コンテンツにスキップ

楫枕

提供:Wikisource

空艪からろ押す水の煙のひとかたに、靡きもやらぬ川竹かはたけの、うきふししげき、繁き浮寝うきねとまり舟。寄るよる身にぞ思ひ知る。浪か涙かとまる露か、れにぞぬれし我が袖の、絞る思ひをおしつつみ、流れ渡りに浮れて暮らす、心尽こころづくしの楫枕かぢまくら。さして行衛の遠くとも、つひに寄る辺は岸のうへ、松のかたき契りをば、せめて頼まん頼むは君に、心許して君が手に、結びとめてや、千代よろづ代も。


  • 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』上、武蔵野書院、1975年。

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。