甲陽軍鑑/品第四十四

 
オープンアクセス NDLJP:196甲陽軍鑑品第四十四 巻第十六

一太刀折紙之事  一幕之事付樽肴持出事并時之太皷之事  一湯浸ゆづけ之事菜数七五三也  一七膳之事  一三ツ点心之次第  一軍陣之時引渡之次第  一かん之事  一汁の有饅頭之事  一橐仕やふくろ立事  一銚子提子ひさけ之事付盃事  一着物出す事  一馬道具并馬請取渡事

品第四十五

一寸法之事  一具足昇出、付り甲の事  一决拾ゆがけ之事  一鞭之事、付り小刀渡之事

品第四十六

一軍陣之時之事  数ケ条

太刀にも刀にも目がねと云ふ事専一に候、太刀渡候に真草行三の心得有之、太刀のつばの下に折紙を置出す事、上、其次に小刀櫃の通りに置は、中、其次つねの類なり

〈[#図は省略]〉かもさきとも云ふなり

草は一重に引返しとむる

真軍陣はかもさきにする也

常の太刀帯とり一重に留

折紙也上也、軍陣の時はあしあひを、かもさきと云ふ也

折紙ばかりをば右にて出し又右にて請取なり

太刀折紙の時は何時も左に折紙を持、右に太刀を持出なり、同じく請取もそのごとく請取なり、口伝

太刀は柄を貴人右の方へして出し置也惣別常の人へも其分也、又刀は貴人其外の人左へ柄をして、いだすべしさるほどに、刀はむかふの人、ひだりへ、ひざを中にあて、太刀はむかふの人身躰のまんなかをあてるなり、心のこあてなり、又貴人に御目にかくるにはかうがいの方をよく見せ申、さて小刀櫃の方を、御目にかくるなり、例のごとく柄を貴人の右のかたへし、見せ申、さて我右の方へ、かへるなり、脇指も右同意也、能々可口伝

脇指も刀のごとく出し、可請取貴人にみせ申時、口伝有

長刀は、何れも石つきを先へ成様に出す又吾前へ刄の成様に可出、軍陣の時は、はの方を向へなして出すべし、請取様に口伝有

オープンアクセス NDLJP:197鑓も常は石付の方を向へして出すべし、又軍陣の時はさきを向へして出すべし、同請取様に、口伝有

  進上                   進上
御太刀    一腰  兼光        御太刀    一腰
御馬     一疋  月毛印、雀目結   五百疋
千疋

  巳上 巳上

武田治部丞   勝長

  進上 進上

鴈   一     千疋       五千疋三千疋などにては此分に候百貫文以
鯛   一折     巳上      上は千貫文などゝ書候て可然候又女房へは
昆布  一折      名字     千ひきとかなに書候しん上もかなにて候
御樽  三荷       名乗
  巳上
   名字            しん上
    名乗         くゝゐ      一
               たい       一おり
太刀    一腰       ながあはび    一おり
馬     一疋       くまひき     一おり
  以上           こぶ       一おり
   名字          御たか      五か
是は等輩也 名乗          以上
 もりみんぶのぜう
 さだのぶ
   うつし 是は女房の方へしたゝめよう

連署の状上巻うはまく 同連判の次第
 
一山川殿   月日
二谷口殿
三野口殿
元泰
元俊
重隆
忠吉
安清
奥一人を賞翫

 連署並連判の事

御進発来二十日必定之上者各至西岡馳参忠節其働忠賞候恐々謹言

 七月日   筆者日の下に仕候 上巻


此方

それ幕者、軍旅之宝器也、されば張良は、籌を迴帷幄之中勝事决千里外帷はかたびらとて、幕のすこしき物也、帷者幕に同、此内にて士卒を成敗し、怨敵を退治せんことを思慮すべし、此幕仕立べきと思はゞ、吉日良辰を撰べし、金剛峯日〈[#「峯」は底本では「奎」]〉、壬、癸日を用よ又可〈[#返り点「レ」は底本では「一レ」]〉忌日は、甲、乙、庚、辛日、辰、午、申、酉、戌日、を除くべし、又我衰日六害の日を用ゆることなかれ

