341
衆生の愛せるもの、喜べるものは、過ぎ行くこと疾し、此の欲に湎れ、樂を求むるもの、彼等は老死に至る。
342
欲に纏はれたる衆生は、罝に囚はれたる兎の如く奔馳す、結使の爲めに縛せられ、再再苦に逢ふこと久し。
343
欲に纏はれたる衆生は、罝に囚はれたる兎の如く奔馳す、されば離塵を望める比丘は、己の愛欲を斷つべし。
344
人の(3)矮林〔=欲〕を去りて、(4)叢林〔=欲〕に入り、一林〔=欲〕を脫れて一林〔=欲〕に入るもの、此の人を見よ、〔縛を〕脫して而も縛に赴くなり。
345
鐵や、木や、又は草にて作れるものは、賢者は之を牢き縛と稱せず、珠環と、妻子との欲は貪著する所强し。
346
賢者は、之をぞ强くして〔人を惡趣に〕墮し、牢くして解き難き縛と云ふ、人は之を破りて、無欲〔の身となり〕、愛樂を棄てて出家す。
347
欲を樂しむものは〔欲の〕流に隨つて下ること、蜘蛛の自ら造りたる網を〔下る〕が如し、賢者は之を破りて、欲なく、所有ゆる苦惱を棄てて去る。
348
先なる〔=過去〕を棄て、後なる〔=未來〕を棄て、中なる〔=現在〕を棄てよ、〔斯くするものは〕生有の彼岸に到れるなり、一切處に著心なければ、更に生老に絆さるることあらじ。