こんかい
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こんかい
作者:多門庄左衛門
地歌。『吼噦』あるいは『狐会』と書く。作曲は、岸野治郎三。
痛《いた》はしや母上は、花の姿に引き替へて、凋《しを》るる露の床の内《うち》、智恵の鏡もかき曇る、法師にまみへ給いつつ。母を招けば跡《あと》み返《かへ》りて、さらばと言はぬ。ばかりにて、泣くより外の、事ぞなき、野越え山越え里打ち過ぎて、来るは誰故、そさま、故。誰ゆゑ来るは、来るは誰ゆゑ、そさま故、君は帰るか、恨めしや往《いの》ふやれ。我が住む森に帰るらん。勇みに勇んで帰らん。我が思ふ、我が思ふ、心の内は白菊。岩隠れ、蔦《つた》隠れ、篠の細道《ほそみち》掻き分け行けば、蟲の声々《こゑ〳〵》面白や。降り初むるやれ、降り初むる。やれ降りそむる、今朝だにも。今朝だにも、所は跡も無かりけり。西は田の畦《あぜ》危《あぶな》いさ。谷峯《たにみね》しどろに越え行け。彼《あ》の山越えて、此山越えて。こがれ焦るる憂き思ひ。
- 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』上、武蔵野書院、1975年。
この作品は1899年3月4日以前に公表されたもので、作者の死亡から100年以上経過しているため全世界でパブリックドメインの状態にあります。