六害の日は正ハ巳 二ハ辰 三ハ卯 四ハ寅 五ハ丑 六ハ子七ハ戌 八ハ亥 九ハ酉 十ハ申 十一 ハ未 十二ハ午

幕のちの中へ入事  臨兵闘者皆陣烈在前、怨敵消滅悪魔降伏怨敵消滅、天地和合皆令満足、過去現在未来  以此名字仮名実名判迄入る也

まづ十文字よりぬいはじむるなり

〈[#図は省略]〉

頼光の時

七曜  九曜

これよりぬいはじむるなりいづれもくろ針にぬう也

○幕のつな両のはしをかねの四分に留、同七分前を白にてと、青とにてわなにするなり口伝なり結をゑ、ふし二ツなり

オープンアクセス NDLJP:198縄左    縄右        ぬゑをいてをさむる時の乳の付やう也

  乳三十三に露元取仕立なり    乳二十八に被仕也

幕仕立る時糸太糸 六十筋 例式之糸 六筋に合たる可太也長さ例式のごとくなり

つな幕の外出事は、一方へ壱間々けんま中づゝ、両方へ三間と可覚、敵の幕をば、ひきまはひて見へたると申也

味方の幕をば、打といふなり

狩の幕串をば、五のにあてがひ地の堅き、やはらかによりてきる、寸は不定、芝摺と、地の上の間三寸にうつなり、但し五寸にも吉、口伝有なり

軍陣の時は芝打と云ふ常のは芝摺といふなり

みのゝ上へ紋を出す事は有之、くつといひて下へは不出、但し他流には下へ懸るもあるよし候也

横は布はゞ次第、長さは五間ま中ある布を尋ね目のあき所は不定、もんのあひにあくる

目いづれも広さ、かねの五寸にあくる

幕の出入之事、そとへむしやうにあくる也入時も其ごとく也、本式は、ひるは日の物みより出て、月の物見より入なり又夜は月の物見より出て日の物みより入へきなり

物見よりそとをみるには月日の物見よりは大将見る間、只人は見まじき也、よの物見より可見、昼は日の物見より見、夜は月の物みよりみる也

幕五のに、地水火風空を定めらるゝは  延喜帝同臣下時平しへいの大臣、天神天神は菅公ヲ云フナラン合せて三人談合にあそばす、其時風は無体の間、不書候由有之に、時平大臣草木ゆるぐが、体なりとて、天神に此勘文かんもんを語りてゆるし給ふ間書給ふ同、空も体なしとて、天神あそばさず候を是も体ある子細、被仰聞て体は点のあるが体也とて、かき給ふ又時平大臣は天神より少し年まし也天神は物書なるに付て筆者也

空の体ある語、月隠重山兮撃扇喩之風体の有語、風息大虚分動樹教


多門阿閦


持国宝勝





増長弥𨹔


広目釈迦
一ノ幅
冠野
天書
冠頭幅

耳付
霞ノ野
廿八宿
心内幕―――
黄金
三十
二想

虚空


 口伝源
二ノ幅







ナレバ







 口伝深
三ノ幅
(妙ア
弥陀)
日モ軍吊
(法
釈迦)
平生
(蓮
大目)
宝平生
(花
阿閦)
モ軍吊
(経
薬師)
口伝
勝ノ幅














地ノ幅
沓野






黄金






○耳之事白十三紺八ツあさぎ
芝摺野 幕ノ手ノ事、例式ハ打交タル
ヘシ白紺あさぎ他但地白ノ幕ハ手
イツレモ白布ヲウツヘシ
官軸野



○物見数九ツ上二ヲ月日ノ物見ト云

一二寸中三下四巳上、七曜ニ表
ス物見ノ広サ八寸二也幕ノ手ヲ三
色ニスルコトハ天地人ノ三才也白
ハ天黒ハ地青ハ人也

〈[#図は省略]〉


一番
广
消滅


二番

和合
三ヿ地


幕仕立る時、足踏、春は桃の木、一尺二寸にきり、うらの方を左へして置、こゆるなり、夏は香炉の火を越へ秋は金を越包丁を置、はの方を向へして置なり、冬は水

オープンアクセス NDLJP:199降伏
包丁
桃ノ木モ如此也
〈[#図は省略]〉 足ぶみをして、三ツ盃にて
酒有候也

幕仕立る時祝の事靴形くわがたの餅を十二きれを一所に置、是を諸神諸菩薩に、供ずる也〈[#図は省略]〉此分也、又一畳に五きれづゝ阿弥陀、釈迦、大日、阿閦、薬師とて五きれづゝ五所に置候へば廿五きれなり、さやう候へば諸神の餅と三十七きれなり、幕二畳には諸神の餅二十二、幕の餅五十きれ、合七十二きれなり

餅は白餅赤餅取合て供するなり

幕の餅は靴形正月かんの餅は、四方切目也、又そなへの上に置は、ひしにきるなり

幕二畳ながら一声に打候、て餅を饌又膳、同三ツ盃をも五所に饌るなり、盆は公饗くぎよう然は足付か、鉋懸かんながけか依時何成共、幕祝の時は飯はなし餅ばかりなり、幕祝の餅、同具足餅などは手にてひつきりて不食其まゝ可食歯の跡のなきやうに一文字にすきと食なり

