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桑畑の灯


桑の若葉の

畑のどこかに

夜になると

小さい 灯がともる

絲くる やさしい

姥と

眼の大きい啞の娘と

紅い脚の鳩が

むつみあひ

しづかに うつくしく

生きてゐる

わたしのこころは

漂泊人さすらひびと

疲れたあしで

昨日も今日も

あかりのありどを

たづねてゐる

逝󠄁く春の賦


いまだ住みつかぬ村に

見しらぬ兒らと

遊󠄁ぶはさみしや

たそがるゝ

わが窗にきて

匂ひすみれの花󠄁びらなど

もてあそびつつ

たぬしげにたはぶれてあれど

やがて夕闇ふかうなれば

それぞれにわが家の

灯のもとに歸りゆけり

さあれ われはいづちゆかむ

わが魂の歸るかたありや

見しらぬ兒ら殘しゆける

金平󠄁糖二つ

たなそこにのせ うちゆすり

かちかち鳴るをきゝてあれば

われはさみしや

われは大人はげにもさみしや