名所土産
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名所土産
作者:不詳
地歌。作曲は讃岐某、あるいは玉塚検校とも。
水無月《みなつき》の、初旅衣きて見れば、ここはすみ吉青丹によし、奈良坂越えて夕暮の、空もしづかに、寂滅為楽と告げわたる、これぞ名におふ大仏の、かねごともれて高円《たかまど》の、よそに浮名や立田山、三輪の山路も裳裾《もすそ》の絲の、いとどふるさと春日野《かすがの》の、社にしばしこの手をば、合せ鏡の底清く、あれあれ南に雲の峯、暑さ凌ぎの三笠山、月の七瀬の飛鳥川《あすかがは》、かはるや夢の数そへて、名所名所の、都の辰巳、宇治の川面眺むれば、遠《をち》に白きは岩越す波か、晒せる布か、雪に晒せる布にてあり候。賤《しづ》の女《め》が脛《はぎ》もあらはに、よそねじま、馴れし手わざも玉ぞ散る、浪のうねうね玉ぞ散る。あら面白の景色やな、あら面白の景色やな、われも家路に立ち帰り、つとに語らん、花の家苞《いえづと》に語らん。
- 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』下、武蔵野書院、1975年。
この作品は1899年3月4日以前に公表されたもので、作者の死亡から100年以上経過しているため全世界でパブリックドメインの状態にあります。