刑罰(けいばつ)を受(う)けしものは、終身(しうしん)不具者(ふぐしや)となり、他人(たにん)の恩惠(おんけい)に依(よ)り、其(そ)の日(ひ)の生活(せいくわつ)を續(つゞ)くるの悲境(ひきやう)に沈淪(ちんりん)するものなり。
現今(げんこん)の土人(どじん)は、以上(いじやう)に記(しる)せし如(ごと)き裁判法(さいばんはふ)は、旣(すで)に時勢(じせい)に適(てき)せず、兒戱(じぎ)に等(ひと)しきものとし、絕(た)えて之(こ)れを行(おこな)はず。
第三章 アイヌの宗敎
(一)宗敎及び其の由來
舊土人(きうどじん)は其(そ)の信仰(しんかう)(崇拜(すうはい))する神(かみ)甚(はなは)だ多(おほ)く、神(かみ)によりて禮拜(らいはい)の儀式(ぎしき)もそれ〴〵異(ことな)れり。但(たゞ)し女(をんな)は祖先(そせん)を拜(はい)する外(ほか)、一切(さい)神事(しんじ)に與(あづか)ること能(あた)はず、故(ゆゑ)に祈願(きぐわん)せんとすることあれば男子(だんし)に依賴(いらい)せざるを得(え)