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して本氣に論究するだけの價値がない。

 人間の生活上の諸󠄃關係とともに、その社󠄃會的諸󠄃關係とともに、その社󠄃會的生活とともに、その思想、觀念、および見解、一言にすれば、その自覺もまた變化󠄃するといふことを理解するのに、そんなに深い洞察力がいるだらうか。

 古來、思想の歷史が示してゐるところのものは、精󠄃神󠄃的生產が物質的生產とともに變質するといふことよりほかにないではないか。ある時代を支配する思想は、いつでもただその支配階級の思想であつた。

 ある思想が全󠄃社󠄃會を革命したといふことがある。それはただ、舊社󠄃會の內部に、新社󠄃會の要󠄃素が發育したといふ事實、古い生活關係の解體とともに、古い思想の解體が同一の步調をとつたといふ事實を指すに過󠄃ぎない。

 上古の世界が滅亡󠄃に瀕したとき、古い諸󠄃宗敎はみな、キリスト敎に征服された。十八世紀に、キリスト敎の思想が啓蒙思想(合理思想)に壓せられたと