このページはまだ校正されていません
二 聚樂第
織田信長のあとをうけて、海内平定の遺業をはたし、更に世界の形勢に目を放つて、國威を海外にかがやかしたのは、豐臣秀吉であります。
秀吉は、尾張の貧しい農家に生まれました。八歳の時、父をなくして寺で養はれながら、りつぱな武將になりたいものと、つねづね武術に心がけ、勇ましい軍物語を聞くことが、何よりすきでした。十六歳の時、遠江の松下氏のしもべとなり、やがて信長に仕へました。賢くてまじめで、かげひなたなく働くので、しだいに重く用ひられ、つひに武將の列に入りました。その後も、てがらを重ねて、ますます信長の信賴を深め、やがて中國平定の大任をまかされるま