幕仕立初は、布を揃置て、曳渡しすべて、三ツ盃を出し、つくばいてのむ又酌の人も、つくばいて取也、くはへの人も同前也

仕立はじめはひきわたしの酒を、先吾呑、幕にさして、其上足ふみをして惣の五の布に、刀めを三刀づゝ、あつるなり、又あつるまねをもするなり

仕立納ても、幕に餅を、皆々に供して、酒を呑て、総の餅一所に置、月に供じたるを、内方へ餅酒をこし、日の餅酒を各へ振舞ふ也

幕ことく出来してはさきのごとく、二畳を一畳に重ねて、打てはらひを家中の久敷人にもたせ、大将出入するなり、先ツ月の下より出、日の下より入、又其次に阿関大日の下より出、釈迦大日の下より入なりさて其後は日の下より出て、みなに酒をもる也同餅をもくるゝなり

八ツより前は、日の下より出て、月の下より入なり、八ツより後は、月の下より出て日の下より内へ入なり、口伝

幕の時も肴は打て勝て悦なり、仕立初も、仕立の後も同じごとくの肴なり

近江国、まかりの御陣の時、常徳院殿御時、幕の打様、又軍陣のは、幕串のうちに幕を打なり、是は大秘事口伝に有之、右の常徳院殿改め御定被成となり、但しうちに幕を打事は、相伝なくしては不打、留様は、ひるは月の方を引返すなり、日の方を引とをすなり、此時小笠原民部少輔子 公方の幕を打なり、他流によりて、一番合戦にまくる、其上吉良きらの弓法証拠にして、吉良きら殿より幕を御打あるによりて、後の合戦に悉くきい勝給ふなり、其時落書には

 きさらぎの中の十日の御同座は釈迦の入滅おはり也けり

樽肴の事、食籠じきろうなどや、鱈鮭以下珍物の肴をば、樽の先に持出す、又首尾計りの肴ならば、樽をさきにもちて出るなり

精進と魚類あらば、精進を先に、魚類をあとに出すなり、其次に樽を出すなり

鳥類魚類は頭の方を先に、肴の台にすへて可出なり

時の太皷は、源三位頼政ぬゑをいけるときより始まる也

申の頭   寅の尾とうつなり

   申はひるなり   寅は夜のひるなり   右口伝有

湯浸ゆつけ之事   さい数七五三なり

 

 

―汁鱈か鮭か

―汁何なりとも魚すはる

  まゑつめ

すはま  汁なと有

〈[#図は省略]〉

 ┏ 水又熟柿じゆくしをも置也菜にあらず○○○
○○
○○○

○―
―塩
―飯
┗浸物

オープンアクセス NDLJP:200 右まへつめには船
などをかざるなり
 


 


―汁白鳥
菜は三七

七の膳之次第 △三ツ点心之次第

 酢菜

すさいか
┏ 山桝の粉か

 
 
一はうはんかこづけかこづけの時はしるあるべし
二もち
三めんす
┗魚類か何成共



 



 

―二


 





 





 

○ ○

○ ○

○ ○
 


――




――


 

 

 


―汁

   右前々に後すへ候所よりあげ候也


芳飯の事常よりめづらしき仕立なり

から皿引物いくたびもあるべし―

 

――飯ばかり
 ┗飯の上盛道具を此皿にもるなり

軍陣之時引渡之次第

 出陣〈[#下図の「絵」はそれぞれ昆布、搗栗などの絵]〉

昆布

搗栗かちくり


 


熨斗
出陣の時は勝て討て悦ぶ也帰陣之時は討
てかちてよろこぶなり

熨斗は何時も細き方を右へする也

 昆―
熨―
搗―


○○○
 

盃を添て出時は如

摠別軍陣、よめとり、むこ取の時は大略五ツヽおき候て然るべきなり
○出陣の時は曳渡其上酒一献也、本式は足踏可之爰に肝要の習あるなり
○出陣の時の足踏も酒過て也

昆布は二きれか五剪七剪可然也口伝、栗肴三か五七也口伝

羹之事

2:薬共あつめ入也
茶匙さじは木にてけづりすべし湯盞也
〈[#図は省略]〉
出時は
如此
同じ湯盞
〈[#図は省略]〉
後は如此なをすなり


右終て後

かんくいあくれば
如此むしむぎを三
づゝすゆるなり

菜はなし
┏吾右よりすゆればこゝに三ツのわをかさねて

○○




鼈羹か
魚羹か羊羹か何なりとも
┃    ┗此羹くいあくれば、むし麦をすゆるなり
┗左の方よりかよいの衆すゆれば、左に三ツながら重ねてなをす也

  羹は三剪づゝすゆべし、くふ様いやと思はゞ先一きれをさばにする也〈[#下図の「絵」はなんらかの絵]〉

  ┏右よりすゆればかくのごとくかさねなをすなり







 
 


