユダヤに於けるキリスト・イエスにある神の教會に效ふ者となれり、彼らのユダヤ人に苦しめられたる如く、汝らも己が國人に苦しめられたるなり。

2:15[編集]

ユダヤ人は主イエスをも預言者をも殺し、我らを追ひ出し、

2:16[編集]

我らが異邦人に語りて救を得させんとするを拒み、神を悦ばせず、かつ萬民に逆ひ、かくして常に己が罪を充すなり。而して神の怒はかれらに臨みてその極に至れり。

2:17[編集]

兄弟よ、われら心は離れねど、顏にて暫時なんぢらと離れ居れば、汝らの顏を見んことを愈々切に願ひて、

2:18[編集]

(我パウロは一度ならず再度までも)なんぢらに到らんと爲たれど、サタンに妨げられたり。

2:19[編集]

我らの主イエスの來り給ふとき、御前における我らの希望、また喜悦、また誇の冠冕は誰ぞ、汝らならずや。

2:20[編集]

實に汝らは我らの光榮、我らの喜悦なり。

第3章[編集]

3:1[編集]

この故に、もはや忍ぶこと能はず、我等のみアテネに留ることに決し、

3:2[編集]

キリストの福音において神の役者たる我らの兄弟テモテを汝らに遣せり。これは汝らを堅うし、また信仰につきて勸め、

3:3[編集]

この患難によりて動かさるる者の無からん爲なり。患難に遭ふことの我らに定りたるは、汝等みづから知る所なり。

3:4[編集]

我らが患難に遭ふべきことは、汝らと偕に在りしとき預じめ告げたるが、今果して汝らの知るごとく然か成れり。

3:5[編集]

この故に最早われ忍ぶこと能はず、試むる者の汝らを試みて、我らの勞の空しくならんことを恐れ、なんぢらの信仰を知らんとて人を遣せり。

3:6[編集]

然るに今テモテ汝らより歸りて、汝らの信仰と愛とにつきて喜ばしき音信を聞かせ、又なんぢら常に我らを懇ろに念ひ、我らに逢はんことを切に望み居るは、我らが汝らに逢はんことを望むに等しと告げたるによりて、

3:7[編集]

兄弟よ、われらは諸般の苦難と患難との中にも、汝らの信仰によりて慰安を得たり。

3:8[編集]

汝等もし主に在りて堅く立たば我らは生くるなり。

3:9[編集]

汝等につきて我らの神の前によろこぶ大なる喜悦のために、如何なる感謝をか神に献ぐべき。

3:10[編集]

我らは夜晝祈りて、汝らの顏を見んことと、汝らの信仰の足らぬ所を補はんこととを切に願ふ。

3:11[編集]

願はくは我らの父なる神みづからと我らの主なるイエスと、我らを導きて汝らに到らせ給はんことを。

3:12[編集]

願はくは主、なんぢら相互の愛および凡ての人に對する愛を増し、かつ豐にして、我らが汝らを愛する如くならしめ、

3:13[編集]

かくして汝らの心を堅うし、我らの主イエスの、凡ての聖徒と偕に來りたまふ時、われらの父なる神の前に潔くして責むべき所なからしめ給はんことを。

第4章[編集]

4:1[編集]

されば兄弟よ、終に我ら主イエスによりて汝らに求め、かつ勸む。なんぢら如何に歩みて神を悦ばすべきかを我等より學びし如く、また歩みをる如くに増々進まんことを。

4:2[編集]

我らが主イエスに頼りて如何なる命令を與へしかは、汝らの知る所なり。

4:3[編集]

それ神の御旨は、なんぢらの潔からんことにして、即ち淫行をつつしみ、

4:4[編集]

各人おのが妻を得て、潔くかつ貴くし、

4:5[編集]

神を知らぬ異邦人のごとく情慾を放縱にすまじきを知り、

4:6[編集]

かかる事によりて兄弟を欺き、また掠めざらんことなり。凡て此等のことを行ふ者に主の報し給ふは、わが既に汝らに告げ、かつ證せしごとし。

4:7[編集]

神の我らを招き給ひしは、汚穢を行はしめん爲にあらず、潔からしめん爲なり。

4:8[編集]

この故に之を拒む者は人を拒むにあらず、汝らに聖靈を與へたまふ神を拒むなり。

4:9[編集]

兄弟の愛につきては汝らに書きおくるに及ばず。汝らは互に相愛する事を親しく神に教へられ、

4:10[編集]

