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イルソンに關する批判は歷史自らがすでに雄辯に物語つてゐる。彼の名は各時代を通じて最も低劣な食言と切つても切れぬ緣を有してゐる。彼の破約は所謂敗戰國は素より戰勝國さへその民族の生活を混亂せしむるに至つた。ウイルソンの食言だけで捏ち上げたヴエルサイエ宣言は幾多國家を分裂に導き、文化を破壞し、あらゆる國家の經濟を崩壞せしめた。然かもウイルソンの背後に、これに關心を寄せつつある財閥の一民が控へ、これが此の小兒痲痺症の敎授を驅使しつつアメリカを戰爭に驅り立て、巨利を夢みてゐたことを我々は今にして知つたのである。

 ドイツ民族はかつて一度は此の人物に信賴を寄せたが、これが却つて仇となりドイツ民族は嘗てその經濟的、政治的生存の崩壞と云ふ代償を拂つたのである。然るにかうした數々の苦い經驗に性こりもなく復しても新規の大統領が現はれ、戰爭を勃發せしめ、何よりもドイツに對する敵意を戰端を切るまでに高めることを以て、己が唯一の使命と心得てゐるのは何故であらうか。

 ドイツに國民社會主義の勃興を見たのはルーズヴエルトの合衆國大統領當選と同じ