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輕くす、芻秣時を以てすれば則ち、馬、車を輕くす、膏鋼餘りあれば則ち、車、人を輕くす、鋒銳く甲堅ければ則ち、人、戰を輕くす。進むに重賞有り退くに重刑あり、之れを行ふに信を以てし、審かに能く此れを達するは勝の主なり。」武侯問うて曰く、「兵何を以て勝をなす。」起對へて曰く、「治を以て勝をなす。」又問うて曰く、「おほきに在らざるか。」對へて曰く、「若し法令明かならず、賞罰信ならずば、之れに金うつも止まらず、之れに鼓うつも進まず、百萬ありと雖も何ぞ用ふるに益せん。所謂治者は、居るときは則ち禮あり、動くときは則ち威あり、進むや當るべからず、退くや追ふべからず、すゝしりぞくに節あり、左右麾に應ず、絕つと雖も陣を成し、散ずと雖も行を成す、之れと與に安く之れと與に危し、其衆合ふべくして離るべからず、用ふべくして疲らすべからず、之れを往く所に投ぜば天下能く當ること無し、名けて父子ふしの兵といふ。」

 吳子曰く、「凡そ軍をるの道進止の節を犯すことなかれ、飮食のほどを失ふことなかれ、人馬の力を絕つこと無れ、此三者は其上令に任ずる所以、其上令に任ずるは則ちよつて生ずる所なり。若し進止しんしあらず、飮食いんしよくてきせず、馬疲れ人倦んで解舍せずば、其上令に任ぜざる所以なり。上令旣に廢するや、以て居るときは則ち亂れ、以て戰ふときは則ち敗る。」

 吳子曰く、「凡そ兵戰の場、立屍の地、死を必すれば則ち生く、生を幸すれば則ち死す、其善將