 
┗左よりすゆれば爰に如此かされなをすなり


オープンアクセス NDLJP:201汁の有饅頭の事    菜はなし但他流は菜あるよし候なり

爰にかくのおしきをおしきてのちに―
そうめんをひく也



 

―冷汁

―饅頭
右まんぢう過て、其まゝ索麺をひくなり

折供饗おりくぎやうの物に、箸をすゆる事有之、先の方にすゆるを、肴引人是を取に、左の手にて取りて、右へとりなをして、さかなをはさみまいらすべく候なり

 

    御献立之次第

初献   御引渡    搗栗五昆布五   熨斗 五

二献   御雑煮    焼鳥五種亀ノ甲  御さらに御箸 巳上

三献   御鰭の物   小鱧こんきり味噌付角之子  鯛  御箸

 


 御本膳
雑韲あへませ   屈輪鱻儀くりこき   御汁 鶴
  鮒鱠             山桝  御箸同台
御香之物   鶉焼鳥  御飯

 御二之膳
蒲穂子かまほこ小鱧とんぎり、鳥冷汁、   貝鮑 御文有指躬さしみ、鮎鮓、鯛

 御三之膳
海月くらげ摺熨斗ちゝみのし 真羽煎まはいり 桶 御文有塩引、和魚わけもの 鯉

 御与ツめ
酒鯛 辛螺 輪金御文  鱈 昆布

 御五ツ目
舟盛、    小串  一献煮

 御六ツ目
唐送からくり

 御七ツ目
鱗煮うろこに

   己上

 

御菓子七種
釣柿二ツへた金銀

寸金羹数九亀足ス

金柑数十一露有
 紫菜あまのり貝づくし金銀

蓬莱島松竹梅椿洲浜
橘上苔二亀有なり
姫胡桃数七帯金銀
ゆふくろ仕立事
縫やうはつまみぬいか、又袷ぬいにもするなり
〈[#図は省略]〉黒革か御めん革か
右同装束革の事也
○上のくゝりてあまりをば、七寸斗可出なり
○軍陣のは下もとはずの余りは三寸ばかり可然なり
 装束の革は黒革御免たるべし

 

笠袋装束革の長き一尺三寸斗広さ二寸五分斗なり

   ┌装束革黒革御免革
┌──┴
くゝりあまりをば三寸可然なり
〈[#図は省略]〉
ぬいやうは是もつまみぬいにも又あはせぬいにもするなり
笠袋の飯を馬の大豆入たるの口伝

