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(一)アイヌに於ける變死の知らせと禍難の知らせ

 變死と云へば何人も忌避ふもので有るがアイヌに有つては、殊に嫌ふ。此處に變死者あれば其部落より二人乃至三人の者が(エムシ)刀劍を以て次の部落へ知らせに行く。部落近くに行くと、ホホホホーと高聲にて叫ぶ、左すれば、部落にては何事ならんと、刀をぬきて出迎ふ、知らせの者刀の振り樣が山の方へ向へば山の變死、又海の方へ向ふと海の變死なる事が判る、併して(互)に會して變死の狀況を詳かに話合ふのである。

 禍難の時は之と同樣で有るが刀劍を用ひず、イナホ御幣を用ゐるので有る。併して葬儀は葬式の部に記述しあれば之を詳略す。只葬式の際は前記の如くにして大勢刀劍を以て、異樣な聲を發して、呼びながら變死の個所近くへ葬るのである。

 榮濱に屬する前記のシユマヤも元土人の部落で有つたのが漸次他に移轉したのである。

(二)オチヨココツセ

 サカエハマとナイブチとの間にはオチヨココツセと云ふ所が有る。其地の解は其處の山方に元の內淵川が北方へ川口が變じたる爲め其處が沼となり其處より少しづゝ水が海に流出するの意味で有る。