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第八 御代のしづめ
一 安土城
寒風すさぶ戰亂の世も、やつと終りに近づいて、暖い春日がさし始めました。正親町天皇は、雲居はるかに織田信長の武名を聞し召し、永祿七年、おそれ多くも、勅使を尾張へおつかはしになつて、一日も早く國々の亂れをしづめるやう、お命じになりました。信長は、仰せを受けて感激の淚にむせび、命をささげて大御心にそひ奉らうと、堅く心に誓ひました。
織田氏代々の根城は尾張の淸洲で、信長も、初めはここにゐまし
寒風すさぶ戰亂の世も、やつと終りに近づいて、暖い春日がさし始めました。正親町天皇は、雲居はるかに織田信長の武名を聞し召し、永祿七年、おそれ多くも、勅使を尾張へおつかはしになつて、一日も早く國々の亂れをしづめるやう、お命じになりました。信長は、仰せを受けて感激の淚にむせび、命をささげて大御心にそひ奉らうと、堅く心に誓ひました。
織田氏代々の根城は尾張の淸洲で、信長も、初めはここにゐまし