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じくウユルシユヰツツ Wuerschwitz 村に至る。旅舘に歸れば、既に點灯時なり。此日日曜日なるを以て兒童皆新衣を着く。葢し小都會の風然りと爲す。

三十一日。晴、午前七時十五分客舍を出で、デヂツツ Deditz に近き磔柱山 Galgenburg の上に至る。假設敵の陣地に居りて、演習を觀んがためなり。假設敵は少佐フオン、リヨオベン von Loeben 及大尉メツソウ Messow これを率ゐたり。一老翁あり。其女と同じく馬に騎りて來觀す。女兒深碧色の衣を着け、白馬に騎る。衷甸一輛ありてこれに隨ふ。婦人數名を載す。一士官の曰く。是れドヨオベン Doeben の人フオン、ビユロウ von Buelow の一族なり。七女あり。其一は已に少佐某に嫁せり。余前年演習中某家に宿す。主人余等が爲に舞踏會を催す。余も亦其一女と舞ふことを得たりと。十一時舍に歸る。大尉フオン、オヨオル von Oehr, 中尉メエルハイム Meerheimb, 少尉ミユルレル Mueller と共に苑內に午餐す。午後六時將校數十人と會食す。

九月一日。晴、ネルハウセダン祭 Sedanfest の幹事書を贈りて曰く。明日午後八時太陽客舘に於いて興行す。請ふ賁臨せられんことをと。余明日の露營に與るを以て謝絕す。此日演習なし。

二日。晴、午前七時旅舘を發し、七時五十五分ブリヨオゼン Broesen に着す。演習あり。國王來觀す。此日の演習には騎砲兵あり。午後一時ハウビツツ Haubitz 村に接せる郊野に至る。少焉にして會計官數輛の車を率ゐ來る。車には薪、藁及び士官の行李を載す。巳にして哨兵の分遣、卒伍の布置、天幕の開張畢る。兵卒は穴を掘り、負ひ來る所の薄片鐵筒に馬鈴薯及醃肉を盛りて煮、麪包と併せ食ふ。食計官はハウビツツ村の酒店より机卓椅榻を借り來り、將校の爲めに食卓を設く。食器は一行李中に收めて運輸し來れり。行李は小なれども、巧に許多の椀皿を收む。椀皿は皆被陶鐵なり。瞥見すれば陶器の如し。夜帳幕中に臥す。

三日。晴、午前九時三十分假設敵をラアゲヰツツ Ragewitz に襲ふ。十一時ラアゲヰツツ附近に休憩し、グロツテヰツツシユモルヂツツ Grottewitz, Schmorditz を經て客舍に歸る。時に十二時三十分なり。