Page:WatanabeOn-The Legs-Barajūji-1970.djvu/5

提供:Wikisource
このページは校正済みです

 ―― A Parable


監獄。


死刑


絞首台。滅法細長くて高い。

その天辺に吊し上げられた男。

男の逞しい両足にぶら下がっている二つの大きな鉄の玉。

総理大臣があわただしく這入って来る。

王子殿下の御足だ!

たち頭を下げる。

総理大臣手を振って獄に命令する。

男の体が引き下ろされる。……

監獄病院の手術室。

男の体が手術台の上に横たわっている。

鉄の玉を結びつけられた男の足。

白い消毒衣を着た博士の手が輝く大鋸で男の下肢を切断する。そして代りに痩せて弱々しい小いママさな下肢をつなぐ。

その足は見すぼらしい女の子の靴をはいている。……


特赦


監獄の門。男がよろめき乍ら出て来る。

女の子の足である。

男は一つ大きくのびをして、さてふところから手一っぱいの紙幣をつかみ出して眺める。

新しい大きな希望が男を感動させる。