また既にマケドニヤ全國に在るすべての兄弟を愛するに因りてなり。されど兄弟よ、なんぢらに勸む。ますます之を行ひ、

4:11[編集]

我らが前に命ぜしことく力めて安靜にし、己の業をなし、手づから働け。

4:12[編集]

これ外の人に對して正しく行ひ、また自ら乏しきことなからん爲なり。

4:13[編集]

兄弟よ、既に眠れる者のことに就きては、汝らの知らざるを好まず、希望なき他の人のごとく歎かざらん爲なり。

4:14[編集]

我らの信ずる如く、イエスもし死にて甦へり給ひしならば、神はイエスによりて眠に就きたる者を、イエスと共に連れきたり給ふべきなり。

4:15[編集]

われら主の言をもて汝らに言はん、我等のうち主の來りたまふ時に至るまで生きて存れる者は、既に眠れる者に決して先だたじ。

4:16[編集]

それ主は、號令と御使の長の聲と神のラッパと共に、みづから天より降り給はん。その時キリストにある死人まづ甦へり、

4:17[編集]

後に生きて存れる我らは、彼らと共に雲のうちに取り去られ、空中にて主を迎へ、斯くていつまでも主と偕に居るべし。

4:18[編集]

されば此等の言をもて互に相慰めよ。

第5章[編集]

5:1[編集]

兄弟よ、時と期とに就きては汝らに書きおくるに及ばず。

5:2[編集]

汝らは主の日の盜人の夜きたるが如くに來ることを、自ら詳細に知ればなり。

5:3[編集]

人々の平和無事なりと言ふほどに、滅亡にはかに彼らの上に來らん、妊める婦に産の苦痛の臨むがごとし、必ず遁るることを得じ。

5:4[編集]

されど兄弟よ、汝らは暗に居らざれば、盜人の來るごとく其の日なんぢらに追及くことなし。

5:5[編集]

それ汝等はみな光の子ども晝の子供なり。我らは夜に屬く者にあらず、暗に屬く者にあらず。

5:6[編集]

されば他の人のごとく眠るべからず、目を覺して愼むべし。

5:7[編集]

眠る者は夜眠り、酒に醉ふ者は夜醉ふなり。

5:8[編集]

されど我らは晝に屬く者なれば、信仰と愛との胸當を著け、救の望の兜をかむりて愼むべし。

5:9[編集]

それ神は我らを怒に遭はせんとにあらず、主イエス・キリストに頼りて救を得させんと定め給へるなり。

5:10[編集]

主の我等のために死に給へるは、我等をして寤めをるとも眠りをるとも己と共に生くることを得しめん爲なり。

5:11[編集]

此の故に互に勸めて各自の徳を建つべし、これ汝らが常に爲す所なり。

5:12[編集]

兄弟よ、汝らに求む。なんぢらの中に勞し、主にありて汝らを治め、汝らを訓戒する者を重んじ、

5:13[編集]

その勤勞によりて厚く之を愛し敬へ。また互に相和ぐべし。

5:14[編集]

兄弟よ、汝らに勸む、妄なる者を訓戒し、落膽せし者を勵まし、弱き者を扶け、凡ての人に對して寛容なれ。

5:15[編集]

誰も人に對し惡をもて惡に報いぬやう愼め。ただ相互に、また凡ての人に對して常に善を追ひ求めよ。

5:16[編集]

常に喜べ、

5:17[編集]

絶えず祈れ、

5:18[編集]

凡てのことを感謝せよ、これキリスト・イエスに由りて神の汝らに求め給ふ所なり。

5:19[編集]

御靈を熄すな、

5:20[編集]

預言を蔑すな、

5:21[編集]

凡てのこと試みて善きものを守り、

5:22[編集]

凡て惡の類に遠ざかれ。

5:23[編集]

願はくは平和の神、みづから汝らを全く潔くし、汝らの靈と心と體とを全く守りて、我らの主イエス・キリストの來り給ふとき責むべき所なからしめ給はん事を。

5:24[編集]

汝らを召したまふ者は眞實なれば、之を成し給ふべし。

5:25[編集]

兄弟よ、我らのために祈れ。

5:26[編集]

きよき接吻をもて凡ての兄弟の安否を問へ。

5:27[編集]

主によりて汝らに命ず、この書を凡ての兄弟に讀み聞かせよ。

5:28[編集]

願はくは主イエス・キリストの恩惠、なんぢらと偕に在らんことを。