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大政翼賛会発会式における近衛総裁の挨拶

提供:Wikisource


わが国は正に一大転換期に際会し、外に善隣との盟約を固うし、内に新体制を樹立し、大東亜の新秩序を確立するとともに、進んで世界新秩序の建設に邁進致さねばならない時が参りました。

政府は聖旨を奉戴し、現時の国際情勢に鑑み、高度国防国家の体制完遂に対して全力を挙げつゝあるのであります。高度国防国家の建設は、政治、経済、文化等の各部門において過去における一切の殻を捨て、新しき目標に向つて一億一心の協力態勢を整備し、また国家機構の各部門をして最も円滑なる有機的回転をなさしめることによつてはじめて可能となるのであります。

現内閣成立以来、内閣を挙げて、新政治体制の実現に対し絶大なる共鳴と協力を得ましたことは、真に感謝に堪へません。こゝに本日、大政翼賛会発会式を挙げ、万邦無比の国体に基き、世界に比類なき理念の上に大政翼賛運動を本会の推進によつて発足するに至りましたことは、真に御同慶に堪へないところであります。

申すまでもなく、今やわが国は、明治維新にも比すべき重大なる時局に直面して居ります。わが大政翼賛の運動こそは、古き自由放任姿を捨てて新しき国家奉仕態勢を整えんとするものであります。歴史は、今やわが国に対し重大なる時局の到来を告げつゝあります。大政翼賛運動の将来は、真にわが国家の運命を決するものであり、しかも本運動の遂行は容易の業ではありません。われわれは前途に如何なる波乱怒濤起るとも、必ずこれを乗り切つて進んで行かねばならぬのであります。本運動の発足に当り、私はその推進的原動力となつてこの難事業の完成に協力せられる役員諸君に、衷心より敬意を表するものであります。各位はこの重大なる使命達成のため、挺身これに当られ、大御心を安んじ奉り、忠誠の実を挙げられんことを切望してやまざる次第であります。

最後に、大政翼賛運動綱領については、準備委員の会合においても数次、真剣なる論議が行はれたことを承つて居ります。しかしながら、本運動の綱領は、大政翼賛の臣道実践といふことに尽きると信ぜられるのでありまして、このことをお誓い申上げるものであります。これ以外には綱領も宣言もなしといゝ得るのであります。もし、この場合において、宣言綱領を私に表明すべしといはれるならば、それは「大政翼賛の臣道実践」といふことであり、「上御一人に対し奉り、日夜それぞれの立場において奉公の誠をいたす」といふことに尽きると存ずるのであります。かく考へ来つて、本日は綱領、宣言を発表致さゞることに私は決心致しました。このことを付け加へて明確に申述べて置きます。

この著作物は、1945年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。