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Page:Gunshoruiju27.djvu/195

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ても。思ひなをるやうに敎訓すべきが孝行にて侍る也。そも〳〵わが身がおやに不孝なれば。そのむくひに我まうけたる子が又吾に不孝なるべきによりて。其時に思知事有べき也。凡夫の習。內典外典にいふがごとくうつくしくはふるまはれぬことなれど。その道理をば誰々もよく心得給べき事なるべし。

一正直をたとぶべき事。

佛の敎には正直捨方便と說給へり。八幡大菩薩の御詫宣にも神は正直のかうべに宿り給ふとのたまへり。正直といふはたゞ直なる心也。心ゆがみぬれば。身に行こと一としてゆがまずと云ことなし。他人に對してもよき人をば能と思ひ給ひて勸賞を行給ふべし。あしきものをばあしきと思ひ給ひて制罸をくはへらるべし。是則正直の心に行はるゝ正直の政也。正直の心のたとへを申には。鏡に過たることはなし。みめよき人が鏡にむかへば。みめよきかげを移し。みにくき人がかゞみにむかへば。みにくきかげをうつすがごとし。是によりて佛の智惠をば大圓鏡智と號て。かがみに是をたとへ。神の御正躰といふも。鏡にかたどる成べし。

一慈悲をもはらにし給べき事。

慈といふ文字は拔苦といふ心也。悲といふ文字は與樂といふ心也。佛の御心には衆生のために苦を拔て樂をあたへんとおぼしめすが慈悲の文字の心也。外典の書には是を仁となづけ侍り。仁といふは人を愛する心也。言葉こそかはり侍れ。心はたゞ慈悲の文字に相違なき也。すべて烏獸も手馴てかふとなれば。不便におもはるゝもの也。况人たるものをばをしなべて哀憐の心をたれさせ給はんが仁君の行にて侍るべし。仰此十餘年。上下万民