り。
第四章 「アイヌ」の敎育
(一)アイヌ種族には文字無し
アイヌ種族(しゆぞく)に文字(もじ)無(な)かりしは、第(だい)一章(しやう)第(だい)二項(かう)に述(の)べたるが如(ごと)くにして其(そ)の往時(わうじ)の歷史(れきし)を知(し)るに甚(はなは)だ困難(こんなん)なり。故(ゆゑ)に彼等(かれら)の信(しん)じて相(あひ)傳(つた)へし傳說(でんせつ)の如(ごと)きも、果(はた)して事實(じじつ)なりや否(いな)や疑(うたが)はしきものあり。
オタルナイ(小樽(をたる))の岩壁(がんぺき)に書(か)き殘(のこ)せる彫刻(てうこく)は、アイヌ族(ぞく)の文字(もじ)なりと云(い)ふものありしも、近年(きんねん)に至(いた)りて、然(しか)らざること明白(めいはく)となれり。