楫枕
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楫枕
作者:橘遅日庵
空艪《からろ》押す水の煙のひとかたに、靡きもやらぬ川竹《かはたけ》の、うきふし繁《しげ》き、繁き浮寝《うきね》の泊《とま》り舟。寄るよる身にぞ思ひ知る。浪か涙か苫《とま》洩《も》る露か、濡《ぬ》れにぞぬれし我が袖の、絞る思ひをおしつつみ、流れ渡りに浮れて暮らす、心尽《こころづく》しの楫枕《かぢまくら》。さして行衛の遠くとも、遂《つひ》に寄る辺は岸の上《うへ》、松の根《ね》堅《かた》き契りをば、せめて頼まん頼むは君に、心許して君が手に、結びとめてや、千代よろづ代も。
- 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』上、武蔵野書院、1975年。
この作品は1899年3月4日以前に公表されたもので、作者の死亡から100年以上経過しているため全世界でパブリックドメインの状態にあります。