[編集] 本文
朝の一景
萩原恭次郎
つめたくすんだ冬が、
山のてっぺんに、白いものを置いた。
麦の畑がすつかり色づいた。
枯草かげの流れが水音を立て、
赤い朝日が林の向うからのぼる、
すべてが長い影をひく、
うら若い夫婦が
黒い手をひき
光つた金具の鋤をかつぎ
白い息をふかしてくる。
霜柱のくづれる道を、
小さい笑みの渦を頬にうかべて、
囁きもたのしく、
赤い小豆が
どつかではじける音がする。
[編集] 解題
作者:萩原恭次郎
底本:「郷土前橋の詩歌」前橋市教育委員会(1992(平成4)年3月31日発行)