酔花間 (休相問)

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厳密に言えば、「漢詩」ではなく「w:詞」であり、醉花間は題名ではなく詞牌と呼ばれる。

白文	書き下し文	訳文
休相問	相（あい）問うを休（や）めよ	訊（き）くのはやめよう
怕相問	相（あい）問うを怕（おそ）る	訊くのは怖い
相問還添恨	相（あい）問わば還（ま）た恨（うらみ）[1]を添えん	訊いたらまた更に恨み[1]を増すから
春水滿塘生	春水は塘（いけ）[2]に満ちて生じ	春の水が溜め池いっぱいに満ちてくると
鸂鶒還相趁	鸂鶒（けいせき）[3] 還た相（あい）趁（お）う[4]	つがいの鴛鴦（おしどり）[3]がもう仲睦まじく追いかけっこして戯れている
昨晚雨霏霏	昨晩 雨 霏霏（ひひ）たり	昨夜は雨がしとしと降っていて
臨明寒一陣	明（あけ）に臨みて寒（さむさ）一陣	明け方に差し掛かると寒さが一頻り襲ってくる
偏憶戍樓人	偏（ひと）えに憶（おも）う 戍楼（じゅろう）[5]の人の	ひたすら偲ばれるのは、あの辺境防備に召集されて駐屯している人のこと
久絕邊庭信	久しく辺庭[6]の信（しん）[7]を絶つを	あの辺境の人からはもうずいぶん長いこと便りが絶えてしまっている

作者について

毛文錫（もうぶんしゃく　生没年不詳）は中国五代十国時代に前蜀・後蜀に仕えた人で字を平珪と言う。

この文章について

白文の元は翰廬より。

注釈

1. 心に残る辛い悔しさ、残念さ、無念さ。
2. 堤防で囲われて水を受ける溜め池のこと。
3. オシドリ。「鴛鴦」という漢字は、どこかで誤解が生じたものらしく、本来は日本におけるオシドリとは違うものらしい。正しくはこのケイセキがオシドリに当たるという。青木正児『中華名物考』平凡社〈東洋文庫〉、1988年、295-297頁。ISBN 4256184376。
4. 追いかける。
5. 辺境守備隊の駐屯地、またはその施設。
6. 辺境地帯。
7. 便り。手紙。書信。