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ス』、『クリティアス』、『ティマイオス』等これに屬す。此等の著述はプラトーンが第三回シシリー漫遊の前後に成れるものと見て差支なかるべし。此等に於いては明らかにピタゴラス學徒の影響を認むることを得。

プラトーンが老後の著作として見るべきは『ノモイ』(法律)なり、これに於いて彼れがイデア論は全然ピタゴラス學派の數論によりて改造せられたり。此の『ノモイ』を以て彼れが最後の著作と見るを得べし。


ディアレクティック

《プラトーン哲學の出立點と新哲學の組織。》〔四〕プラトーンが哲學の出立點はソークラテースが知見を明らかにし以て道德を樹てむと志したる所にあり。前に述べたるが如く不完全なるソークラテース學徒等も多少師の敎學に影響せられたる所あれども未だ能く其の本旨を十分に看取してこれを受け繼げる者とはいふべからず。プラトーンは實に之れを繼ぎて其の哲學の大眼目となせり。

ソークラテースは吾人の知識を以て事物の遍通不易の性を看取するに在るもの