うたた寝の、枕に響く暁《あけ》の鐘、実《げ》に儘《まま》ならぬ世の中を、何にたとへん飛鳥川。昨日の渕は今日の瀬と。かはりやすきを変るなと、契りしこともいつしかに、身は浮き舟の楫《かぢ》を絶え、今は寄る辺《べ》もしら波や。棹《さほ》の雫《しづく》か涙の雨か、濡れにぞぬれし濡れ衣《ころも》、身に沁《し》むけさの浦風を佗びつつや鳴く磯千鳥。
- 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』上、武蔵野書院、1975年。
この作品は1899年3月4日以前に公表されたもので、作者の死亡から100年以上経過しているため全世界でパブリックドメインの状態にあります。