公教要理説明/03-15

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だい六十一くわ つみゆるし

379◯告白こくはく祈禱いのりをはって後如何のちどうしますか

司祭しさいことき、叉命まためいぜられるつぐのひこゝろとゞこゝろから、痛悔つうくわい祈禱いのりとなへます。

告白こくはくんだならば、司祭しさい訓誡くんかいつつしんでくべきである。それつみのこしてはないかなどかんがへてこゝろらしてはならぬ。みゝすまして司祭しさい意見いけんき、はれることがあれば明瞭めいれう単純たんじゅんこたへなければならぬ。つぎつぐのひめいぜられる。めいぜられるつぐのひはたこと悔悛くわいしゅん秘跡ひっせきの一部分ぶぶんであるからこれはたさうとのこゝろざしがなければ告白こくはく無効むこうになるから注意ちういせねばならぬ。司祭しさい今赦いまゆるしあたへますとおっしゃれば、痛悔つうくわい祈禱いのりこゝろからとなへねばならぬ。

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ちゅうだい一、聽罪師てうざいしつみゆるすにあた羅甸語らてんご告白こくはく祈禱いのりつぎにある「ねがはくは」などふたとなへてから、告白者こくはくしゃむかげて「ねがはくは我主わがしゅイエズス、キリストなんぢつみゆるたまはんことを。われしゅ權力けんりょくによってかなことなんぢえうすることおうじて、破門はもん聖務禁止せいむきんしとのすべてのほだしき、聖父ちゝ聖子聖霊せいれいとの御名みなによってなんぢつみをもゆるす。ねがはくは我主わがしゅイエズス、キリスト御受難ごじゅなん終生童貞しうせいどうていなるせいマリアおよ諸聖人しょせいじん功績いさをしと、なんぢすべての善業ぜんげふしの困難こんなんとはなんぢつみゆるされる原因もととなり、聖寵せいてう増加ぞうかとなり、永遠えいゑん生命いのちむくひれかし」のいのりとなへる。

だい二、つみゆるされることを「赦罪しゃざい」とふが、赦罪しゃざい効果かうくわおもよつある、(一)大罪だいざい皆赦みなゆるされて霊魂れいこんよりせいうつり、聖寵せいてう回復くわいふくされてこゝろきよくせられ、天主てんしゅ御心みこゝろかなふものとる。(二)をはりなきばつをもゆるされ、天國てんごくくべきものとる。(三)つみをかしたためうしなった勲功いさをしかへされ、ふたゝ來世らいせまうける勲功いさをしられるやうにる。(四)ふたゝつみをかさぬ決心けっしんまもために、特別とくべつ助力じょりょくかうむる。叉小罪またせうざいのみのとき赦罪しゃざいでは、(一)

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痛悔つうくわいする小罪せうざいゆるされ、すでゆるされた大罪だいざいけがれいよいきよめられる。(二)成聖せいゝゝ聖寵せいてうし、心潔こゝろきよめられ、益々天主ますゝゝてんしゅ御心みこゝろかなふものとり、一入天国ひとしほてんごくおい榮福えいふくくべきものとる。(三)つみふせ熱心ねっしんつとめるため助力じょりょくいたゞく。

380◯告白こくはくすれば何時いつでも司祭しさいからつみゆるしけますか

いなつみゆるしけるのは本人ほんにん覺悟かくごります。

司祭しさい天主てんしゅ名代めうだいであるから、勝手かってつみゆるわけにはかぬ。眞實しんじつこゝろあらためるとのしるしのないときゆるしあたへる事出來ことできぬ。たとへばるべきをしへらず、あるひならはず、あるひ子女しじょならはせず、しんずべき箇条かでうしんぜず、あるひこゝろあらたやうともせず、遺恨ゐこん怨恨うらみめず、和睦わぼくせず、ぬすんだかね無理むりおさへた品物しなものかへさず、他人たにんけた損害そんがいおぎなことのばし、大罪だいざいめず、其近そのちか機會きくわいけず、習慣くせ矯正ためなほさず、公然おほやけしきかゞみとなったり、相應さうおうつぐのひはたさぬ人等ひとなどは、假令罪たとひつみゆるしねがうても、すぐこれつみゆるしあたへるのは、司祭しさいとしてはせいなる秘跡ひっせきけがし、せいなるおの義務ぎむそむことになる、それ眞實しんじつ悔改くいあらためしるし

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へるまで、ゆるし差延さしのばこと當(当)然あたりまへである。ときには告白者こくはくしゃは、一際深ひときわふか謙遜けんそんこゝろもって、聽罪師てうざいし意見いけんしたがっておのれかへりおのれため辨(弁)わきまへて、不足ふそくせるところおぎなひ、あらためて告白こくはくせねばならぬ。

381◯告白こくはくつみゆるされぬひと如何どうするはずでありますか

覺悟かくごしてふたゝ司祭しさいゆるしねがはずであります。

覺悟かくごして

とは、聽罪師てうざいし不滿ふまんおもはず、そしらず、眞實しんじつつみ悔改くいあらため、それゞゝつとむべきことたとへばをしへならひ、ひと和睦わぼくし、しき習慣くせ矯正ためなほし、しきえんち、