比叡山に居て人を取其上丹波の大江山にて、鬼の城とて、城堺をかまへて居たるを、酒天童子といふなり、其時満仲の御子、嫡子頬光、頼義、美女御前

    酒天童子頼義の参る酒を入なり
左座
上面
右座

〈[#図は省略]〉
童子のむ酒をば、きつたてへ此所より入也

頼義参る酒をば此所よりきつたてへ入也

  頼光

オープンアクセス NDLJP:202 爰にけしやうとて水引七筋とんばうがしらをゆふべし

但しこゝをばちいさきとうばうとするなり

〈[#図は省略]〉

此内を七ふしにすべし、真の時也、草の時はゆふべからず

爰にも上のごとく松ゆづりはをつゝみ入也

爰に正月のは松にゆづりは取合せ三松程つゝみ入也

此口包なり蝶花がたなればきくわくづゝみにつゝむ也

爰にけしやうとて水引五筋にてとんぼうがしらをゆうなり

   爰は何時も三ふしに定る也

如此ゑの内を、九水引にてまきふしあり、ゑの、まがりたる所の下を三ふしにする、以上十二月を表す、又閏の月ある時は、長ゑの方を拾にふしをするなり

   如〈[#返り点「レ」は底本では「一レ」]〉此真の時は内を九ツに包也

とんばうがしらは聟取よめとりのは、水引五筋づゝにてむすぶべし、其時は松に椿を取そへ、二所ながらにつゝみ入なり

右銚子の内七ツに結ぶ時は、きつたてのを、内をば九ツにつゝむなり、是は真の時なり

口包は如此なり草の時内をば不

〈[#図は省略]〉

  爰右のごとく三ふしなり
如右九ツにまく九ようと可心得
草の時は九ようとこころへあまくだるを十二月に観念すべし

      如此草の時は七ふしに包也

銚子をも提子をも、みなかもさきにむすぶなり、口伝

惣別何時も九曜七曜と可心得なり

順の逆、逆の順、逆の逆、順と順の云ふ事、能々可心得

   順
   左
  上面 酌の人
   右
   逆

銚子の請取渡しの事、順は柄を我左へして可渡なり、逆の時は柄の方を、右の方へして渡すなり

銚子の請取やうは、順の時も逆の時も、吾手を、両方ながら下へして、可請取なり

きつたては、順逆により、上手下手あり、口伝

 常のはこゝにてくはゆる也
 くわへの人
  上面 銚子酌人
 軍陣のは、爰にてくわ爰にてくわゆる也
 くわへの人

右軍陣又聟取、婚、三献の時ばかり也  酌とるにも真草行有之なり  聟取、婚には女酌をとる也

引渡し過て雑煮、々々過て吸物、以上三献なり、其上飯也、初めは婚には曳渡しの時、三ツさかづき出して待女房はじむる也、二度目雑煮の時の盃嫂始る、三番目吸物の時の盞を、男始る也、盃の台供饗なり




 
○ 
○  


女は爰に盞を重る也、一づゝのみては重々して三度のみ、さていつものごとく中になをす也  


○  

 




―――――男は爰にかさぬる也

着物出す事、女は右の袖を上へなるやうに可出也請取も右の手にかくるなり、男は左の袖を上へなして渡すべし、請取も左の手の上にかけて可請取何も二重に折なり、又若し着物の上に、旦紙たんしか巻物か何成共置て出すには、三つに折て出也、口伝

馬道具並馬請取渡しの事

彎の事左の方を水つきと云ひ、右の方を、ひつてといふなり、馬の道具もちては何時も逆なれ共、我左の方へ帰る也

鞍轡出やうも、吾右の方を向へして渡すなり

オープンアクセス NDLJP:203鷹は左表馬は右表なり

馬に縄さす事、三尺縄あれば、轡のくわんより、縄のみづをとをして、ひつてのみづの中よりとをし、をひ縄の者にひかするなり、是は軍陣に用る也、仏詣社参の時は、ひつてのみづへは、いれぬなり、気にもならかすべきためなりと云々

馬の請取渡し軍陣の時向ふより請取也、同軍陣の請取様、二様有、秘事有、口伝足踏有之又常の請取渡しにも、足踏可之也

請取て口を押す事、過去未来現在の習有也、但し軍陣には、跡へ押す事なし、前へ少づゝ引出す心持有也来客黄金尽、帰家白髪新、以此可分別口伝有之也

馬の竿指事、竹は六尺弐寸也、真艸行有之真は竿の中より出たる縄を竿の際一寸程置きて、引揃へて二筋を一ツに結て、轡の鑵の中へ上より入て、一筋、づゝ両より取二ふしに結ぶ也、艸の時は竿の際一寸置いて一筋にして轡の鑵の中へさきのごとく入、ひとふしにむすびとゞむる也

鞍覆をば、一ツ二ツと云ふ也

鞍に敷皮をば、うは敷共云ふ也、鞍数とはいはず  一切付の新しきをば、一口二口と云ふ也

鞍をばおくと云ふ、有とはいはず

〈[#図は省略]〉

山かた て 海 かけ きりこし まへわ つめさき きりこし いき かけめ きりこし

雉子もゝ 右同 きりこし をれめ つめさき をれめ たか頭 かご み川 やないは さるを

馬の一薬の事、牡蛎散ぼれいさん、馬のつぢのさがりたるは上戸、あがりたるは下戸、かきのからを七か、七度焼、度々はこべの汁に付ては焼、付てはやき、七日十日に、十九度焼、能く粉にして、栗毛鹿毛、何も上戸の馬には酒にて飼べし、馬の舌よく洗ひてすりて飼べし、舌にぬる也、下戸の馬には水にて飼、又云ふ雉子のめすの足を取集めて黒焼にして、せゝなぎの水にてのますべし、いかなる大事の頓病にも吉、馬の百曲をなをすやう、左の手にしがらみ手綱をからみて、右にくちたるむち取鞆とりつかをもつて左の頸筋くびすぢゆびにて水と云ふ字を書、手綱をよくにぎりて、則ち不動のばくの縄、観じて馬の額に取鞆でまんじをかく同じく鞭先をもちしたがへかなへと、三返唱てぎやていはらぎやていはらそうぎやていぼうじいそわかと唱へて飼ば、いかなる狂馬も汗をかき申なり、可秘々々