「天津条約 (1885年6月)」の版間の差分

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条約締結後一月の期間内に「フランス」国軍隊は台湾
条約締結後一月の期間内に「フランス」国軍隊は台湾
島及澎湖列島より全部撤退すべし
島及澎湖列島より全部撤退すべし

   第十条

「フランス」国及清国間に於ける旧条約、協定及協約の
規定にして本条約に依り変更せられざるものは完全な
る効力を有すべし

本条約は清国皇帝陛下に依り速に批准せらるべし又本
条約が「フランス」共和国大統領に依り批准せられた
る後批准の交換は能ふ限り短き期間内に於て北京に於
て行はるべし

千八百八十五年六月九日即ち光緒十一年四月二十七日
天津に於て本書四通を作成す

          パトノール(印)

          李 鴻 章(印)

          錫    (印)

          鄧    (印)





2013年7月19日 (金) 11:35時点における版

「フランス」共和国大統領及清国皇帝陛下は共に両国が 同時に「アンナン」事件に干渉せるに依り起りたる紛争 を終止せんとする均しき希望に促がされ且「フランス」 国及清国間に存したる昔日の修好通商関係を回復し且 改善せんことを欲し千八百八十四年五月十一日天津に 於て署名せられ千八百八十五年四月十三日勅令を以て 批准せられたる予備条約を基礎とし両国民の共通の利 益に適応する新条約を締結することに決し

之が為両締約国は左の通其の全権委員を任命せり

「フランス」共和国大統領

   清国駐箚特命全権公使、「オフィシエ、ド、ラ、レジオン、ドノール」、「スウェーデン」国ノ「グラン、クロア、ド、レトアル・ポレール」「ジュール、パトノートル」

清国皇帝陛下

   欽差大臣、文華殿大学士、太子太傅、北洋通商大臣、直隷総督、一等粛毅伯爵四品李鴻章

   輔佐員、欽差総理各国事務大臣、刑部尚書、管理戸部三庫、左翼世襲官学事務、鑲黄旗漢軍都統錫

       欽差総理各国事務大臣、鴻臚寺卿鄧

右各全権委員は相互に全権委任状を示し其の良好妥当 なるを認めたる後左の諸条を締結せり

   第一条

「フランス」国は清帝国に隣接する「アンナン」国の諸 州に於ける秩序を回復し及維持することを約す之が為 「フランス」国は公共の安寧を危くする掠奪者及浮浪人 の徒党を分散又は放逐し且再び之が組織せらるること を妨ぐ為必要なる処置を執るべし但し「フランス」国 軍隊は清国及「トンキン」間の国境を一切の攻撃に対 して尊重し及保障するも如何なる場合に於ても決して 之を越ゆること能はざるべし

他方清国は「トンキン」の接境諸省に避難することある べき徒党を分散し又は放逐し且「フランス」国保護の下 に置かるる住民の中に紛擾を齎す為清国領域内に於て 編成せられんとする徒党を分散し且国境の安全に関し 清国に与へられたる保障を考量し均しく「トンキン」 に其の軍隊を派することを避止することを約す

両締約国は特別条約に依り清国及「アンナン」国間に犯 罪人の引渡が行はるべき条件を定むべし

清国国民たる移民又は以前の兵士にして「アンナン」国 に於て農業、工業又は商業に従事して平和なる生活を 為し其の行為に非難する所なきものは其の身体及財産 に対し「フランス」国保護民と同一の保障を享有すべし

   第二条

清国は「フランス」国の企てたる平和の事業を危くす べきことは一切為さざることに決したるに因り現在及 将来に於て「フランス」国及「アンナン」国間に直接成立 したる若は成立することあるべき条約、協約及協定を 尊重することを約す

清国及「アンナン」国間の関係に関し右関係は清帝国の 威厳を何等損ふべきものに非るべく且本条約に何等違 反せざるべきものとす

   第三条

本条約の署名より六月の期間内に両締約国の任命する 委員は清国及「トンキン」間の国境を確認する為現地に 赴くべし右委員は必要なる場所に画定線を明瞭ならし むべき境界標を設置すべし此等の境界標の位置に関し 又は現在の「トンキン」境界の詳細なる修正に関し右委 員間に合意を遂げざる場合に於ては右委員両国共通の 利益を為之を各国政府に報告すべし

