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に帰り給へば。{{r|同寮|どうりやう}}の人〻。心{{r|許|もと}}なく{{r|待居|まちゐ}}られしが。いそ
に帰り給へば。{{r|同寮|どうりやう}}の人〻。心{{r|許|もと}}なく{{r|待居|まちゐ}}られしが。いそ
ぎたち向ひ。{{r|何事|なにごと}}候やおぼつかなく候ふと申せば
ぎたち向ひ。{{r|何事|なにごと}}候やおぼつかなく候ふと申せば
和尚いと心よげにてかゝる{{r||こと}}の有しそや。{{r|戒名|かいみやう}}は{{r|書|かき}}
和尚いと心よげにてかゝる{{r||こと}}の有しそや。{{r|戒名|かいみやう}}は{{r|書|かき}}
直しぞ。心あらば{{r|諷經|ふぎん}}せよと仰らるれば。皆人〻{{r|感|かん}}じ
直しぞ。心あらば{{r|諷經|ふぎん}}せよと仰らるれば。皆人〻{{r|感|かん}}じ
あひて。{{r|老|おい}}たる{{r|若|わか}}き{{r|所化衆|しよけしふ}}。思ひ{{く}}に{{r|諷經|ふぎん}}にこそは
あひて。{{r|老|おい}}たる{{r|若|わか}}き{{r|所化衆|しよけしふ}}。思ひ{{く}}に{{r|諷經|ふぎん}}にこそは
行れにけり。さてまた祐天和尚は。いそぎ{{r|近所|きんじよ}}の{{r|醫|い}}
行れにけり。さてまた祐天和尚は。いそぎ{{r|近所|きんじよ}}の{{r|醫|い}}
{{r|者|しや}}をよびよせ。菊が{{r|療治|りやう}}をたのみ給へば。いしやかしこ
{{r|者|しや}}をよびよせ。菊が{{r|療治|りやう}}をたのみ給へば。いしやかしこ
まつていそぎ{{r|羽生村|はにふむら}}に行き。菊が{{r|脉|みやく}}をうかゞひ。す
まつていそぎ{{r|羽生村|はにふむら}}に{{r||ゆ}}き。菊が{{r|脉|みやく}}をうかゞひ。す
なはちかへつて和尚に申やう。かれが脉の{{r|正体|しやうたい}}なく候へば。
なはちかへつて和尚に申やう。かれが脉の{{r|正体|しやうたい}}なく候へば。
中{{く}}{{r|療治|りやうぢ}}はかなひ申さず。そのゆへくすりをもあたへず罷
中{{く}}{{r|療治|りやうぢ}}はかなひ申さず。そのゆへくすりをもあたへず罷
帰り候といへば。祐天和尚聞給ひ。何をかいふらん。菊が
帰り候といへば。祐天和尚聞給ひ。何をかいふらん。菊が
{{r|命|いのち}}をば{{r|我|われ}}{{r|諸佛|しよぶつ}}へたのみおき。そのうへ{{r|単刀真入|たんとうしんにふ}}などへ
{{r|命|いのち}}をば{{r|我|われ}}{{r|諸佛|しよぶつ}}へたのみおき。そのうへ{{r|単刀真入|たんとうしんにふ}}などへ
{{r|能ゝ|よく{{く}}}}やくそくし置し物おと。{{r|思召|おしめ}}ししからば{{r|是非|ぜ}}なし。其
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{{r|薬箱|くすりばこ}}を{{r|開|ひら}}き。{{r|益氣湯|ゑききとう}}を七ふく{{r|調合|てうがう}}し。我にあたへ
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給へとあれば。{{r|畏|かしこまつ}}て候とて。すなはち{{r|調合|てうがう}}して参らせ
給へとあれば。{{r|畏|かしこまつ}}て候とて。すなはち{{r|調合|てうがう}}して参らせ
御いとま申て{{r|帰|かへ}}られたり。和尚其{{r|跡|あと}}にていそぎかの薬を
御いとま申て{{r|帰|かへ}}られたり。和尚其{{r|跡|あと}}にていそぎかの薬を
せんじ給ひ。一{{r|番|ん}}ばかりを{{r|持参|ぢさん}}にて。其{{r|夜中|やちう}}に{{r|羽生|はに}}へ
せんじ給ひ。一{{r|番|ん}}ばかりを{{r|持参|ぢさん}}にて。其{{r|夜中|やちう}}に{{r|羽生|はに}}へ

2021年5月29日 (土) 11:29時点における最新版

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を始め。其にあつまる老若男女なんによ。百人とこそきこ へけれ。其時和尚おしやう戒名かいみやうに向て。心中にきせいしたまはく 理屋性貞りおくしやうてい単刀真入たんとうしんにふも。此菊がとくにより。成仏しやうぶつし たまふ事なれば。かならず。此ものゝいのちまもり諸人のうた がひをさんじ給へと。ふかくたのみ。十ねん廻向ゑかうおわつて。いそぎりやう に帰り給へば。同寮どうりやうの人〻。心もとなく待居まちゐられしが。いそ ぎたち向ひ。何事なにごと候やおぼつかなく候ふと申せば 和尚いと心よげにてかゝることの有しそや。戒名かいみやうかき 直しぞ。心あらば諷經ふぎんせよと仰らるれば。皆人〻かんじ あひて。おいたるわか所化衆しよけしふ。思ひ諷經ふぎんにこそは 行れにけり。さてまた祐天和尚は。いそぎ近所きんじよ しやをよびよせ。菊が療治りやうちをたのみ給へば。いしやかしこ まつていそぎ羽生村はにふむらき。菊がみやくをうかゞひ。す なはちかへつて和尚に申やう。かれが脉の正体しやうたいなく候へば。 中療治りやうぢはかなひ申さず。そのゆへくすりをもあたへず罷 帰り候といへば。祐天和尚聞給ひ。何をかいふらん。菊が いのちをばわれ諸佛しよぶつへたのみおき。そのうへ単刀真入たんとうしんにふなどへ 能ゝよくやくそくし置し物おと。思召おほしめししからば是非ぜびなし。其 薬箱くすりばこひらき。益氣湯ゑききとうを七ふく調合てうがうし。我にあたへ 給へとあれば。かしこまつて候とて。すなはち調合てうがうして参らせ 御いとま申てかへられたり。和尚其あとにていそぎかの薬を せんじ給ひ。一はんばかりを持参ぢさんにて。其夜中やちう羽生はにう