なし。
135
牧牛士の杖を以て〔制し〕、牛を牧場に驅るが如く、等しく老と死とは有情の壽命を驅る。
136
愚者は罪業を犯して覺らず、無智の輩は己の業に惱まさるること、猶ほ火に燒かるるが如し。
137
暴意なく害心なきものの中にありて、暴を加ふるものは、疾く十處中の一に陷る。
138
酷痛、損失、形體毀傷、重症に逢ひ、又た心散亂に至る。
139
王禍に逢ひ、嚴しき誣吿を蒙り、親族滅び、家財喪亡す。
140
或は又火の彼の家を燒くことあり、形體壞れて後無智なる彼は(1)泥犁に陷る。
141
裸行も、結鬘も、泥も、斷食も、又た露地臥も塵垢を身に塗ることも、不動坐も、未離惑の有情を淸うすることなし。
142
身を嚴飾せりとも、平等に行ひ、寂靜、調順、自制あり、梵行を行ひ、一切生類に對して(2)害意を抱かずば、彼は婆羅門、彼は沙門、彼は比丘なり。
143
慚恥によりて制せられて、〔他の〕批難を意とせざること、良馬の鞭を〔意とせざる〕が如くなるもの、〔斯の如きもの〕誰か此の世にありや。
144
鞭にて打たれたる良馬の如く、汝等も亦專心・銳意なれ、信心・持戒・精勤・禪定・正決斷によりて、汝等は明と行とを具し、正念を有し、此の大いなる苦惱に勝たん。
145
(3)渠工は水を導き、箭匠は箭を矯む、木工は材を曲げ、賢者は己を調ふ。