   第四条

境界確認せられたるときは「フランス」国国民又は「フ ランス」国保護民及「トンキン」に居住する外国人にし て清国に赴く為同境界を越えんと欲する者は予め「フ ランス」国官憲の請求に依り清国国境官憲の発給する 旅券を所持せざるべからず清国臣民に対しては国境の 帝国官憲の発給する許可証を以て足るべし

清国臣民にして陸路に依り「トンキン」より清国に赴 かんとする者は帝国官憲の請求により「フランス」国 官憲より交付する正規の旅券を有せざるべからず

   第五条

輸入及輸出の通商は清国及「トンキン」間陸上境界に 依り「フランス」国商人又は「フランス」国保護民及 清国商人に許さるべし但し右通商は将来決定せらるべ き地点に於て為さるべし右地点の選択及数は両国間取 引の方向及重要度に関係すべし右に関し清帝国内地に 施行の諸規則が参酌せらるべきものとす

如何なる場合に於ても右地点の中二カ所は清国国境上 に於て一は老開の上部に他は諒山の下部に指定せらる べし「フランス」国商人は外国通商に対する開港場に 於けると同一の条件及同一の便宜を以て右地点に居住 することを得清国皇帝陛下の政府は右地点に税関を設 置すべく共和国政府は右地点に領事を駐在せしむるこ とを得べし右領事の特権及職権は開港場に於ける同級 の官吏と同一なるべし

他方に於て清国皇帝陛下は「フランス」共和国政府と の協議に依り「トンキン」の主要都市に領事を任命す ることを得べし

   第六条

本条約付属の特別規則は「トンキン」並に雲南、広西及 広東の清国諸省間に於て陸路に依り通商の行はるる条 件を画定すべし右規定は両締約国に依り任命せらるる 委員に依り本条約の署名後三月の期間内に作成せらる べし

右通商の目的物たる商品は「トンキン」と雲南及広西両 省との間に於ける出入に際し外国通商の現行税率の規 定する課税より少き課税に服すべし但し右低減税率は 「トンキン」及広東間に於て陸境に依り運送せらるる 商品に適用せられざるべく又条約に依り既に開放せら れたる港津に於ては効力なかるべし

一切の種類の武器、機械、糧食及軍需品の通商は各締 約国の領域内に於て発布せられたる法律及規定に服す べし

阿片の輸出及輸入は前記通商規則中に定めらるべき特 別規定に依り規律せらるべし

清国及「アンナン」国間の海上通商は均しく特別規則 の目的たるべし当分の間現在の実情に何等の変更なか るべし

   第七条

本条約が「フランス」国及清国間に於て再び設定せん とする通商及善隣の関係を最も有利なる条件に於て発 達せしむる為共和国政府は「トンキン」に道路を建設 すべく且鉄道敷設を奨励すべし

他方に於て清国が鉄道敷設を決定するときは清国は 「フランス」国の工業に依頼すべきものとす又共和国政 府は「フランス」国に於て清国が其の必要とする人員 を求むる為清国に対し一切の便宜を供与すべし但し本 条項は「フランス」国の為に排他的の特権を構成するも のと看做されざるものとす

   第八条

本条約の通商条項及成立することあるべき規則は本条 約批准交換の日より満十年の後之を修正することを得 べし尤も右期限六月以前に両締約国が修正を為さんと する希望を表明せざる場合に於ては通商条項は更に十 年間其の効力を有すべく其の後は之に準ずべきものと す

   第九条

本条約署名の後直に「フランス」国軍隊は基隆を退却 し且公海に於ける臨検等を止むるの命令を受くべし本 条約締結後一月の期間内に「フランス」国軍隊は台湾 島及澎湖列島より全部撤退すべし

   第十条

「フランス」国及清国間に於ける旧条約、協定及協約の 規定にして本条約に依り変更せられざるものは完全な る効力を有すべし

本条約は清国皇帝陛下に依り速に批准せらるべし又本 条約が「フランス」共和国大統領に依り批准せられた る後批准の交換は能ふ限り短き期間内に於て北京に於 て行はるべし

千八百八十五年六月九日即ち光緒十一年四月二十七日 天津に於て本書四通を作成す

          パトノール(印)

          李 鴻 章(印)

          錫    (印)

          鄧    (印)



出典: 外務省条約局(編)『大東亜条約集 第5巻 印度支那ニ關スル日本國以外ノ外國ト「フランス」國トノ條約』研文社、1943年、177-189ページ。

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