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血液型が同一人の血液である確率は〇・九八五又は九八・五%であり、理論上○・九八五の確率があるということは実際上は同一人の血液であると考えて差支ないことを示している」旨の記載。
を援用したのであるが、右確率に関する鑑定は証拠能力がなく、従つて有罪の証拠とすることができないものと信ずる。左にその理由を述べる。
右確率の計算は東京大学教授小松勇作氏の調査に成るものであって古畑鑑定人自身の鑑定ではない。(原審第二回「昭和二六年八月二一日」における証人古畑種基供述記載の弁護人尋問第二問答参照)いいかえれば鑑定人が自己の特別なる知識経験に基く実験の報告をなしたというものではなく数学家である小松氏の知識経験に基く判断の報告を自己の鑑定に併せ報告したものであるが、この場合小松氏の立場は古畑氏の助手というべきものではなく法医学とは独立したる統計学の一部門に属する確率論を以て古畑氏の参考に供したものである。又旧刑訴法第三二〇条に所謂官公署の指定したる者という立場でもない。而かも旧刑訴法第三二〇条は新刑訴法の採用するところではない。勿論小松氏は鑑定人として宣誓したものではなく、裁判所に対し何等の責任をも有するものではない。即ち原判決は鑑定人として証拠調を経ず従つて当然に証拠能力を有しない証拠を採つて有罪の認定をしたものというべく、憲法に違反し破棄を免れないものと信ずる。而して本問の場合は憲法に直接明文の規定がないのであるが証拠能力を有しない証拠を採つて有罪の認定ができないことは憲法第三七条第二項第三八条第二項等の規定に見るも明かなところであると信ずる。
第二点 原判決はその証拠説明の(29)において
 原審押収にかかる海軍用開襟白シヤツ(証第三号)(中略)の存在