Page:NiimiNankichi-NurseryRhymes and Poems-2-DaiNipponTosho-1981.djvu/33

提供:Wikisource
このページは検証済みです

そこには春の

うれしき色にたゝへたらむ

そこにはいつも

わがかつて愛したりしをみなをりて

おろかに心うるはしく われを

待つならむ

物よみ 草むしり

小さき眼を黑くみはりて

待ちてあらむ

あれ けふも みなみにゆく電車に

わが おもひのせてやりつれど

その おもひ とゞきたりや

葉書のごとくとゞきたりや


淡雪󠄁


大府の驛の

からたちの垣根に

春たつ あした

淡雪󠄁はふれり

北より汽車は

入り來りて とゞまり

またするすると去りゆくなれど

わがおもふをみなは

その汽車にのりをらず

かのをみなは遠󠄁きみやこにあり

來むといひしにあらねば

せんなきながら

おもへどもすべなきながら

からたちの垣に

ふる淡雪󠄁の

ふりみふらずみ かそけくて

ついにとゞまらず