ふたゝ司祭しさいゆるしねがはず

まへおな司祭しさいならば告白こくはく爲直しなほさぬでもことあれど、ちがった司祭しさいならばまへ告白こくはく爲直しなほし、叉罪またつみゆるしこばまれたこと其譯(訳)そのわけあきらかにあらはさねばなりませぬ。

382●司祭しさい告白こくはくかゝは事柄ことがら他人たにんもらこと出來できませぬか

司祭しさい告白こくはくかゝは事柄ことがらけっ

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他人たにんもらこと出來できませぬ。

聽罪師てうざいし如何どんことがあっても、假令殺たとひころされやうとも、告白こくはくいたつみ他人たにんもらことけっして出來できぬ。叉事実漏またじじつもらしもしない。もらこといなんでころされた司祭しさいはあるけれどももらしたれいひとつもない。おもふにこれ人間にんげんではむし不可能ふかのうともふべきことでありながら實行じっかうされてるのをるとまった天主てんしゅ御助おたすけるとわねばならぬ。

聽罪師てうざいしひと告白こくはくしたつみ告白場以外こくはくぜういぐわいところにては其本人そのほんにんにさへもはなこと出來できぬ。聽罪師てうざいしかくまで厳密げんみつまも告白こくはく秘密ひみつ告白こくはくしたひと同様どうやう厳密げんみつまもらねばならぬ、けっして他人たにんはなししてはならぬ。それもし自分じぶんまん告白こくはく時罪ときつみさそはれるやうことがあるならばうったふべきであるけれども其外そのほかには自分じぶん白狀はくぜうしたことでも、いひつけられたつぐのひ叉凡またすべ司祭しさいからはれたこと、一切外さいほかもらこと出來できぬ。叉人またひと告白こくはくするところ聞付きゝつけることつみである。みゝるならば、きこえぬやうにするか、座席ざせきへねばならぬ。叉耳またみゝったつみひともらしてもならぬ。大事だいじいてひとつみへば、大罪だいざいるに相違さうゐない。

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ちゅう告白こくはく秘密ひみつまもるべきものは、直接ちょくせつ間接かんせつ白狀はくぜうくわんすることった人皆ひとみなである。れば(一)本当ほんたう聽罪師てうざいしばかりでなく、自分じぶん司祭しさいっていつはって告白こくはくいたひと、(二)告白こくはく通辯(弁)つうべんをしたひと、(三)ひと告白こくはく漏聞もれきいたひと、(四)ひと告白こくはく準備じゅんびときなに告白こくはくすべきか、とほりに告白こくはくすればいかをたづねられたひと、(五)糺明きうめいるのに告白者こくはくしゃをしへ、あるひたすけたひと、(六)つみいたかみんだひとかみ見出みいだそれったときは、讀(読)止よみやめてやぶってしまはねばならぬ。

383●告白場こくはくぜう退しりぞいて後如何のちどうせねばなりませぬか

暫時天主しばらくてんしゅ御前みまへつみゆるされたこと感謝かんしゃし、可成早かなりはやめいぜられたつぐのひはたさねばなりませぬ。

赦罪しゃざいかうむったときけっしてぢき御堂みだうず、しばらとゞまって

つみゆるされたことしゃし、

てう縄目なはめかれた罪人ざいにん死刑しけい放免ほうめんされた罪人同様ざいにんどうやうきずだらけであったのににはかいやされたのと同様どうやうひんせまられてたのに大金たいきんほどこされたのと同樣どうやうに、よろこんで天主てんしゅ御前みまへ平伏ひれふして、かたじけなく御父おんちゝ哀憐あはれみかうむ

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り、見捨みすてられず、イエズス、キリスト御苦おんくるしみ御血おんちもっきよめられ、地獄ぢごくのが天國てんごくかれるやうにったことこゝろから御禮申上おんれいまうしあげなければならぬ、叉司祭またしさいからさとされたこと思出おもひだしてかんがへ、これまも決心けっしんかため、つみ便たよりけ、しき習慣くせ矯正ためなほ実行方法じっかうはうはふさだめ、これ實行じっかう天主てんしゅ御助おたすけ熱心ねっしんいのらねばならぬ。

めいぜられたつぐのひかならはたさねばなりませぬ。

さきにもったとほつぐのひ悔悛くわいしゅん秘蹟ひっせきの一部分ぶぶんであって、これけては秘跡ひっせき完全くわんぜんではない、したがっ其効果そのかうくわを十ぶんせうじないから、るべくはやはたさねばならぬ、大罪だいざいためめいぜられた重大じうだいつぐのひおこたったならば大罪だいざいになりる。

ちゅう自分じぶんつぐのひめることあるひへること出来できぬ。聽罪師てうざいしこれ言付いひつけることわすれたならば、請求せいきゅうし、告白者こくはくしゃ思出おもひださぬとき聽罪師てうざいし催促さいそくし、おこなひかねるならば、取替とりかへることねがひ、他人たにんあらはしてはならぬ。